マリモ集団消失すⅡ-目次 |   マリモ博士の研究日記

  マリモ博士の研究日記

      - Research Notes of Dr. MARIMO -
  釧路国際ウェットランドセンターを拠点に、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」と周辺湖沼の調査研究に取り組んでいます

■はじめに

 阿寒湖のチュウルイ湾では、近年、マリモの生育状況が急速に悪化しています(映像はこちら)。

 

 これまで、2021年に起こったマリモ集団の急速な破損・緩集合化と分布・生育状況の変化2022年の大型球状マリモ集団の消失について、本ブログで報告してきました。

 

 いずれも、阿寒湖の富栄養化対策が進んで湖水の透明度が上昇した結果、マリモ群生地沖の深所で水草が繁茂するようになり、波動が緩和されてマリモが回転できなくなったことが原因です。

 

 2023年秋、状況はさらに悪化し、これまで大型マリモが若干残存していた集団の西側でも消失が確認されるとともに、集団全体でさらに緩集合化が進んでいます。緩集合化したマリモは流動しやすいため、強い風波が発生すると容易に流失します。その結果、層をなして群生していたマリモの集団の堆積厚が減少し、隙間を生じます。そこに水草が入り込んで定着し、植生がマリモから水草へと入れ替わって行くことになります。

 

 既に、阿寒湖が世界に誇る「大きくて美しい球状マリモの群れ」は壊滅状態にあり、事態がこのまま放置されると、復旧はますます困難になると予想されます。

 

 改めて、事態がここに至った経緯と原因、および対策の考え方を取りまとめました。マリモの危機的な現状に関する情報を共有し、対策の実施に向けて市民や関係者が力を合わせて行かなくてはなりません。

 

健全なマリモ集団(1995年).直径20cm前後の硬い集合体が3~4層に重なり合って湖底を覆っている.
 
 

破損と緩集合化が進む集団西側の球状マリモ(2023年).大きなマリモは消失し、小さく柔らかいものばかりとなっている.

 

■目次

  ① 深刻化するマリモ危機

  ② 水草の流失によるマリモの回復

  ③ 大型マリモ集団の復旧に向けて