Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

37回目は、フランス国内で運行区間を完結するTEE列車、キャピトール(Capitole)号を紹介します。

 

なお、列車名のフランス語名は「ル・キャピトール(Le Capitole)」と冠詞がつくのですが、ブログ執筆でドイツ語資料を参照しているため、このブログでは冠詞なしの名称を扱うことにします。

 

列車名の由来は?

定義されたものをみつけられていないのですが、トゥールーズ市の歴史的市街地にあるキャピトール地区に由来していると思われます。そこには文字通り「キャピトール広場」「キャピトール劇場」が存在しているようです。

 


運行されていた国 フランス

 

運転時期と区間

パリ〜トゥールーズ間の急行列車として誕生

 

1970年9月27日 〜 1984年9月29日

パリ・オーステルリッツ駅 〜 トゥールーズ

 

2等車併結により、国内急行列車に降格

 


使用された車両、編成

【フランス】

グランコンフォール型客車

TEEとして運転開始当初から使用されていました。運行開始当初は10両編成、週末は加えて1〜2両の増結で対応していたのですが、年々利用客が増え、最高15両編成という時期もあったようです。また、1970年以降に設定された77列車の「補強列車」では、設定当初旧型のUIC客車が使用されていたこともあったようです。

 

牽引機

BB9200型、CC6500型直流電気機関車 ほか

運転開始当初は真紅に塗られたBB9200型の専用機が、1970年以降はもっぱらCC6500型といった直流電気機関車が使用されていました。下記写真はCC6500型機関車です。どちらの機関車も「CAPITOL」の銘板が、日本のブルートレインの牽引機のように掲げられていたようです。

 

 

実際の時刻表紙面

列車名について、1982年5月までは、キャピトール号にも下記のような名称があったようです。
 
TEE75/74 キャピトール・デュ・マタン(Catipole du matin) ※朝のキャピートル号
TEE77/76 キャピトル・デュ・ソワール(Catipole du soir) ※夜のキャピトール号
上記以外にも10077/10076 という救援列車(要は増発)運行あり。
 
 
1970年秋ダイヤ
手元に時刻表がないのですが、TEE75/74、TEE77/76の2組の列車に加えて、1970年秋以降は、毎週金曜日の夕方にパリから増発のTEE10077が、日曜日の夕方にトゥールーズからTEE10076が運行開始されているようです。いずれもキャピトル・デュ・ソワール号の10分前に発車するダイヤでした。
 
 
1972年夏ダイヤ
75列車 パリ発7:45 → トゥールーズ着13:41 ※休日運休
77列車 パリ発18:00 → トゥールーズ着23:56
74列車 トゥールーズ発7:45 → パリ着13:41 ※休日運休
76列車 トゥールーズ発17:49 → パリ着23:45
このキャピトール号と切っても切れないのは、所要時間の最短記録更新を意識したダイヤです。
この年にはパリ〜トゥールーズ間を5時間56分で走破。始発〜終点間の表定速度は120km/h、高速新線もなく、走行軌道の最高速度と限界荷重、加えて途中停車した上ではなかなかのスピードだと思います。
Cooks Continental Timetable May 1972 より
 
 
1974/75冬ダイヤ
なお、このダイヤ改正でパリ〜トゥールーズ間の所要時間5時間50分という「歴代最短記録」もあるようですが、手元のThomasCookの1975年1月号の掲載時刻は5時間59分のダイヤでしたので付記しつつ、引き続き調査します。
 
 
1977〜78年冬ダイヤ 
75列車 パリ発7:41 → トゥールーズ着13:48 ※休日運休
77列車 パリ発18:00 → トゥールーズ着0:02
10077列車 パリ発17:45 → トゥールーズ着23:47(推察) ※金曜のみ
74列車 トゥールーズ発7:43 → パリ着13:47 ※休日運休
76列車 トゥールーズ発17:44 → パリ着23:48
この時期はキャピトール号の乗客数のピーク期を過ぎているものの、年末年始の需要が救援列車(10077列車)を運行させています。
Thomascook International Timetable January 1978 より
 
救援列車10077列車ですが、1975/76冬ダイヤでは、パリ→ブリーヴ=ラ=ガイヤルド(Brive-la-Gaillarde)のみで運行されていた記録もあるようです。手元にはその時期の時刻表がないため、確認出来ておりません。
 
 
1982年秋ダイヤ
77列車 パリ発18:00 → トゥールーズ着23:59 ※土曜日運休
74列車 トゥールーズ発7:43 → パリ着13:45 ※休日運休
この改正で、従来の朝夕2往復から、1往復に減便され、増便の記事もなくなりました。列車名から朝、夜の冠詞が取れて、キャピトール号という名称に収まります。それらの動きからTEE列車の斜陽期を感じさせます。
ThomasCook Continental Timetable sept.26-Oct.31 1982より
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、ル・キャピトール(列車)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons