Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

48回目は、このシリーズ内で、しばらくつづいたフランス国内のTEEの”おおとり”となる、ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)号を紹介します。

 

この列車は、フランス国内でも大西洋方面、とりわけペイ・ド・ラ・ロワール、ブルターニュ地域とパリを結ぶ唯一のTEEでした。この列車の誕生にも各方面からの政治的な圧力意見が反映されたようで、目的地ナント周辺の政治家が「フランスで唯一TEEが通っていない地域だ」と訴えてきたようですw。フランス国鉄は渋々この要請に応え、パリ~ナント間にTEEを導入していますが、需要を鑑みて平日のみで、夏のバカンス期は運休としています。

 

また、1985年以降、最高時速200km/hでの運行認可が下りて以降は、歴代のフランスTEEの俊足列車(キャピトール号アキテーヌ号エタンダール号)に仲間入りしています。

 

列車名の由来は?

19世紀に活躍した、フランスの小説家に由来します。私は知らなかったのですが、SFの父と呼ばれているそうです。

 


運行されていた国 フランス

 

 

運転時期と区間

国内急行列車からTEEに格上げする形で登場

 

1980年9月28日 〜 1989年9月22日

パリ・モンパルナス駅 〜 ナント

 

TGV大西洋線開業にともない運転取りやめ

 

 

使用された車両、編成

客車

【フランス】

ミストラル69型客車 1980年9月28日 〜 1982年3月9日 

資料によると、ジュール・ヴェルヌ号運行にあたって、TEEミストラル号で運用していた編成から「間引く」形で7両編成を捻出しています。この間引きは1981年9月でミストラル号は廃止されることを前提に計画的におこなわれたようです。なお、ミストラル69型の設計上の最高時速は160km/hであり、すでに200km/h運転対応をすすめていたSNCFは、ほどなく客車の切り替えを行います。

 

グランコンフォール型客車 1982年3月10日 〜 1989年9月22日 

写真はオープン座席の車内の様子です。形式でいうと A8tu でしょうかね。

この客車入れ替えのきっかけは、200km/h運転対応だったようで、折しも廃止がきまっていたTEEキャピトール号スタニスラス号の運用編成の一部から車両交換が行われています。通常ダイヤ改正を気に一気に車両交換するのが多いのですが「ダイヤ改正の時期でもない3月に交換されたのか?」の疑問がわきます。手元の資料によるとどうやら「フランス国鉄150周年記念」にむけた展示列車としてもグランコンフォール型車両を使用するスケジュールがあり、もろもろタイミングが重なった結果のようです。TEE列車自体は斜陽期に入りつつも、フランス国鉄の技術力を結集した「200km/h対応客車」は引く手あまただったのかなと。

そんな中行われた交換作業ですが、グランコンフォール型を使用してきたキャピトール号スタニスラス号ジュール・ヴェルヌ号との客車交換を1週間程度をかけて行ったようです。その結果、この交換期間の一週間(3月4〜10日)は、3列車の運用中に「抜き取り」を行ったため、グランコンフォール型とミストラル69型の「混合編成」も存在していたようです。

 

なお、編成内訳ですが、ミストラル69型、グランコンフォール型共通で、

1 A4Dtux, 2 A8u, 2 A8tu, 1 A3rtu, 1 Vru という7両編成で運行されました。

 

 

牽引機

【フランス】

1980年運転開始〜 

CC72000型ディーゼル機関車

パリ〜ナント間ではル・マン以西が非電化時代があったため、ディーゼル機関車が活躍する時期があります。ただし、パリ〜ル・マン間は電化区間でしたが、機関車付替えを行わない運用としてパリから通し牽引を行いました。写真はCC72000型ディーゼル機関車。ちなみに電化開業は1983年9月16日だったようです。

 

 

全区間電化開業(1983年9月16日〜) 

BB22200型交直流電気機関車

設備の関係でル・マンで直流/交流が切り替わるため、機関車は交直流機関車が運用に入っていました。

1980年冬ダイヤ
31列車 パリ・モンパルナス駅発19:03 → ナント着22:20 ※月〜金のみ
30列車 ナント発6:15 → パリ・モンパルナス駅着9:32 ※月〜金のみ
パリ〜ナント間での途中停車駅はアンジェのみ。それも1分の停車!!。1等車に乗車するような方々が1分の停車で重い荷物をかかえておりていたのかと思うと、乗客の利便性よりスピード向上に力をいれていたフランス国鉄の意地を感じさせます。
運転曜日は、平日のみ。夏バカンス期は平日であっても運休でしたので、完全にビジネス客向けの列車だったことがわかります。
ThomasCooks Continental Timetable September 1980 より
 
1984〜85年冬ダイヤ
31列車 パリ・モンパルナス駅発18:33 → ナント着21:26 ※月〜のみ
30列車 ナント発6:19 → パリ・モンパルナス駅着9:12 ※月〜金のみ
このダイヤからル・マン〜ナント間の200km/h運行の認可が下り、資料によると最速2時間48分(表定時速141.1Km/h)でパリ〜ナント間を結んだようです。下記ダイヤでは2時間53分となっていますが、運転開始時期から約30分時間短縮されていますね。
また、記事にある通り、これまで月〜金の週5往復だったものが、金曜日のパリ発のみ「2等車連結」となります。その際、2等車連結のTEEとはせず、急行列車扱いとなったため、みかけ上TEE列車の減便となります。
ThomasCook Continetal Timetable January 1985 より
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

 

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、ジュール・ヴェルヌ、Électrification du réseau ferré en France(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by , Public domain, via Wikimedia Commons