Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。
59回目は、このシリーズの最後となる国際TEEのカタランタルゴ(Catalan Talgo)号です。列車について、ル・カタラン(Le Catalan)号と呼ばれている時期もあることを付記しておきます。
列車名の由来は?
運行されていた国 スペイン、フランス、スイス
運転時期と区間
急行列車GC/CGカタロニア号(ジュネーブ〜ポルト・ボウ)を格上げする形で登場
1969年6月1日 〜 1975年9月27日
バルセロナ − ジュネーブ (キュロズ、シャンベリー、グルノーブル経由)
★シャンベリーでミラノ発TEEモン・スニ号と、アヴィニョンでTEEリーグレ号との双方向接続
1975年9月28日 〜 1982年5月22日
バルセロナ − ジュネーブ (リヨン・ブロトー駅経由)
★アヴィニョンでTEEリーグレ号との双方向接続
※1972年9月末でTEEモン・スニ号廃止にともない、シャンベリーでの接続がなくなったことをきっかけに、RENFEとSBBの要請。その結果による経由地変更
インターシティーに格下げ
線路障害による一時的な迂回、運転区間変更
1972年8月8日から12月14日まで、シャンドリュー(Chindrieux)付近のキュロズ(Culoz)-エクスレバン(Aix-les-Bains)線の線路障害(崩壊)により、この間、迂回路の始点と終点はそれぞれキュロズとヴァランスとなりました。その2駅間はリヨン・ブロトー駅のみ停車という特別ダイヤで接続しています。当時の列車番号ではTEE 71 D/72 Dとなっており、このDはDetournementまたはDiversionの略(いずれも迂回の意)の意味でした。のちにこの列車はリヨン経由となりますが、この迂回ルートの電化ルート、かつ速達性の効果が証明されたのかもしれません。
使用された車両、編成
詳しい車両仕様はWikipediaページも御覧ください。
このタルゴとよばれる車両は、スペインの鉄道車両メーカーであるタルゴ社が開発・製造した連接式客車です。さらに特徴的なのは、異なる軌間を有する隣国フランスへ直通乗り入れできる「軌間可変(Rodadura Desplazable)車両」として開発された点です。
1975〜76年冬ダイヤでは、基本編成が、Dx+ 5 A3rtu + Artu + Rux + 5 A3rtu + Dxの14両編成(=開放型客車10両)となり、ピーク期は開放型客車がさらに2両追加(=16両編成)。なぜか食堂車が1両減っています。
1976年ピーク時は、開放型客車が17両となる21両編成
という華々しい歴史がありました。
牽引機
スペインからスイスまでの運行にあたって、スペインとフランスの2国の機関車が牽引担当していました。少し複雑な歴史がありますので、まず牽引区間の情報整理から。
※ポルトボウ→スペイン側国境駅、セルブール→フランス側国境駅。軌間可変装置はポルトボウに設置されていました。
運転開始〜1971年 全区間スペインのディーゼル機関車で牽引(ポルトボウ/セルブールでの付替あり)
1971年〜1975年 バルセロナ〜(スペイン電気機関車)〜ポルトボウ/セルブール〜(フランスディーゼル機関車)〜ジュネーブ
1975年〜1980年 バルセロナ〜(スペイン電気機関車)〜ポルトボウ/セルブール〜(フランスディーゼル機関車)〜ナルボンヌ〜(フランス電気機関車)〜ジュネーブ
※1975年のリヨン経由のルート変更が切り替えのきっかけと推察
1980年〜 バルセロナ〜(スペイン電気機関車)〜ポルトボウ/セルブール〜(フランス電気機関車)〜ジュネーブ
【スペイン】
Class 353(旧3000-T)(〜1971年)
ドイツのクラウスマッファイ社製の液体式ディーゼル機関車。5台が製造され、スペイン国内用広軌台車を持つ機関車番号3003と3004がバルセロナからフランス・スペイン国境までの区間を、標準軌台車を持つ同系の他の3台がフランス・スペイン国境からジュネーブまでの区間を運行しています(結果、全区間同じ系統の機関車で運転される)。
Class 276(旧7600) (1971年~1978年)
フランス国鉄のCC7100型をベースに作成された直流電気機関車。こちらはもっぱらスペイン国内(バルセロナ〜ポルトボウ)での運用でした。
Class 269 (1978年~1982年)
こちらも直流機関車ですが、日本の三菱電機のライセンス下でスペインメーカーが製造していることが影響してか、どことなくEF65型機関車に似ていますw
写真は353系(旧3000-T)ディーゼル機関車
【フランス(スイス)】
BB-67400型 (1971年~1982年)
フランス国鉄のディーゼル機関車 手元資料では1970〜71年の冬ダイヤから運用開始となっていますが、Wikpediaではすくなくとも9月ごろから切り替わっていたとのこと。1975年まではスペイン・フランス国境のポルトボウからジュネーブまでの牽引、その後
BB-9300型 (1975年~1980年)
フランス国内用の直流電気機関車 牽引区間について明確な記述はありませんが、1980年初頭にナルボンヌ - ポルトボウ間が電化されたそうなので、ナルボンヌ〜ジュネーブが担当区間だったと推察します。
BB-7200型 (1980年~1982年)
ジュネーブからポルトボウ(≒フランス・スペイン国境)まで電化開業したタイミングで、前述のBB-9300型直流電気機関車の後継として登場。牽引区間は、ポルトボウからジュネーブまでの牽引と推察します。
下記写真は、フランスディーゼル機関車 BB-67400型 です。
実際の時刻表紙面
TEE CG(スイス、スペインではTEE 83) バルセロナ・テルミオ駅発9:45 → ジュネーブ着19:35
この当時の列車名は「Le Catalan」となっています。フランス語表記になっているのはフランス国内のTEE接続が影響してているのかなと邪推しています。
そのほか、列車番号のアルファベットは前身カタロニア号の名残りかと思います(Geneve〜Catalonia)。あとこの紙面内ではポルトボウ駅からマドリード方面への接続案内(コスタ・ブラヴァ急行)も記載されています。
最後に、この記事内の食事サービスには「自席に食事が給仕される」との明記があります。食堂車2両つけているのにも関わらずこの記事が意味するところはちょっと不明です。
TEE 72(スペインではTEE 73) バルセロナ・テルミオ駅発9:45 → ジュネーブ着18:54
TEE 72(スペインではTEE 73) バルセロナ・テルミオ駅発9:25 → ジュネーブ着17:54
アヴィニヨン駅でのTEEリーグレ号との接続があるため、運転開始当初からバルセロナ発着時刻はほぼ変わりません。
すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!
参考資料:
・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable
・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年
・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009
参考サイト:TEE、Catalan Talgo(train)(ともにWikipedia)
ページ内写真:Flickr の各リンク