韓国の鉄道を今よりも知るために、首都ソウル駅を発車する優等列車の発車時刻表から、列車種別や運転パターンなど深堀りしていくシリーズをしばらくやってみます。

 

今回も当時の時刻表を参照し、1988年の韓国の首都ソウル駅を出発する優等列車の発車時刻と運転概要をまとめてみました。

 

1988年のソウルといえば、オリンピックが開催されたこと、記憶にありますか?ソウルオリンピックですね。9月17日から10月2日まで、アジアでは東京についで2箇所目のオリンピックとして開催されています。

 

今回参考にしたのは、実は日本の交通公社が発行した時刻表(現:JTB時刻表)1988年9月号であり、当時は特集として「ソウルオリンピック開催・韓国国鉄主要列車収録」が記事にまとめられています。オリンピックに便乗する形で日本のJRも韓国鉄道と共同で「日韓共同きっぷ」を発売しており、趣味的な観点だけでなく、かなり実用的な情報が付録ページを使って説明されていました。

 

この当時の優等列車の列車種類は3つ存在し、左側からセマウル号(特急格ながらムグンファ号よりも設備、速度面で優位な列車)、ムグンファ号(特急格)、トンイル号(急行格)の並びです。

 

 

  ソウル駅 線区別パターンダイヤについて

時間帯別の出発列車の解説に移る前に、ソウル駅の運行方面別パターンダイヤについて触れておきます。

当該線区  パターンダイヤの中身(一部時間帯で例外あり)
京釜線  セマウル号:毎時00分
 ムグンファ号:毎時15、45分発 ※不定期に30分発あり
 トンイル号:毎時30分発
湖南線
・全羅線
セマウル号ムグンファ号:05分発 ※不等間隔
トンイル号:20分発
長項線 ムグンファ号トンイル号あわせて 毎時35分発

 

 

朝(初電〜10時台)

セマウル号 思いの外初電時間が遅く、8時00分が一番列車。釜山行が毎時00分に1時間間隔で出発していくパターンダイヤのなかで、9時台は慶州行と光州行の2本が立て続けに出発していきます。なおセマウル号には夜の一部を除いて、全列車食堂車が連結されています。

 

ムグンファ号 セマウル号がビジネス・観光客向けに対し、「普段遣い」の特急列車であるムグンファ号の一番列車は7時30分。これも思いの外遅い出発時間ですね。朝の混雑を鑑みてなのか、2等車のみの編成で運転されています。以降は毎時15、45分に釜山行が設定され、その前後に支線乗り入れ列車が出発していくスタイルです。大川(テチョン)は長項線の途中駅ですが、ここを折り返しにした理由は、終点長項までの需要が少ないことと、折り返し列車のソウル到着時刻との兼ね合いだったと推察します。

 

トンイル号 普通列車の一つ上のランクに位置し、日本で言えば快速列車といえる種別がトンイル号ですが、ソウル郊外で近距離普通列車が運転されている合間に、釜山をはじめとした全国各地の主要都市にむけて運転される長距離緩行列車です。一番列車は6時10分と今回紹介する優等列車の中で最も早起きの列車です。以降30分発の釜山行を軸に、支線乗り入れを含め毎時2本がソウル駅を出発していきます。

凡例:食=食堂車連結

 

 

日中(11時台〜15時台)

セマウル号 昼帯は完全に1時間間隔、00分ヘッドで釜山に向けて出発するきれいなパターンダイヤで運転されています。13時00分の列車は特室に加えて、個室も備えた編成で運転されています。

 

ムグンファ号 セマウル号を補完する形で15分、45分ヘッドで釜山にむけて出発するほか、その合間に支線乗り入れ列車が設定されています。12時15分を最後に食堂車連結列車が見られないのも特徴です。

 

トンイル号 木浦(湖南線)、麗水、順天(全羅線)、晋州(慶全線)、長項(長項線)と支線乗り入れで地方中心都市を目指す列車が大半を占めるのがこの時間帯のトンイル号ダイヤの特徴です。行先はランダムながら、20分、30分、35分ヘッドでソウル駅を次々と出発してゆきます。

凡例:食=食堂車連結、個室=別室あり(2人室、家族室)

 

 

夕方(16時台〜18時台)

セマウル号 日本同様、帰宅や出張帰りといった需要でピークを迎え、毎時2本体制で運転され、そのうち1本は釜山行、残り1本は支線乗り入れで構成されます。

 

ムグンファ号 引き続きセマウル号を補完する形で15分、45分ヘッドで釜山にむけて出発。この時間帯の列車の終点到着時刻はどの列車も深夜になり、16時10分麗水行は21時58分着。釜山に出発同日中に到着できる最後の便は18時45分と、一日の終りを感じる時間帯です。

 

トンイル号 他の列車同様、各終点駅に出発同日に到着できる最後の便が出ていきます。16時20分木浦行は22時18分着、18時10分光州行は23時00着、18時40分堤川(チェチョン、忠北線)行は22時20分となります。

凡例:食=食堂車連結

 

 

夜帯(19時〜23時)

セマウル号 19時00発が出発同日に釜山に到着できる最後の列車となり、20時30分は週末のみ運転で釜山到着は翌日0時50分着となります。23時20分は寝台車なしの夜行列車となり、釜山到着は4時20分。夜明け前です。。

 

ムグンファ号 この時間に出発する列車はすべて終点駅に翌日早朝に到着する夜行列車となります。なお、一部列車には寝台車が連結されています。日本と違い列車すべてが寝台車ではないのが、走行距離がどうしても夜行列車に向かない韓国の宿命でしょうか。

それにしても20時50分木浦行の終点到着は3時10分と、大変速い到着時刻になっています。木浦は港湾都市で有名なので、こんな早朝到着でも有意義な客も多いのかしらと妄想してしまいました。

 

トンイル号 ご覧の通り20時台の運行はゼロですが、ここが終点駅が当日か翌日かの分水嶺となります。ムグンファ号同様に、一部の列車には寝台車が連結されています。23時50分発晋州行は全羅線経由で終着8時10分と、鈍行夜行ながら、日本人なら「イメージ通りの夜行列車」ぽいダイヤで運転されていました。

 

ちなみにムグンファ号とトンイル号の寝台車は、どちらも日本でいう二段式寝台であり、日本の583系電車と同様の「縦型(プルマン式)」が1列車1両連結でした。

凡例:食=食堂車連結、個室=別室あり(2人室、家族室)、寝=寝台車連結

 

本日は以上です。

 

 

 

参考資料:交通公社の時刻表1988年9月号、JTBキャンブック 韓国鉄道の旅 100年を迎える隣国の鉄道大百科(1997年)