Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

38回目は、引き続き、フランス国内で運行区間を完結するTEE列車、アキテーヌ(Aquitaine)号を紹介します。

 

なお、列車名のフランス語名は「ラキテーヌ(L'Aquitaine)」と冠詞がつくのですが、ドイツ語資料をあたっていることもあり、このブログでは冠詞なしの名称を扱うことにします。

 

列車名の由来は?

列車の目的地であるボルドー周辺の地域の旧名称のようです。いうまでもなく、ボルドーワインで名高いワインの名産地ですね。


運行されていた国 フランス

 

運転時期と区間

 

1971年5月23日 〜 1984年5月30日

パリ・オーステルリッツ駅 〜 ボルドー駅

 

2等車併結により、国内急行列車に降格

 

使用された車両、編成

客車

【フランス】

グランコンフォール型客車 

TEEとして運転開始当初から使用されていました。

 

なお、パリ発TEE 1の編成は、1971年運転開始当初は、

1A8u(金曜日のみ)+2A8u+1A3rtu+2A8u+1A8tu+1Vru+1A8tu+1A4Dtuxという構成でした。金曜日のみA8uは、運行当初は回送扱いで、1974年夏から月曜日だけTEE 2(ボルドー発)のみ客扱いを行いました。その理由には牽引機出力、軌道へかけられる荷重制限があり、9両で500トン、10両で561トンに抑えれれていたようです。その後、1975年夏ダイヤからアキテーヌ号の限界荷重が618トンに増加し、その後1976/77年の冬からは、680トンまたは12両編成の車両の許容最高速度が200km/hとなり、それ以上は160km/hでしか走行できなくなっていたようです。

 

※上記のA8uとかですが、フランスの車両用途を記号で表したもの。Aは1等車を指します。各記号の前に付与される数字が編成内両数となります。

A8u 1等コンパートメント車両
A8tu 1等オープン座席車両(≒日本のグリーン車)
A4Dtux 1等オープン座席・荷物・電源の合造車
A3rtu 1等オープン座席とバーの合造車
Vru 食堂車
Arux 特別バー

 

 

牽引機

CC6500型直流電気機関車

このアキテーヌ号は運転開始当初から「最高速度更新」と切っても切れない関係でした。この「スプリンター」の貢献といえば、1976〜77年冬ダイヤにおいて、パリ〜ボルドー間のうち線路改良された328kmの区間が時速200kmで走行できるようになり、平均時速151.5kmのTEE1の所要時間は3時間50分。一方、機関車の改良により、始動牽引力が20%程度向上し、時刻表の遵守に貢献したそうです。

 

 

実際の時刻表紙面

1971〜72年冬ダイヤ
1列車 パリ発17:55 → ボルドー着21:55
2列車 ボルドー発7:15 → パリ着11:24
ともに、月〜金のみの運転(当該曜日が休日の場合はのぞく)。
列車番号1,2というのは同じ国内TEEであるミストラル号から譲り受けたものです。この当時は2都市間4時間ちょうど(パリ発のみ)で結んでいました。579kmを平均時速144.8kmという俊足です。
Cooks Continental Timetable January 1972 より
 
 
1977年夏ダイヤ
1列車 パリ発17:53 → ボルドー着21:43
2列車 ボルドー発8:00 → パリ着11:59
ともに、月〜金のみの運転(当該曜日が休日の場合はのぞく)。
ここでポイントなのは、休日=夏のバカンス期が含まれているようで、7月9日〜8月28日は休日扱いで、指定日のみ運転だったようです。アキテーヌ号は各方向で週1便の運転にとどまっていたようですね。所要時間は76年冬から3時間50分(パリ発)と所要時間の最短記録が更新されています。
Thomascook International Timetable May 1977 より
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、アキテーヌ地域圏(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons