マリモ博士の研究日記

  マリモ博士の研究日記

      - Research Notes of Dr. MARIMO -
  釧路国際ウェットランドセンターを拠点に、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」と周辺湖沼の調査研究に取り組んでいます

昨年12月から始まった「マリモ茶話会」、不定期開催ながら4回目を迎えました。今回もマリモと阿寒湖について語り合いましょう。

 

日時: 令和6年7月21日(日) 15:30〜17:00

会場: 釧路市民活動センターわっと(釧路市末広町3-1)

参加費:500円 定員10名

主催: NPO法人くしろ・わっと

共催: くしろだいすきクラブ

後援: FMくしろ・NPO法人教育エトセトラ・釧路新聞社

 

こんにちは。

 

4月の人事で、釧路国際ウエットランドセンターから、釧路市の総合政策部に所属が変わり、部屋の名称も、「阿寒湖沼群・マリモ研究室」から「世界自然遺産推進室」に改まりました。

 

これは、昨年、阿寒カルデラ湖沼群の生態系の特異性に関する論文がリリースされたのを受け、世界自然遺産に向けた活動を本格化させる措置の一環で、まずは阿寒の国際的な認知度をあげるべく、UNESCO's Man and the Biosphere Programme(ユネスコ「人間と生物圏」計画、通称「ユネスコ・エコパーク」)登録を目指します。

 

私は申請書の作成を求められており、またイチから勉強です。マリモと阿寒の素晴らしい自然がしっかりと未来に受け継がれて行くよう、なお一層のご支援、宜しくお願い申し上げます。

 

雌阿寒岳から阿寒カルデラを望む(正面は阿寒湖と雄阿寒岳)

4月21日(日)、NPO法人くしろ・わっと主催による第3回マリモ茶話会が開かれました。今回のお題は、1)バレエ組曲『マリモ』が生まれた時代背景とマリモ文化、2)絵本『わたしはマリモ』の誕生秘話、3)マリモが-20℃でも凍死しない耐凍性の秘密 でした。

 

3)に時間をかけ、耐凍性が細胞の高いイオン濃度によってもたらされており、それがマリモの特異な成長や球化、汽水域への分布など、様々な生物特性に関係していることをお話ししました。詳しくは、わっとの上野事務局長がFacebookでレポートしているので、以下にご紹介。

 

 

【マリモを再びみんなの手に、目に、鼻に】

 

 

昨日、中抜けの用を終え勤務先にもどると机の上にお菓子がおいてあった。先月のニードルフェルトマリモづくりに参加してくれた女の子から「上野さんに!」だそう。

 

その後本人にお礼をいうと、なんとフェルトマリモを自宅でもつくってくれているそう。なんだかとても嬉しくて、気前よく、「僕の名前で頂いたけどみんなにもらったものだよ!」なんて言わなくてもそんなの当たり前のことをわざわざ同僚に伝えた。

 

本日マリモ茶話会の3回目を無事開催できた。

 

とても忙しい時期でしたが、若菜先生の強力な協力と、忙しくなることを見越して、2月からすこしずつ準備したおかげで無事行えたことはとても嬉しい。

 

絵本「わたしはマリモ」にはおじいさんマリモがくずれさり、そのカラダが子マリモにとなるという描写がある。生命のリレーともいえるこのシーンだが、実際に昔「マリモには子どもがいる」と今よりもマリモが身近な時代に近辺の人に言われていたらしい。

 

マリモはその球体が大きくなるにつれ、内部の崩壊がすすむ、なぜならマリモは光合成のする植物、なのだから当然内部の光の届かない中心部は光合成を行えずその部分の空洞化が起こる。その時に中の崩れた元中心部を構成していたマリモ、たちが絡み合うことで中の空洞内でまた小さな玉のマリモになることがあるらしい。

 

まるで母体と胎児のようだ。

 

マリモの中に小さなマリモができた時には持ち上げてゆすると音がなるらしい。そしてしっかり2つに切断すると中から小さなマリモの姿が確認できるそうだ。

 

今日は乾燥標本マリモを参加者ひとりひとりに触れてもらえたのだが、「触りごこちがニードルマリモににている!」との声を聴いた。

 

大昔、マリモは特別天然記念物ではなかった、そのころはきっと触っても、持ち帰ってもおとがめはなくだからこそ盗掘や、人為的な環境悪化などマリモにとっての受難も味わった。ただ、ある意味近づこうと思えばだれでも近づける、そんな時代だったのだと思う。

 

そのマリモが今、また危機を迎えている、今回は今までと違う一歩進んだ保護活動が求められる。

 

専門家だけに任せるのではなく、専門家が研究した知識や経験、そして地域の宝であるマリモに心と思いを寄せて「みんなで力を合わせて守る」。これからは地域住民がその持つ価値やマリモの特性、社会的な意味を積極的に学び、伝え、再び市民の手に、目に、鼻に、心に触れる距離で関わる、そんな関係性に変化させていくことが必要だ。

 

その先にこそ世界自然遺産登録があると思う。

 

マリモの匂いは磯の匂いらしい。

【釧路新聞,2024年4月2日】

 

3月29日は「マリモの日」。「マリモでくしろを盛りあげ隊」の年次総会が開催されました。

 

 

私は、副会長の杉元先生から早くにお題を頂戴。2023年のNHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルになった日本の植物学の父・牧野富太郎について、「同じ時代に生きた牧野富太郎とマリモの発見命名者として知られる川上瀧彌との間に交流はあったのか?」そして「牧野はマリモを知り、関心を持っていたのか?」について調べた結果を「『らんまん』 と マリモ研究、あるいは牧野富太郎と川上瀧彌について」と題して紹介いたしました。

 

実は、川上が阿寒湖でマリモを発見した1897年の夏、彼は雌阿寒岳で新種となる高山植物 メアカンキンバイも採取しており、牧野がその標本に基づいて1902年に新種記載しています。学名には、川上の師であり、また牧野の友人でもあった植物学者・宮部金吾の名前がつけられました。メアカンキンバイは師弟愛と友情の花なのです 照れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【釧路新聞,2024年3月22日】

 

3月18日に清明小学校で開催されたマリモ学習会、釧路新聞でご紹介頂きました。有意義な体験となったようで、よかったです照れ。マリモは釧路の宝。こうした機会を増やしてゆく必要があるように思います。