Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

49回目は、いよいよこのシリーズの終盤、イタリアのTEEを取り上げます。トップバッターは、リーグレ(Ligure)号です。

 

この列車は、イタリア北部からフランス南部、いわゆるコート・ダジュール地域に接続する国際列車で、ご察しの通り、バカンスシーズンを中心に乗車率は高かったようです。その証左として、運行開始早々に増結や増便対応が行われています。また、アヴィニヨンへの延長運転にあたっては、同じTEEである、スペイン〜スイス間を結ぶカタランタルゴ号との接続が行われました。

 

列車名の由来は?

イタリア共和国の北西部の州、リグーリアの形容詞型が列車名になった模様。ちなみにこの州都はジェノヴァです。

 


運行されていた国 イタリア、フランス

 

 

運転時期と区間

 

1957年8月12日 〜    1969年5月30日

マルセイユ 〜 ミラノ中央駅

 

1969年6月1日 〜    1982年5月22日

アヴィニヨン 〜 ミラノ中央駅

 

インターシティーに格下げ

 

 

使用された車両、編成

ディーゼル列車

ALn442型+ALn448型ディーゼル列車 1957年8月12日〜1972年9月30日

運転開始から活躍していたのはイタリア国鉄のディーゼル列車(ALn442型+ALn448型)。

本来1957年6月夏ダイヤ施行から運転開始予定が、車両納品の遅れによって8月運転開始となっています。

2両で1ユニットとなる(=固定編成)列車で、増結で2ユニット4連で運転されたこともあるようです。ちなみに形式番号の一桁目4は総括制御可能である記号、二桁〜三桁はその車両の定員を表しています。ということは1ユニットでの定員は42名+48名=90名となります。なお、Wikipedia(英語版)によると、1966年までは増結対応で、Ale-840型電車との併結も行われていたようです。

 

 

 

客車

【イタリア】

グランコンフォルト型客車 1972年9月30日 〜 1982年5月22日

車種こそディーゼル列車から客車列車にバトンタッチされましたが、引き続きイタリア国鉄が車両の担当です。イタリア国鉄のTEE客車はグランコンフォルトと呼ばれ、胴部分が真紅、上部がベージュの2種類というぬくもりを感じる塗り分けの客車、メーカーは自動車で有名なフィアット社。通常期の編成は、1Ap(オープン座席), 2A(コンパートメント), 1WR(食堂車), 1Ds(荷物・電源車)の5連でした。

なお、1977年1月から5月までの、地滑りによる不通区間が生じた際には、フランス区間のみの運行として、フランス国鉄のDEV型ステンレス客車5連(荷物車1両含む)で運行されていたことも付記しておきます。

 

牽引機 (1972年9月30日〜)

【イタリア】

E444型直流電気機関車

この機関車の愛称は「カメ(亀)」でした。なお、2022年も同形式は活躍しているものの改造されたため、正面は当時の雰囲気を残していません。そのほかE646型直流機関車なども牽引実績があったようです。

 

 

【フランス】

BB-25200型交直流電気機関車 ほか

様々な機関車が担当しているようです。BB-25200型交直流電気機関車(〜1978年頃)が、BB-22200型交直流電気機関車(1978年〜)、BB-9300型直流電気機関車(通期)、CC-6500型(1971年〜)がそれぞれ牽引担当していました。

実際の時刻表紙面

1962〜63年冬ダイヤ
151列車(イタリアでは595〜6) マルセイユ発16:50 → ミラノ着0:05
156列車(イタリアでは593〜4) ミラノ発6:25 → マルセイユ着13:30
当時の運用都合で、フランスとイタリアで列車番号がつけ変わっています。またジェノヴァで奇数/偶数が入れ替わっているのは、ピアッツァ・プリンチペ(P.P.)駅で行われる方向転換時にあわせた対応のようです。
Cooks Continental Timetable March 1963 より
 
 
1969年夏ダイヤ
27列車 アヴィニヨン発15:25 → ミラノ着0:20
28列車 ミラノ発7:55 → アヴィニヨン着14:48
紙面内に記事がありますが、バルセロナ〜ジュネーブ間で運転されていたTEEカタランタルゴ号とアヴィニヨンで相互接続が行われていました。なお、列車番号については、これまでイタリア〜フランス間、並びにジェノヴァで変わっていた列車番号が、途中変更なしに変わっています。
Cook Continetal Timetable August 1969 より
 
 
1977年年初に発生した南仏の地滑りによる暫定運転
1977年1月5日、ニースとモナコを結ぶ鉄道がエズ付近の地滑りにより不通区間が発生しました。その後、大規模な工事と安全対策を行った後、1977年5月22日から通常運行が可能になったようです。その際は、アヴィニヨン〜ニース間は当時のダイヤで運行され、ニース〜モナコ間はバス連絡、モナコ〜ヴェンティミリア間は代行列車が運行されていましたが、イタリア側(ヴェンティミリア〜ミラノ)でのリーグレ号の運行はありませんでした。
※ThomasCookInternationalTimetable May1~21のP.128の記事を参考にしました。

 

 
1980年夏ダイヤ
46列車(イタリアでは45〜46) ミラノ発 6:45 → アヴィニヨン着14:50
47列車(イタリアでは47〜48) アヴィニヨン発15:47 → ミラノ着23:30
1971年夏ダイヤで列車番号が変更されています。1963年のダイヤと比較いただければ明らかですが、ミラノ発着時刻を比較すると、発車、終着ともにほぼ同じ時刻となっていることからも、イタリアからのビジネス、観光客向けに定着した国際特急列車だったと察することができます。
Thomas Cook International Timetable September 1980 より
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、リーグレ(列車)、Ligure (train)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク