2020年暮れから個人的キャンペーンとして、私の時刻表コレクションを元にスキー列車の歴史を、実物の時刻表とあわせて、紐解いています。


現在【5】全国各地のスキー列車についてまとめております。

今回は、その第9章として、兵庫北部のスキー場(神鍋高原、ハチ高原)へのアクセスとして運行されたスキー列車について取り上げます。京阪神から日帰りできる距離にあることから運行の歴史は古いようです。

 


■兵庫県北部のスキー場は?

神鍋高原 兵庫県豊岡市日高町
ハチ高原(鉢伏高原) 兵庫県養父市

そのほかにも多数のスキー場が現存しており、琵琶湖周辺に並ぶ「スキー場銀座」のようです。

 


■運行形態をもとに時代を区切ってみた

下記年表は私が時刻表から年代ごとに拾った列車名とその本数をまとめたものです。
 
まとめてみて、手元の情報をもとに4期に分けてみました。これを元に各期の列車名をササーッと超特急wで追っていこうと思います。
 

■第1期:かんなべ・はちぶせ期

大切なので何度も言いますが、この区別名は私の趣味を満足させるためのブログでつけた名前ですw
高度経済成長期真っ只中の1960年代には、スキー場エリアの名前をそのままつけた列車名でした。「かんなべ」「はちぶせ」のペアで始まり、のちに「かんなべ銀嶺」「はちぶせ銀嶺」と名称を変えていきます。
 

かんなべ号、はちぶせ号

【運転されたシーズン】(手元にある最古の時刻表から)〜1969年 ※1968のはちぶせ号は運転されていない様子。
【列車種別】普通、準急、快速急行 ※シーズン、列車によって異なる

【運転区間】大阪〜江原間、シーズンによって城崎→大阪、大阪→豊岡間もあり

経由線 かんなべ号は播但線(一部シーズンで福知山線経由もあり)、はちぶせ号は福知山線
【使用列車、編成】PC(12系客車と推察)、DC(車種不明)
【補足】1969年の急行はちぶせ号では下り急行丹波4号との併結もあり(大阪→福知山)。また、客車の牽引機については、当時の播但線の状況からSL牽引だった可能性もあります。またディーゼル車の詳細は不明です。 
 
1966年2月号より。こちらは播但線経由スキー列車の紙面です。◆は、発駅着席券という、当時存在していた簡易的な指定席券の発行対象列車です。
交通公社の時刻表 1966年 2月号より
 
 
下記は福知山線経由のかんなべ号の紙面。当時から混雑路線だった福知山線を通過するために、行き、帰りとも深夜帯のダイヤになっていると推察します。
交通公社の時刻表 1966年 2月号より
 
 

かんなべ銀嶺号

【運転されたシーズン】1970年と71年の2シーズン
【列車種別】快速急行
【運転区間】大阪〜江原・城崎間 ※播但線経由
【使用列車、編成】PC(12系客車と推察)・DC(車種不明)
【補足】下りは快速、上りは急行 各4本運転(1971年)。上り一部列車は急行但馬3号と併結あり(城崎→姫路)。
客車の牽引機については、当時の播但線の状況からSL牽引だった可能性もあります。またDCの詳細は不明です。 

 

はちぶせ銀嶺号

【運転されたシーズン】1970年と71年の2シーズン
【列車種別】快速(上りのみ)、急行 
【運転区間】大阪〜江原間 ※福知山線経由
【使用列車、編成】PC(12系客車と推察)・DC(車種不明)
【補足】1970年は下り2本上り1本、71年は下りのみ1本。下りは急行丹波4号と併結あり(大阪→福知山)。
 
1970年1月号より。かんなべ銀嶺号、はちぶせ銀嶺号が全列車確認できる紙面です。福知山経由か否かで播但線経由か福知山線経由かを判別しなければならないストレスフルな紙面w。
交通公社の時刻表 1970年 1月号より
 

■第2期:銀嶺号最盛期

この期のタイトルに「最盛期」をいれたのは、
・但馬銀嶺号の運転本数
・1シーズンのみ多種のスキー列車設定があった1972年シーズンが、その後の衰退を前に「始まりの終わり」と感じた(あくまでも私感です)
という理由です。
 
但馬銀嶺号
【運転されたシーズン】1972年〜1978年
【列車種別】急行、一部シーズンの下りで快速の設定もあり
【運転区間】大阪〜江原・豊岡・城崎間 播但線経由、1975年以降では浜坂、姫路発着もあり
【使用列車、編成】PC(12客車と推察)・DC(キハ58系)
【補足】運転本数は1973年シーズンが最多で、行き5本、帰り6本の銀嶺号が設定されています。また多くの列車が、姫路〜江原・城崎間をはじめ、急行但馬号との併結を行なっています。1975年以降は急行但馬の味覚号(新大阪→浜坂など)との併結もありました。

下記は1973年1月号の播但線紙面から。行きは快速、帰りは急行という種別で運行。行き帰りとも全席指定席ながら、この種別を変えている意図はどういうことなんでしょうか?
上記2点とも、交通公社の時刻表 1973年1月号より
 
鉄道模型のKATO京都駅店さんのツイート。シーズンを特定できませんが、播但線内でのSL牽引があったことようですので、エビデンスの一つとして。
 
そのほかに、1972年のみ運転されたスキー列車を3つ挙げておきます。
 

いで湯銀嶺号

【運転されたシーズン】1972年のみ
【列車種別】普通(行き)、快速(帰り)
【運転区間】糸崎→城崎間、城崎→尾道間 播但線経由
【使用列車、編成】DC(キハ58系?)、使用車両の詳細は継続調査中。
いで湯が名称に入ったのは、城崎温泉の最寄り駅城崎を発着としていることが大きいのでしょう。山陽本線から北但馬エリアにアクセスをしたスキー列車は、私の調べる限り、この列車しかありません。2日しか運転されていないので、幻の列車。それにしても播但線内はほぼ各駅停車だったところは、今と比べれば、まだまだ有閑な時代の象徴と言えるんでしょうか。

交通公社の時刻表 1972年 1月号より

 

 

はくぎん号

【運転されたシーズン】1972年のみ
【列車種別】特急
【運転区間】大阪→鳥取、鳥取→新大阪間 (播但線経由)
【使用列車、編成】DC(キハ80系)
特急はまかぜ号登場直前に、特急ゆあみ号と同じスジで冬期のみ設定された臨時特急です。はまかぜ号以前から走っていたことで播但線初めての特急でした。
 
またこの列車をスキー列車として取り上げたのは、
・同じ臨時特急ゆあみ号と異なり、スキー場最寄駅の八鹿、江原に停車している
・ネーミングが「白銀」とスキー場を連想させる名称
だったためです。ちょっと強引でしたか?
交通公社の時刻表 1972年 1月号より

 

 

ハチ春スキー号

【運転されたシーズン】1972年の3月のみ運転
【列車種別】快速(行き)、急行(帰り)
【運転区間】大阪〜八鹿間 播但線経由  
【使用列車、編成】PC(12系?)
詳細はいろいろ不明です。この列車の指定席ですが、主な駅と交通公社の営業所のみで取り扱いという販売方法だったようです。
交通公社の時刻表 1972年 3月号より
 
 

■第3期:銀嶺・スキー号期

但馬銀嶺号に加えて、1976年シーズンから但馬スキー号が播但線スキー列車グループに仲間入り。1979年シーズンからは「〜銀嶺号」が消滅し、「〜スキー号」の独壇場に。ひとことでいう〜銀嶺号と〜スキー号の大きな違いは、全車指定の〜銀嶺号と一部指定(自由席あり)の〜スキー号という点でしょうか。
 
但馬スキー号
【運転されたシーズン】1976年〜1983年
【列車種別】急行
【運転区間】大阪〜江原・城崎間 播但線経由 ※一部は急行但馬号と併結(姫路〜城崎)
【使用列車、編成】DC(キハ58系)、PC(12系?)
【備考】但馬銀嶺号からバトンタッチする形で登場。〜銀嶺号は快速になる列車もありましたが、〜スキー号は行き帰りとも全号急行として運転されています。〜銀嶺号と並んで活躍していたころは一部指定席という編成でしたが、1979年シーズンからは大阪発深夜発に限って全席指定という編成だったこともあります。運転本数は3往復(1977、78年シーズン)が最大の運転本数でした。
 
下記紙面は、1977年1月号より。急行但馬スキー号はもとより、このシーズンは但馬銀嶺号も存在。左端には、関西エリアの人気企画「かにカニエクスプレス」の端緒となったと勝手に思っている臨時列車、急行但馬の味覚号が設定されているのが確認できます。
交通公社の時刻表 1977年 1月号より
 
 

■第4期:(スキー列車)衰退期

1979年シーズンから、明らかに本数が減った播但線経由のスキー列車。久方の復活となった夜行スキー列車「神鍋スキー号」が1シーズンで終わったことからも、鉄道によるスキー列車の役目が終わったことを象徴するのか、当時のユーザーのニーズに応える余力のなかった国鉄の台所事情を象徴するのか、といった象徴的な期間だと思っています。
 
神鍋スキー号
【運転されたシーズン】1979年のみ

【列車種別】快速

【運転区間】大阪→江原間
【使用列車、編成】PC(12系?)
かつての但馬銀嶺号時代に一時期存在していた大阪発深夜のスキー列車を復活させたのがこの列車。深夜設定かつ限られた運転日数だったためか、ネット上を検索しても写真も情報も出てきませんw。
交通公社の時刻表 1979年 1月号より
 
 
播但線のスキー列車の歴史は1983年シーズンを最後に一度火が消えましたが、国鉄民営化後の1995年シーズンから「シュプール神鍋・鉢伏号」が運転されたのは先達の皆様が知るところです。
 

私のコレクションで追えるもので構成していますので、一部抜け漏れございましたら、ぜひご指摘ください。

 
これまでまとめ分は下記リンクからご覧になれます。
 
今回は以上となります。

 

参考資料:1966年〜 の交通公社の時刻表、JTB時刻表 

参考サイト: