Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。
17回目は、バックス号(Bacchus)号です。この列車が登場した1979年夏ダイヤは西ドイツのインターシティ152本が完全に2等車連結となった歴史的なダイヤ改正であり、そのうえであえて1等車のみ列車の需要を見込まれ設定された国内TEE列車のひとつでした。それもビジネス客の取り込みに集中するべく、運転開始当初から「平日のみ運転」「夏のバカンスシーズンは完全運休」を謳いましたが、結果高い乗車率には結びつかず、1980年6月1日からは一部の区間が重複するTEE列車アルベルト・シュバイツァー号として置き換えられました。
列車名の由来は?
ローマ神話に登場するワインの神様にちなんだ列車名。日本語では【バッカス】と記載されることもあります。ドルトムントとミュンヘンと両都市ともドイツ屈指のビールの都を結んだ列車です。ビールの都を結ぶのになぜワインの神様なのかは不明ですw
運行されていた国 西ドイツ
運転時期と区間
1971年にドイツのインターシティーとして運転開始
1979年5月28日〜1980年5月30日
ドルトムント ー ケルン ー マインツ ー ダルムシュタット ー シュトゥットガルト ー ミュンヘン
TEEアルベルト・シュバイツァー号に置き換わる形で廃止
1979年夏時点で、ドイツ国内を走るTEE列車が5種類(ラインゴルト号、エラスムス号、ガンブリヌス号、レンブラント号、メディオラヌム号)まで減っていたとき、平日のみ運行のビジネス向けに設定された、ドルトムント発TEE4列車の一つです。
(ほかは、ゲーテ号、フリードリヒ・シラー号、ハインリッヒ・ハイネ号)
なお、乗車率の低さが仇となり1年あまりで運転取りやめになり、その結果TEE列車としては最短運転期間の列車(運転日ベースだと254日)と、不名誉な栄冠に輝いた列車です。なお、廃止の要因となった低乗車率の明確な理由はわかりませんが、おそらくバックス号の補完する形で同区間に十数分ずらして運転されたインターシティ ニンフェンブルク号(IC 117/116)が2等車連結であり、利用者が2等車利用に流れてしまったことも一因にあるのではないかと推察します。
使用された車両、編成
客車列車
【西ドイツ】
ラインゴルト型客車
運転開始初期は8両編成(ドルトムントから順に3Av +1WR + 1ARD + 1Av + 2Ap)であり、1本の編成で往復をカバーする運用が行われました。なお、1979年10月1日にはオープン座席車1両が減車され7両編成となっています。列車の性格上、ドイツ大都市間に張り巡らされたインターシティ網の一部としてダイヤが組まれたため、国境を超えて運転される他のTEE列車と異なり、途中の車両交換、増減は一切ありませんでした。食堂車はDSG(ドイツ寝台車食堂車会社)が運営していました。
※Av:1等コンパートメント車、Ap:1等オープン座席車、WR:食堂車、ARD:コンパートメントとバーの合造車
牽引機
【西ドイツ】
103型交流電気機関車
実際の時刻表紙面
今回は以上です。
参考資料:
・ThomasCook International Timetable January 1980
・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年
・TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、 Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007
・TEE Zuge in Deutschland/Peter Goette/EK-VERLAG 2008
・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009
参考サイト:TEE、インターシティー(ドイツ)、バックス (ローマ神話)、Bacchus (train)(ともにWikipedia)、welt-der-modelleisenbahn.com
ページ内写真:103系機関車 Benedikt Dohmen (user: Benedictus), Archiv-Nr. 12/10, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, ウィキメディア・コモンズ経由で
カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by , Public domain, via Wikimedia Commons