1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、35回目はヴェルターゼーを取り上げます。

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

ヴェルターゼー湖(ヴェルターゼーとも呼ばれる)は、オーストリアのカリンシア州最大の湖。

 

1958年6月1日から、ザルツブルグとフランクフルト・アム・マインを結ぶD527/528が新設され、翌年(=1959年)にはヴェルターゼー・エクスプレスと呼ばれる接続が、オーストリアのカリンシア州の州都クラーゲンフルトまで延長された。1967年夏ダイヤ以降、この列車はヴェルターゼー号とだけ呼ばれ、何度か番号が変更された(1967年夏ダイヤからD245/246、1971年夏ダイヤからD310/311)。1979年夏ダイヤからは(現在はD210/211)ヴェルターゼー・エクスプレスの名称が復活し、クラーゲンフルトとドルトムントの間を走った。1983年5月29日から1988年5月28日までは、ファーンエクスプレス(FD210/211)としてドイツ連邦鉄道ネットワークで最も目立つ急行列車のひとつとなった。1988年夏ダイヤからインターシティ ヴェルターゼー号(IC110/111)に格上げされ、北行きのIC110はキール終着だが、南行きのIC111はミュンスター始発だった。

 

本文に記載はないが1989年夏ダイヤ)ドイツ・オーストリア間のユーロシティ網再編にともない、ヴェルターゼー号は、DB(ドイツ鉄道)ネットワーク内の始発・終着駅を維持しつつEC14/15に格上げされた。DBのEC14は、ツェル・アム・ゼー〜ミュンヘン中央駅、クラーゲンフルト - ハンブルク・アルトナ駅、クラーゲンフルト - キールの3区間で構成されています。クラーゲンフルト発6:55で、ÖBB(オーストリア国鉄)-1044型電気機関車に牽引されて北上し、クルンペンドルフ、ペルツシャッハ、フェルデン、フィラッハ中央駅、スピッタール、マルニッツ・オーバーフィラッハ、バートガスタイン、バートホフガスタイン、シュヴァルツァッハ・シュタット・ヴァイト、ビショフスホーフェン、ゴリング・アブテナウ、ザルツブルク中央駅経由でミュンヘン中央駅着11:55。フランクフルト中央駅でDB-103型電気機関車に交換し、方向転換後、12:09発で旅を続ける。つづいて、アウグスブルク、ウルム、シュトゥットガルト(14:21着/14:27発、新型DB-120型電気機関車に交換し)、マンハイム、マインツ、コブレンツ、ボン、ケルン、デュッセルドルフ、デュイスブルク、エッセン、ボーフム、ドルトムント、ミュンスター、オスナブリュク、ブレーメン中央駅、ハンブルク・ハールブルク駅、ハンブルク・ダムトール駅に途中停車し、ハンブルク・アルトナ駅着22:21。最後に進行方向が変わり、ノイミュンスター経由で、ドイツ最北端のシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の州都キール中央駅着23:30で終着。1,544kmの旅で、ヴェルターゼー号の所要時間は16時間35分、表定速度は93km/hとなった。逆方向のEC15は始発駅をミュンスター中央駅として7:10に出発し、シュトゥットガルト中央駅(12:52着/12:58発)、ミュンヘン中央駅(15:11着/15:37発)を経て、クラーゲンフルト着20:47で終着(走行距離1,145km、表定速度84km/h)。翌年(本文記載ないが1990年と推察)のダイヤでは、EC15はミュンスターからではなく、ドルトムント中央駅が始発。ここで、ヴェルターゼー号は以下の共通運用に組み込まれた: 

 

1日目:EC14 ヴェルターゼー号 クラーゲンフルト発6:55 → キール中央駅着23:30

 

2日目:IC815 メルカトル号 キール中央駅 - シュトゥットガルト中央駅 / IC810 トラー・ボンベルク号 シュトゥットガルト中央駅 → ドルトムント中央駅

 

3日目:EC15 ヴェルターゼー号 ドルトムント中央駅発7:41 → クラーゲンフルト着20:47

 

1991年6月2日にDBネットワークで行われた「世紀のダイヤ改正」では、ヴェルターゼー号にも影響を及ぼし、新しい列車番号はEC112/113になり、運転区間もドルトムント〜クラーゲンフルト間とそれぞれ変更され、途中で発生していた車両交換も廃止。北行では、EC112のクラーゲンフルト発時刻が10分繰り上げられ(6:45発)、反対方向では、EC113がドルトムント中央駅発車時間を2時間半繰り上げられた(7:41発から5:11発へ)。特に高速新線区間であるマンハイム〜シュトゥットガルト間を経由することで大幅な所要時間の短縮が可能になった。所要時間はそれぞれ12時間03分、12時間12分に短縮され、表定速度もそれぞれ91km/h、90km/hに向上した。

 

1995年夏ダイヤでは、EC112 クラーゲンフルト発6:36に繰り上げられ、EC112/113は短期間ながらEC112/113は、D612/613 ビショフスホーフェン - グラーツと車両交換を行い、グラーツ〜ドルトムント間の客車を併結した。1996年6月2日より大きな変更が行われた: EC112はミュンスター中央駅まで延長され(時刻表位置も変更)、EC113はドルトムントからザールブリュッケン中央駅が始発となり、時刻表位置も1時間早まった。ザールブリュッケンとシュトゥットガルト間では、ホンブルグ、カイザースラウテルン、ノイシュタット、ルートヴィヒスハーフェン、マンハイム、ハイデルベルクに途中停車。ヴェルターゼー号は、以下の列車と共通運用であった:

 

1日目:EC112 ヴェルターゼー号 クラーゲンフルト発7:27 → ミュンスター中央駅着20:14

 

2日目:IC513 ディプロマ号 ミュンスター中央駅 → シュトゥットガルト中央駅 / IC 512 ディプロマ号 シュトゥットガルト中央駅 → ドルトムント中央駅

 

3日目:IC511 ルードヴィヒ・ヴァン・ベートヴェン号 ドルトムント中央駅 → ミュンヘン中央駅 / IC702 テレーズ・ギース号 ミュンヘン中央駅 → ベルリン中央駅 (1996年9月29日からは同市ツォー駅)

 

4日目:IC703 テレーズ・ギース号 ベルリン中央駅(1996年9月29日からは同市ツォー駅) → ミュンヘン中央駅 / IC610 ザール・クーリエ号 ミュンヘン中央駅 → ザールブリュッケン中央駅

 

5日目:EC113 ヴェルターゼー号 ザールブリュッケン中央駅発6:26 → クラーゲンフルト着16:33

 

1999年5月30日以降、EC112はドルトムント中央駅を終着駅(19:54着)とし、ヴェルターゼー号の共通運用からIC513, 512, 702が外れた。2000年5月28日ヴェルターゼー号ブラウエル・エンツィアン号(配列:EC112-EC113-EC114-EC115)と共通運用をとった。2002年12月15日より、ヴェルターゼー号ブラウエル・エンツィアン号を名称、列車番号、ダイヤを引き継いだ(=ブラウエル・エンツィアン号の名称は消滅)。北行EC114は、ÖBB-1116型電気機関車牽引でクラーゲンフルト発9:36、その後ザルツブルク中央駅でDB-101型電気機関車に交換し、ミュンヘン中央駅(14:33着/14:44発)、シュトゥットガルト中央駅(17:06着/17:12発)を経て、ドルトムント中央駅着22:07。対向の南行EC115 ドルトムント中央駅発5:56、クラーゲンフルト着18:22。所要時間はそれぞれ12時間31分、12時間26分に延び、88km/hの表定速度が再び90km/hの制限を下回ったことになる。

 

2003年12月から2008年12月まで、EC24/25(ドルトムント〜ブダペスト)と併結して運行されていたヴェルターゼー号がÖBB車両に変更することで、この列車外観を特徴づける。この列車は(機関車と反対にある)制御客車未連結の編成がゆえ、ミュンヘン中央駅とシュトゥットガルト中央駅では再び機関車交換が必要となった。2008年12月14日より、DBの制御客車付の編成が再びヴェルターゼー号の運用に就き、南行EC115は再びミュンスター始発となり、EC114に使用される編成は夜間にドルトムントから列車番号78561として回送されることになり、同時に時刻表位置の変更も行われた。EC114のクラーゲンフルト発8:43、ドルトムント中央駅着21:02(ミュンヘン中央駅13:35着/13:40発、シュトゥットガルト15:59着/16:10発)。一方、EC115はミュンスター発6:31で、クラーゲンフルト着19:15。途中主要駅についてはシュトゥットガルト中央駅(11:53着/11:58発)、ミュンヘン中央駅(14:16着/14:21発)。全区間でプッシュプル列車を担当するのはDB-101型電気機関車。しかし、終端駅での方向転換時間の短縮は、移動時間の短縮への貢献は限定的だった(所要時間12時間19分/12時間44分、表定速度89km/h)。これらの所要時間も、2019年通年ダイヤではほぼ変更なし。

 

ヴェルターゼー号には、特筆すべき特別な特徴がひとつある: この列車は、運転開始以来、一貫してその名前を維持している数少ないユーロシティのひとつであり、30年以上の歴史を有するこのカテゴリーのトップランナーなのだ!

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1995〜96年冬ダイヤ 

コンパートメント車(1等・2等)、オープン座席車(1等・2等)、

食堂車、クラーゲンフルトで増解結(D 612/613と車両交換)。ドイツの車両のみ。

 

今回は以上です。

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)