韓国の鉄道を今よりも知るために、首都ソウル駅を発車する優等列車の発車時刻表から、列車種別や運転パターンなど深堀りしていくシリーズをしばらくやってみます。

 

今回は、韓国の首都ソウル駅と、3キロほど南にある龍山(ヨンサン)駅とあわせて、優等列車の発車時刻と運転概要をまとめてみました。

 

ソウル駅と龍山駅は、日本の東海道本線での関係性で言えば東京駅と品川駅の関係と説明するとわかりやすいでしょうか。ソウル駅一駅だけで全道から到着する列車を捌けないため、京釜線のほとんどの列車がソウル駅発着となる以外は、他線区乗り入れの大半は龍山発となっていました。

 

列車種別は左側からKTX(高速列車)、セマウル号(日本でいう在来線特急〜急行格)、ムグンファ号(日本でいう在来線急行〜快速格)の並びです。

 

なお、KTXは、2023年現在ではほぼ高速新線を走行する高速列車になりましたが、2004年4月の開業当時は高速新線の接続地点までは、在来線を経由する方法で運行されていました。その左証ではありませんが、高速列車KTXと在来線経由の優等列車は同駅同時刻発車は物理的に不可能で、これから紹介する発車時刻表を眺めると、順序よく出発していく様子がわかります。

 

 

  列車種別と乗り入れ路線

2004年7月号時刻表に掲載されていた列車ですが、以下のような種別と行先が存在していました。

列車種別 行先別運行線区(京釜線以外は京釜線からの乗り入れ線区)
KTX 京釜(キョンブ)線、湖南(ホナム)線
セマウル号 釜山行:京釜線
浦項(ポハン)、蔚山(ウルサン)行:大邱(テグ)線経由の東海南部(トンヘナンブ)線(現:東海線)
馬山行:慶全(キョンジョン)線
木浦(モッポ)、光州(クゥワンジュ)行:湖南線
麗水(ヨス)行:全羅(チョルラ)線
長項(チャンハン)行:長項線
ムグンファ号 上記セマウル号に加えて、
釜田(プジョン)行:大邱線経由の東海南部線(現:東海線)
温陽温泉(オニャンオンチョン)行:長項線
豆渓(トゥゲ)、益山(イクサン)行:湖南線
晋州(チンジュ)行:湖南線経由全羅線
安東(アンドン)行:忠北(チュンブク)線、中央(チュンアン)線
順天(スンチョン)行:湖南線経由慶全線

 

 

  出発時間帯別運行概要

 

これからソウル駅、龍山駅それぞれの駅からの出発列車を、時間帯別運行状況をまとめていきますが、この2駅から発車するルールを提示しておきます。

発車駅 対象列車
ソウル駅のみ 京釜線のセマウル号ムグンファ号 ※安東、晋山行含む
龍山駅のみ 全羅線、長項線乗り入れ列車(セマウル号ムグンファ号
ソウル駅(一部列車は龍山駅) KTX京釜線
龍山駅(一部列車はソウル駅) 湖南線乗り入れ列車(KTXセマウル号ムグンファ号

 

幸信(ヘンシン)発着のKTX列車

この時期、KTX列車には1日4往復、ソウル駅北にある車両基地併設の駅、幸信(ヘンシン)発着の列車が存在しているようですが、参照した韓国語時刻表には記載にはありません。ちなみに2004年12月にダイヤ改正が行われており、幸信駅発は倍増の8往復となったようです。

 

 

  時間帯別運行詳細

時間帯別の出発列車の解説に移る前に、ソウル駅、龍山駅では運行方面別におおよそのパターンダイヤについて触れておきます。

当該線区  パターンダイヤの中身(一部時間帯で例外あり)
KTX 京釜線 ソウル駅 毎時00、15、30、(45)分発
※15分発の大半は東大邱行
KTX 湖南線 ソウル駅・龍山駅ともに 毎時35分発
京釜線 ソウル駅 セマウル号:1時間〜2時間ごと20、40発
    ムグンファ号:毎時20(セマウルが20発のときには23)分発
湖南線 龍山駅 セマウル号、ムグンファ号あわせて 10分発
全羅線 龍山駅 セマウル号、ムグンファ号あわせて 00分発

 

 

朝(初電〜10時台)

KTX 始発は5時台から運行されており、朝帯はソウル、龍山の両駅をあわせて4本前後が毎日運転。出発列車の行先を1時間ごとに追ってみると釜山行は1時間1〜2本。それ以外は湖南線や東大邱行の区間運転で残り2本を占めるという内訳です。利用客への配慮からか9時台はすべてソウル駅始発で揃っていました。10時00分発は終点釜山駅まで無停車、10時15分発は途中1駅のみ停車という速達列車が続けて出発していました。

 

セマウル号は1時間2本程度を基本とし、釜山、浦項、麗水、木浦をはじめとした韓国南部の中核都市にむけて出発していました。どの列車も長距離運転されますが、朝食・昼食を意識したのか食堂車を連結した列車が多数です。この時間帯には、途中駅で編成を分割する列車もあるのが特徴で、5時50分発は釜山と海雲台(亀浦で分割)、7時40分発は浦項と蔚山(慶州で分割)が設定されました。なお、9時台以降19時台までは釜山(方面)行のセマウル号は2時間おきに設定されていることも触れておきます。

 

ムグンファ号は、急行列車と普通列車の両方の性格を有する列車で、KTX、セマウル号の合間を縫って出発していきます。この列車も長距離運転が前提ですが、食堂車連結はなく、スナックカー、子供用プレイルーム付き車両が比較的目立ちます。

海=海雲台、浦=浦項(ポハン)、蔚=蔚山(ウルサン)、黄色塗りが龍山発列車。食=食堂車、ス=スナックカー、子=プレイルーム付き客車

 

 

昼(11時台〜15時台)

KTX 朝から続いていたパターンダイヤが11時台に途切れます。韓国鉄道の特徴なのか、11時台に発車する列車がソウル、龍山の両駅あわせても1本しか設定されていません。一方、ソウル・龍山駅到着列車は11時台にもそれなりに存在するので、旅客の動きに沿った設定とみるか、鉄道職員との協定などの影響なのか、理由は不明。12時、13時台には週末運転の東大邱行区間運転で多客時の弾力対応が組まれていました。

 

セマウル号 ソウル駅からは2時間おきに京釜線釜山(馬山)行が出発し、龍山駅からは12、13時台で湖南線、全羅線、長項線が1本ずつ出発していきます。2駅総じて1時間1本ペースで運転されていました。

 

ムグンファ号は、時間帯ごとの運転頻度を見ると、1時間2〜4本とバラけているように見えますが、セマウル号とあわせると在来線の優等列車の本数は4〜5本/時間を維持していることがわかります。

黄色塗りが龍山発列車。食=食堂車、ス=スナックカー、子=プレイルーム付き客車

 

 

夕方(16時台〜19時台)

KTX 引き続き1時間4本のパターンダイヤ。17時台は利用客への配慮からかすべてソウル駅始発で揃えているようです。17時00分は終点釜山まで無停車という速達列車でした。

 

セマウル号 昼帯と比べ、夕方時間帯は京釜線、湖南線、長項線のセマウル号で1時間2本、加えて3時間ごとに運転される全羅線乗り入れセマウル号が加わり、一時的に3本運転となります。

 

ムグンファ号 運転本数は昼帯と大きく変わらないものの、緩行かつ長距離運転という性格から、終着の到着時刻を鑑みて途中駅までの運転される列車が出てきます。具体的には安東行、晋州行、豆渓行(日曜のみ)、温陽温泉行、東大邱行であり、いづれも観光・ビジネス客を意識した設定が見られます。

黄色塗りが龍山発列車。食=食堂車、ス=スナックカー、子=プレイルーム付き客車

 

 

深夜帯(20時〜23時)

KTX 1時間4本の運転本数は20時台までで、21時以降はグッと本数は減るため、始発駅はソウル駅に集約されています。ちなみに釜山行の最終KTX列車の釜山駅到着時刻は日付が変わった0時56分となっています。20時00分、21時00分の2列車は途中駅は大田、東大邱のみ停車の準速達として運転されました。

 

セマウル号 大都市から地方に向かう幹線で見られるダイヤにおいて、夜帯の特徴である「遠方の速達列車」か「近距離の緩行列車」で旅客をさばく傾向から外れるためか、セマウル号は極端に本数が抑えられています。20時20分発も週末のみ運転です。

 

ムグンファ号 この時間帯では目的地には深夜・翌日早朝到着がほとんどとなる、俗に言う夜行列車が大半を占めます。趣味的に興味深いのは、22時40分は座席車のみの夜行列車で終着釜田駅には5時48分。一方で寝台車連結のムグンファ号も2本設定されていますが、麗水行(4時35分)、釜山行(4時11分)と、大変早い時間に終着しています。これは、「寝る」というより「横になる」ためのベッドを提供していたと言える列車が存在していました。

黄色塗りが龍山発列車。寝=寝台車連結、ス=スナックカー、子=プレイルーム付き客車、金・土・日=当該曜日のみ運行

 

本日は以上です。

 

参考:2010年頃の韓国鉄道が「世界の車窓から」でご覧になれます。

 

 

 

 

参考資料:鉄道旅行文化社発行 観光交通時刻表2004年7月号、中国鉄道時刻研究会発行 韓国鉄道時刻表2019年5月号、JTBキャンブック 韓国鉄道の旅 KTXで拓く新しい鉄道の旅(2005年)