「僕の本の読み方について」24歳 | 鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」

鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」

重度の身体障害がある鈴木正人(すすきまさひと)のブログ
1972年生まれ、三重県松阪市に暮らしています。
普段僕は車イスで生活をしています。
自分のこれまでの人生をまとめてみました。

ある日のこと、ふらっと入った本屋さんで巨人のエースピッチャー桑田真澄投手の本「試練が人を磨く」が目に入った。僕はアンチ巨人のヤクルトファンだが、桑田投手のどうやって打たせて捕るかを常に考える技術的なピッチングが好きだった。これまでに本を読んでみたことはあったが、いつも途中で挫折してしまっていた。しかし、この本は絶対に読み切りたいと思ったので購入することにした。

 

買ったはいいが、僕は文章を読むことがとても苦手だ。本を読んでみても文字を追っているだけでは内容が頭に入ってこなかった。「なんでみんな文字だけでわかるのだろう?」といつも思うのだ。

 

そこで、園に本を持って行って職員の山田さんと脇谷さんにどうすればいいか相談してみた。すると脇谷さんが「朗読ボランティアさんに頼んでみたらいいんじゃない?」と提案してくれた。園に全盲のメンバーが居て、その人がボランティアグループ「朗読奉仕会」を利用していたのだ。朗読をカセットテープに録音してくれる会だ。それは助かると思い、早速録音をお願いすることにした。本は256ページ。文字数から90分テープが4~5本はいるので、それも用意した。

 

23週間後、朗読が録音されたカセットテープが届いた。お渡ししたテープ全てに録音がされていた。約7時間30分だ。テープ代もめちゃめちゃかかった。「これで音声に合わせて本を読むことができる!」いつも使っているパソコン用のキーボードスタンドに本をセットし、テープを再生して音声と同時に本を読み始めた。すると、さっきまでさっぱり理解できなかった文章がスッと頭に入って理解できた。「やった!どんどん読める!」これまで苦手だった読書ができてとても嬉しい瞬間だった。音声に合わせて次に進もうとアンコウでページをめくろうとした。しかしこれがうまくめくれない。手間取っていると音声はどんどん進んでしまう。本をめくることにつまづいてしまった。

 

後日、園に本を持っていき脇谷さんに本をめくることが難しいかったと相談してみた。僕はページをめくるのでは無く、全ページをコピーしてアンコウで下に落とすことなら出来そうだアイデアを話した。しかし、コピーをとるのに人に頼んだり大変なので無理だろうなと思っていた。しかし脇谷さんは「それでいいんじゃない?下に落とすことはできるでしょ」と言ってくれた。自分のアイデアに同意してくれて嬉しかった。早速、脇谷さんに本を渡し、コンビニで全ページをコピーしてもらった。

130枚×10円で1300円ほど。もう一冊買える金額で、痛い出費だった。

 

家に帰り、おばあさんにコピー用紙をキーボードスタンドにセットしてもらい、録音テープを流してもらった。これでページを自分でめくるとこが出来る。下に落とすたびにコピー用紙が部屋中に散らばって大変だった。それをおばあさんが「頭の体操になるわ」と言いながら片付けてくれた。

 

初めて自分で本が読めた体験はとても嬉しいものだった。桑田さんの投球に対する考え方などがわかった。父は沢山本を読む人で、「読書は書いた人の気持ちになれる」と言っていたのが少しわかった気がした。

 

後日、脇谷さんに相談しコピーをしてくれるボランティアさんを募集するためにチラシを作りいろんな所の配った。すると2人の方が手伝ってくれることになった。今思い返すとコンビニでコピーするのは恥ずかしかったのではと思う。

発展して漫画なども読めるようになった。

 

園のスタッフや朗読ボランティアさん、コピーを手伝ってくれたボランティアさん、散らばったコピー用紙を片付けてくれたおばあさん等、沢山の人たちの力を借りて僕は読書を楽しめるようになった。みなさんに感謝してます。

 

現在はAmazonのオーディブルなど朗読アプリがあるから、気軽に本を楽しめるようになったので、いい時代になったと思う。

 

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