墨亭さんのGW特別企画、神田愛山先生と春陽先生による『清水次郎長傳』の部分連続読み。愛山先生は法院ノ大五郎と"吃安''武井安五郎の噺で、この任侠番付表で吃安は、天保水滸伝で有名な飯岡ノ助五郎の親分、銚子ノ五郎蔵とは五分、

赤尾ノ林蔵、勢力富五郎よりは一枚上手で、土浦ノ皆次に匹敵するから、国定忠治クラスの親分なんです武井安五郎は❣️勿論、清水次郎長・黒駒ノ勝蔵よりも格は一枚上手です。

この侠客埋めく清水次郎長・黒駒ノ勝蔵が任侠の本寸法で戦う江戸末期から文明開花の時代。表舞台では薩長vs徳川幕府。裏では任侠の戦いが繰り広げられていました。


そんな中、『清水次郎長傳』は、三代目神田伯山によって明治末に江戸・東京の釈場で大ヒットし、講釈本として残されます。かの講談社が本に当然しています。

それを昭和になってから、二代目広沢虎造が浪曲に変えてラジオで、日本中に広めました。その為、片岡千恵蔵、長谷川一夫、鶴田浩二といった銀幕スターを次郎長にして映画が作られます。

まぁ、映画と虎造のレコードのお陰で、昭和20年代には"清水次郎長傳"を知らない日本人などまず居ない。5人に4人は「森ノ石松千石船」を聞いた事があったはずです。


この『清水次郎長傳』から愛山先生は「法院ノ大五郎」と「秋葉の火祭り」の二席から話を始めました。詳しいストーリーを知りたい方は、私が三代目伯山の速記を現代風にしたものをお読み下さい。前後を含めて下記に御座います。



◇義理の兄、佐太郎死す! https://ameblo.jp/mars9241/entry-12649772997.html

◇法院ノ大五郎登場 上 https://ameblo.jp/mars9241/entry-12650568004.html

◇法院ノ大五郎登場 下 https://ameblo.jp/mars9241/entry-12650569650.html

◇神澤ノ小五郎の悪事 https://ameblo.jp/mars9241/entry-12650695711.html

◇対決 甲州秋葉山 https://ameblo.jp/mars9241/entry-12650829524.html

◇神澤ノ小五郎を騙す https://ameblo.jp/mars9241/entry-12651249613.html

◇仙右衛門の仇討ち https://ameblo.jp/mars9241/entry-12651650522.html

◇次郎長、吃安の旅籠に殴り込む https://ameblo.jp/mars9241/entry-12652059509.html



実に三代目伯山の八話分を二話60分に凝縮した内容で、法院ノ大五郎が賭場荒らしで簀巻きにされ、武井安五郎一家の身内だった過去を語り次郎長の子分になります。

その法院の語りの中で、興津の魚問屋、次郎長の義理の兄、佐太郎を殺した仇、神澤ノ小五郎と間男して逃げた女房お美津の行方が甲州武井安五郎一家だと知ります。


そして、直ぐにも甥の仙右衛門を連れて吃安一家に殴り込む勢いの次郎長を、法院ノ大五郎が宥めて、半年先10月の"秋葉の火祭り"に盆を立てる武井安五郎の、用心棒で現れる神澤ノ小五郎を討つ算段を語って聞かせます。

こうして秋葉山で佐太郎の仇、神澤ノ小五郎を仙右衛門に討たせた次郎長は、この事実を吃安に伝えて、仙右衛門に詫びるようにと啖呵を切るのですが、吃安は全く謝る気配はありません。

これを見兼ねた武井安五郎の兄弟分、津向(ツムギ)ノ文吉と見付ノ友蔵と言う親分衆が中に割って入り、次郎長の肩を持つから、吃安は立場がなく、謝りこそしないものの、神澤ノ小五郎の仇討ちも、お美津の一件も次郎長の意見が通る事になる。

そして、津向ノ文吉、見付ノ友蔵と、清水次郎長は兄弟分の盃を交わすのだが、次回のお話は次郎長の親代わりでもある和田島ノ太左衛門が津向ノ文吉と揉め事となり、この仲裁役を清水次郎長が買って出ます。



愛山先生の武井安五郎は、吃りませんで吃安とは呼びません。また、渡世人が刃向かう意思がない現れに脇差を右側に置く流儀を説明されましたが、宝井琴凌先生の「関東七人男」にも、同じ仁義が登場します。

愛山先生の「法院ノ大五郎」「秋葉の火祭り」は、神田派らしく啖呵を引き立たせる講釈で、愛山先生の魅力満載でした。次回は「興津河原の間違い」と「お蝶の焼香場」です。