Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

14回目は、エラスムス(Erasmus)号です。オランダと西ドイツを結ぶTEEは、朝のラインゴルト号、昼のレンブラント号、午後のヴァン・ベートーベン号の3本がすでに存在していたのですが、オランダ国鉄の要請で設定されたドイツ〜オランダ間の第4のTEEは、オランダの首都を起点とする列車が必要、ということで1973年に設定されています。

 

列車名の由来は?

15世紀のネーデルランド(現在のオランダ)で活躍した、カトリック司祭、哲学者の名前が由来のようです。

 


運行されていた国 西ドイツ、オランダ

 

運転時期と区間

 

1973年6月3日〜 

 デン・ハーグ(HS駅) - ケルン − フランクフルト(方向転換) − ヴュルツブルグ − ミュンヘン

※デン・ハーグは、本来SS駅を出発駅にする予定が、改修工事のためにHS駅に変更となっていました。

 

1976年5月30日〜

 デン・ハーグ(中央駅)  - ケルン − マンハイム − シュツットガルト(方向転換) − ミュンヘン

 

※この当時、停車駅数と停車時間の長さからドイツ国鉄のTEE列車の中では表定速度の低い列車として有名だったようです(平均時速98Km/h)。

 

1979年5月27日〜1980年5月31日

 アムステルダム − ケルン − フランクフルト

 

その後、インターシティ、ユーロシティ、ICEの名称と継承される

 

 

使用された車両、編成

客車列車

【西ドイツ】

ラインゴルト型客車 

1973年6月3日〜9月29日 

【基本編成】ハーグ〜ミュンヘン間は、ラインゴルト号と4日間で1サイクルの共通運用。4両編成(1Av、1Ap、1WR、1AD(展望車))。食堂車、ケータリング担当はDSG社。

【付属編成】曜日によって付属編成が増結された。

①エメリッヒ~ミュンヘンで1Av、加えて金曜日には2 Ap

②エメリッヒ→フランクフルト 月〜木(7,8月除く)に1Ap

③ミュンヘン→フランクフルト 土以外の毎日に1Ap

※付属編成はTEEヴァン・ベートーヴェン号レンブラント号と共通運用

 

1973年9月30日〜76年5月29日 

【基本編成】変わらず

【付属編成】

基本編成に加えて、曜日によって付属編成が増結された。

①エメリッヒ~ミュンヘンで2Av、加えて金(ハーグ発)と日(ミュンヘン発)には1Ap

②エメリッヒ→ミュンヘン 月〜金に1Ap

③前項と変わらず

 

1976年5月30日〜79年5月26日 

【基本編成】従来の展望車連結からバー車に変更、食堂車車種もラインゴルト号用からTEE向け汎用に変更(1Av、1Ap、1WR、1ARD(バー車))

【付属編成】

基本編成に加えて、曜日によって付属編成が増結された。

①エメリッヒ~ミュンヘンで1Av、加えて月〜金の多客期は1Ap、金1Av

②エメリッヒ~シュトゥットガルト バー車(1ARD)と月〜金に1Ap

 

1979年5月27日〜79年9月29日 

【基本編成】アムステルダム〜フランクフルト間はラインゴルト号と2日で1サイクルの共通運用。4両編成(1WR、2Av、1Ap)

【付属編成】

基本編成に加えて、曜日によって付属編成が増結された。

①アムステルダム〜フランクフルト間で日、月のみ1Av

②エメリッヒ~フランクフルト バー車(1ARD)+1Av+1Ap の3両

 

1979年9月30日〜80年5月31日 

【基本編成】変わらず

【付属編成】エメリッヒ~フランクフルト 1Ap 

 

 

牽引機

西ドイツ】

103型交流電気機関車

 

 

【オランダ】

1100型、1300型直流電気機関車

時期によって牽引機が変わっていたようです。写真は1100型ですが、オランダの機関車でTEE専用塗色は見たことがありません。

 

 

実際の時刻表紙面

1975年夏ダイヤ
オランダ、西ドイツをそれぞれ午前中に出発し、相手国の終着駅に当日夜に到着するダイヤが組まれていました。途中停車駅は、ライン川中流域の主要都市を網羅するビジネス色の強い列車だったようです。
25列車 デン・ハーグ発9:57 → ミュンヘン着19:12
24列車 ミュンヘン発10:44 → デン・ハーグ着20:04
※ヴュルツブルグでTEEプリンツ・オイゲン号と接続(25列車はウィーン行、24列車はブレーメン行)
ThomasCook Continental TImetable May 1975 より
 
 
1977〜78年冬ダイヤ
1976年夏ダイヤから、始発・終着駅は変わらず、経由がこれまでのフランクフルト、ヴュルツブルグ経由から、マンハイム、シュトゥットガルト経由に変更されています。これをうけてTEEプリンツ・オイゲン号との接続はヴュルツブルグからケルンに変更されています。
17列車 デン・ハーグ発10:01 → ミュンヘン着19:08
16列車 ミュンヘン発10:47 → デン・ハーグ着19:58
※ケルンでTEEプリンツ・オイゲン号と接続(17列車はウィーン行、16列車はブレーメン行)
ThomasCook International TImetable Janurary 1978 より
 
 
1979年〜80年冬ダイヤ
1979年夏ダイヤから、西ドイツ国内の運転区間が短縮され、アムステルダム〜フランクフルトに変更されています。また記事から、毎週金曜日のみ、アムステルダム行の始発駅が、フランクフルトからニュルンベルクに変更されています。
27列車 アムステルダム発9:53 → フランクフルト着14:56
26列車 フランクフルト発15:00 → アムステルダム着19:56
なお、従来接続をとっていたTEE列車プリンツ・オイゲン号はインターシティに格下げされ、かつエラスムス号のとの接続はなくなっています。
ThomasCook International TImetable Janurary 1980 より
 
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

参考資料:

・Cooks Continental Timetable August 1969 ほか

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE(Wikipedia)、welt-der-modelleisenbahn.com

ページ内写真:Flickrのリンクより

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons