マリモ博士の研究日記

  マリモ博士の研究日記

      - Research Notes of Dr. MARIMO -
  釧路国際ウェットランドセンターを拠点に、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」と周辺湖沼の調査研究に取り組んでいます

これまでに出演したテレビ番組に関する問い合わせがございました。ニュースを除くテレビ・ラジオ番組への出演や監修・協力などは以下のとおりです。(刊行した著書はこちら)

2020年
・チコちゃんに叱られる!「マリモのなぞ」(NHK,年7月31日)
・世界のあこがれ~北海道ブランド~「阿寒湖のマリモ」(AIR-G FM北海道,8月23日)

2019年
・ブラタモリ「阿寒・摩周〜“色”とりどりな宝の秘密とは!?〜」(NHK,7月27日)

 

「ブラタモリ」の収録を終えて(2019年6月12日,阿寒湖チュウルイ湾)

 

2017年
・Science View “Marimo Mysteries” (NHKワールド,5月17日)
・こころ ふれあい紀行〜音と匠の旅〜「阿寒湖の自然が生む奇跡」(BS-TBS,10月1日)
・ザ・フリントストーン「マリモトーク」(bayfm78,10月28日)

 

「こころふれあい紀行」の収録を終えて(2017年8月25日,阿寒湖チュウルイ湾)

 

2016年
・所さんの目がテン!「定番土産の科学」(日本テレビ,2月21日)
・世界ふしぎ発見「奇跡のアイスランド」(TBS,7月30日)
・この差って何ですか?「お土産マリモの秘密」(TBS,8月7日)

2015年
・火山と生きる 火山を学ぶ「雌阿寒岳と阿寒湖沼群」(NHK,1月31日)
・ワイルドジャパン「第2集 北海道~挑み続ける生きものたち~」(NHK BS,8月3日)
・サイエンスZERO「マリモ 球体の謎に迫る!」(NHK Eテレ,11月1日)
・Japan: Earth's Enchanted Islands ”3. Hokkaido (BBC)

2014年
・NHKスペシャル「神秘の球体 マリモ」(8月24日)
・さわやか自然百景 「北海道 阿寒の水辺」(9月21日)



NHKスペシャルの取材クルーと(2014年7月2日,アイスランド・ミーヴァトン湖)

 

2013年
・Honda Smile Mission 「マリモトーク」(TOKYO FM,9月16~20日)
・さわやか自然百景「北海道 阿寒の森」(NHK,11月17日)

2012年
・D!アンビシャス「神秘のマリモ 阿寒で守る」(札幌テレビ,7月8日)
・あさイチ“JAPA”なび「神秘!絶景!体感! 道東三湖」(NHK,9月20日)

2011年
・日本の祭り「トーラサンペ湖の御霊」(北海道放送,11月5日)
・森人「マリモを育む森 阿寒の旅」(BS日本テレビ,7月24日)

2010年
・理科する北海道? 驚きと感動の課外授業?(札幌テレビ/日本テレビ,7月31日)
・NHKエコチャンネル・おはよう日本「猛暑でマリモに異変」(9月11日)

2009年
・NHKエコチャンネル・水中お宝映像「マリモの謎に迫る」(NHK,8月27日)

2008年
・環境キャンペーン 「エコは北から」(NHK北海道,1月)
・ダーウィンが来た!生きもの新伝説「火と氷の国アイスランド①火山湖に謎の竜巻!」(NHK,5月4日)
・謎の国・日本「ジャイアントな藻類」(ブラジル・グロボTV,6月13日,日本人のブラジル移民100年記念番組)
・ナヌ!? 逆流リサーチ大賞「お土産・・・衝撃の真実!」(テレビ東京,12月2日)

2007年
・環境メッセージ「阿寒湖のラムサール条約指定」(NHKラジオ,1月19日)
・ほっかいどう宝島「阿寒湖のマリモ」(AIR-G' FM北海道,3月11日)
・素敵な宇宙船地球号「外来種は警告する」(テレビ朝日,6月10日)

 

2003年

・44ミニッツ「豊かな森と湖を取り戻すために」(NHK国際放送,8月18日)

 

2002年

・地球!ふしぎ大自然「火山が水鳥をよぶ-火と氷の国アイスランド」(NHK,10月21日)


2001年
・うじきつよしのワンダーポケット「マリモの不思議」(東日本放送,2月23日)

1999年
・たけしの万物創世記「湖の神秘」(テレビ朝日,9月14日)
・ラッコが日本に戻る日(TBS,11月23日)
・おもしろ学問人生「なぜマリモは丸いのか?」(NHK,12月15日)

1998年
・さわやか自然百景「阿寒湖」(NHK,7月5日)

1996年
・ネイチャードキュメントDEER(北海道テレビ/TBS,2月25日)

1995年
・阿寒の自然を慈しむ(北海道テレビ,6月18日)
・日本俳句紀行「夕焼けは湖の毬藻にとどかんか」(NHK,8月)
・紺野美沙子の科学館「なぜまるい?マリモ」(テレビ東京,9月23日)

1994年
・日本百名山「阿寒岳」(NHK,年9月)

1993年
・森と湖に抱かれて-阿寒町(北海道テレビ,10月31日)

これまでに刊行した著書に関する問い合わせがございました。論文や報告書を除いた図書や冊子は以下のとおりです。(出演したテレビ番組などはこちら)

 

2026年

・マリモ大全,北海道新聞社(単著)

 
2019年

・I am Marimo,Marimo-de-kushiro-wo-moriage-tai(監修)

・我是圓毬藻,臺北市立動物園(監修)

 

2018年

・わたしはマリモ,マリモでくしろを盛りあげ隊(監修)

 

2017年

・阿寒の大自然史 最新研究が説き明かす『火山・森・湖』とアイヌ民族の物語,釧路市教育委員会(分担執筆)

・湿地の科学と暮らし 北のウェットランド大全,北海道大学出版会(共著による分担執筆)

 

2016年

・フィールド活用ハンドブック-阿寒の自然と文化,釧路市教育委員会(分担執筆)

 

2015年

・レッドデータブック2014-日本の絶滅のおそれのある野生生物-9 植物Ⅱ,ぎょうせい(分担執筆)

 

2012年

・マリモ保護管理計画,阿寒湖のマリモ保全対策協議会(共著)

 

2010年

・生物学辞典,東京化学同人(分担執筆)

・阿寒国立公園パークガイド 阿寒・摩周, 財団法人自然公園財団(分担執筆)

・Phylogenetic, taxonomic and biogeographic studies in the Pithophoraceae (Cladophorales, Chloropyta), Netherlands Center for Biodiversity Naturalis(共著による分担執筆)

 

2009年

・マリモを守る。若菜勇さんの研究,理論社(監修)

 

2008年

・モンスーンアジアの生態史-地域と地球をつなぐ-第1巻 生業の生態史,弘文堂(共著による分担執筆)

 

2007年

・北海道の湿原,北海道新聞社(共著による分担執筆)

・緑王国,釧路市教育委員会(解読編集)

 

2004年

・ウチダザリガニを知っていますか?,阿寒マリモ自然誌研究会(共著)

・自然再生-釧路から始まる,ぎょうせい(分担執筆)

 

2003年

・前田一歩園財団20年の歩み,前田一歩園財団(分担執筆)

 

2002年

・外来種ハンドブック,地人書館(共著による分担執筆)

 

2001年

・阿寒,北海道新聞社(分担執筆)

・図説造粒-粒の世界あれこれ,日刊工業新聞社(分担執筆)

 

1999年

・バイオディバーシティー・シリーズ第3巻 藻類の多様性と系統,裳華房(分担執筆)

 

1997年

・自然と共生する豊かな生活空間をめざしてⅣ,財団法人北海道地域総合振興機構(分担執筆)

 

1996年

・まるいはマリモ,福音館書店(共著)

 

1993年

・藻類の生活史集成第2巻 褐藻・紅藻類,内田老鶴圃(共著による分担執筆)

 ここまで説明してきたように、2023年にサイエンティフィック・リポーツに発表された論文「巨大マリモの理想的な水温環境」は生物学的にありえない論理構成となっており、この論文を根拠として「阿寒湖の水温上昇によってマリモの破損が進んだ」と主張することなどできません。

 

 それにもかかわらず、論文発表以降、釧路市教育委員会とマリモ科学委員会は「マリモの破損は水温上昇の影響によるもので、水草除去対策は効果がない」との新聞発表を繰り返しています(北海道新聞: 2024年3月10日、6月22日、7月22日、12月19日、12月20日、2025年5月19日、5月20日、10月8日、12月22日、12月23日、いずれも佐竹直子記者による署名記事)。

 

 そもそも、「マリモ破損の原因となっている水草の広域除去対策」は、原因と対策を検討した文化庁天然記念物緊急調査(2014年~17年)の最終年に文化庁や環境省、北海道教育委員会、釧路市教委が参加したマリモ科学委員会(委員長は佐藤謙 北海学園大学名誉教授)で了承されたものでした。

 

 この会議には当該論文の著者たちも加わっており、論文の責任著者の一人である釧路市教委のマリモ担当職員は「水草除去は喫緊の課題」であるとして、チュウルイ湾のマリモ群生地に船を浮かべ、会議参加者に対し現地説明を行っています(下の写真)。

 

マリモ科学委員会による大型マリモと水草の生育状況視察(2017年7月31日).

2018年から始まる水草除去対策に向け,文化庁,環境省を始めとする関係者による情報と認識の共有が図られた.

 

 さらにこの担当職員は、2018年3月刊行の天然記念物緊急調査事業報告書の57ページで次のように記してもいます。

 

  ******

 2016年8月に上陸した大型台風によって、チュウルイ湾の浅瀬に繁茂していた水草の約8割が流失したと推定されたが(中略)、水草は依然として湾内の全域に低密度で残存しており、現状のまま事態が進行すればマリモ群生地が水草にとって代わられる可能性が高い。このため、今後も引き続き水草の除伐等によるマリモ群生地の環境回復に努める必要がある。(引用ここまで)

  ******

 

 ところが、2018~2020年の文化庁天然記念物再生事業で行われるはずだった水草除去対策は、<はじめに>で述べたように計画通り実施されず、2022年までに大型マリモ集団は消失してしまいました。

 

 しかしこの事実は公表されず、2024年にマリモ科学委員会の会議に水草対策の必要性を説明するため出席したところ(私は2021年度で委員を退任)、水草の増加によってマリモがさらに衰退している現状や過去の対策の経過に関する話も含めて、事務局である釧路市教委にとって都合の悪い情報は科学委員会全体で共有されていない、すなわち委員の多くに知らされていない実態を知りました。

 

 そしてマリモについては、「衰退傾向にあるが詳しい生育状況や原因については分かっておらず、対策を検討するため2024年から天然記念物緊急調査を行う」という驚くべき話に変わっていました。当該論文と2度目となる天然記念物緊急調査の結果とをもって、「人為の及ばない地球温暖化のせいでマリモはなくなった」と幕引きを図る目論見であったと思われます。

 

 こうして長期にわたって対策が行われず放置され続けてきた結果、水草の分布面積と生育量は過去に例がないほど増大する一方、大型マリモはすっかり姿を消して生物量も激減してしまいました。

 

 事態は2014年に天然記念物緊急調査が始まった際に予測した「最終的にマリモ群生地は水草に取って代わられる」というマリモ消失の最終段階に達しており、2025年から水草対策を本格化させたものの、除去された水草は全体から見ればごくわずかに過ぎません。

 

 当該論文と既刊の事業報告書をきちんと読み、一連の経過を顧みれば、当該論文はマリモの科学的な理解の深化やマリモ保護の推進のためでなく、「特別天然記念物 阿寒湖のマリモ」の拠り所である大型球状マリモ集団を消滅に追いやった当事者たちが自身の責任逃れと保身のためにあみ出した絵空事であったことがよく分かります。

 

 適正な治療は正確な診断があってこそ可能になります。皆が正しい情報を共有し、力を合わせてマリモの保護・再生に取り組むことができるよう、状況が改善されるのを切に願っています。

 

 (おわり)

 

   《目次と「はじめに」へ 》

   《 ←前へ 》 ⑯ 適正なマリモ保護のあり方を問う

 ここまで、2023年にサイエンティフィック・リポーツに発表された論文「巨大マリモの理想的な水温環境」について、詳しく検討してきた。全体を一言でまとめれば、「何を見ているのか分からない」ことに加えて、「かも知れない」という推論に推論を重ねる構成となっている。

 

 まず、論文の核心部と言える球状マリモの空洞形成について、マリモを暗黒下に置くと重量が減少するというデータを示し、微生物の分解によるマリモの死細胞の重量減少だと主張しているものの(① 水温上昇でマリモが破損!?)、実験初期には光を絶った条件で貯蔵物質であるデンプンの減少が起こると考えられ、測定値が何を示しているのか分からない(⑬ 細胞が致死・分解に至る過程)。

 

 次いで、「水温上昇によって球状マリモの外層厚が薄くなる」話が論旨であるのに、肝心の水温の変化、外層厚の変化とも実測値はなく、推算に基づいている(⑭ 外層厚計算のトリック)。

 

 しかも、水温上昇の影響を評価するにあたって、マリモの成長速度を一定のままとすることで、水温が上がると必ず外層厚がより薄く算出されるつくりになっている(⑭ 外層厚計算のトリック)。だが現実には、前回、光合成-温度関係の知見を踏まえて説明したように、温度が変わっても植物の成長速度が変わらないなど、生物学的にはありえない。

 

 加えて、光合成-温度関係のみならず、光合成によるデンプン合成(⑪ 明暗で変動する炭素はデンプン)や生態系における窒素循環(⑫ マリモが脱窒?)は高校の生物で習う極めて基礎的なことがらである。それにも関わらず、意図的にか、それとも単に知らないだけなのかは図りかねるが、研究のデザインや考察にこれらの事象は含まれていない。

 

  *****

 論文が発表される前年の2022年、それまで破損と緩集合化が進んでいた大型マリモが集団ごと流失して、群生地の湖底には小さなマリモしか残されていない状況が判明した(マリモ集団消失す)。しかし、この事実は公表されず、またこれ以前、水温上昇と関連づけられるマリモの異変は認識されていなかったにも関わらず、突如、翌2023年に当該論文が発表された。

 

 論文発表を報じた10月20日の釧路新聞には、「温暖化による阿寒湖の水温上昇によって大きなマリモが壊れやすくなる」との論文の著者のコメントが添えられ、以降、「地球温暖化によって大型マリモが消失する」と喧伝(けんでん)されるようになった。

 

 そして、それまで釧路市教委とマリモ科学委員会がマリモの破損原因と公式に認めてきた水草の扱いについては、「市教委としては、マリモの衰退は水草に原因があるとは考えておらず、水草対策は実施しない。これはマリモ科学委員会で決まったこと(2024年5月21日、マリモ保全推進委員会総会)」として、突如、現状認識が変更された。

 

 本稿で論じたように、この根拠となっている当該論文の内容は問題だらけで、「水温が上昇すると球状マリモの外層厚が薄くなる」という結論を導けないことは、生物学を学んだ者ならすぐに分かるはずである。

 

 それにも関わらず、なぜ不適正な研究結果に基づいてマリモの破損原因が論じられ、対策の根本となる現状認識が変えられたのか――その経緯のみならず、市教委マリモ研究室に保管されていた共同研究者の研究成果が無断で論文発表された疑惑(③ 知見は盗用されたのか)、発表済みの論文のデータが改変されて再発表された疑惑(④ 改変された6個のデータ)、そして生物学的にあり得ない論理から構成されている当該論文の査読(投稿された論文の審査)の過程も含め、学識・人物とも確かな第三者によって実態が検証される必要があるだろう。

 

 いま、適正なマリモ保護のあり方が問われている。

 

2013年ごろから顕在化し始めた大型マリモの破損(2013年8月29日).

当該論文では,水温が上昇した時期を2013年から2019年とし,マリモ破損の原因をこの水温上昇に求めている.

 

 (つづく)

 

   《 目次と「はじめに」へ 》

   《 ←前へ 》 ⑮ 高水温の影響

   《 次へ→ 》 おわりに―論文は責任逃れのための絵空事

 

【釧路新聞『日本マリモ紀行#638』2025年6月23日に加筆】

 マリモの光合成に関する説明を続けよう。挿絵はマリモ糸状体の光合成・呼吸速度に対する温度の影響を示したグラフである。

 

 前回の挿絵でも同じ光合成-温度関係のグラフを示したが、今回は測定方法が異なる。前回は光合成によって発生した酸素の容積を、今回は溶液中の酸素濃度を専用の電極を使って測定している。測定方法のみならず実験に用いたマリモ糸状体の保存条件なども違うため、前回は30℃で、今回は20℃で最適温度に達しているが、光合成速度が温度依存的に上昇し、最適温度に達すると低下するパターンは同じである。

 

 また今回のグラフでは、呼吸速度も温度依存的に漸増するものの、30℃で大きく落ちている。これらの結果から、25℃に達すると光合成系がダウンし始め、30℃で呼吸系の代謝も抑制されると分かる。

 

 他方、培養実験の結果(連載第525回)では22℃で良好な成長が得られている(これ以上の高温条件は調べられていない)。従って、マリモ糸状体の成長速度は22℃かこれをやや上回った温度で最適温度に達すると見てよいだろう。

 

 こうした研究結果を踏まえ、本連載では「球状マリモが高水温や弱光条件に長く置かれると糸状体の成長速度が低下して外層(球体を形づくっている外側の糸状体が集まった層)が薄くなり、破損に繋がる」と何度か説明してきた。

 

 ところが、今ここで取り上げている論文では、外層が薄くなって破損する理由を「温度が上昇すると内部の空洞形成が速まるから」と説明している。そして、この根拠として、暗黒下に置かれた球状マリモの重量減少と日積算水温との回帰式を用いて水温が上昇すると重量減少速度が大きくなるという推算結果を示している(⑭ 外層厚計算のトリック)。

 

 温度が上昇すると球体内部の微生物の活性が上がり、死んだ細胞の分解が進むのは一般論として言えるであろう。だが、球状マリモを丸ごと暗黒下に置いた直後の重量減少には、デンプンなどの同化産物が消費される段階があるはずで(⑬ 細胞が致死・分解に至る過程)、このプロセスに関わる細胞はまだ生きている。マリモ糸状体が微生物に分解されて空洞を生じるのは細胞が死んだ後だから、重量減少がそのまま空洞の拡大を意味しているわけではない。

 

 では、温度が上昇すると球体を構成する細胞の致死率は増加するのだろうか。北海道大学の照本勲博士は直径3 cmの集合体を様々な温度の水道水に浸した際の変化を1965年に報告している。以下、その結果である。

 

 ・30℃、24時間で害なし。

 ・35℃、1~2時間で害なし。

 ・35℃、7時間処理した直後は生存していたが、

  24時間後の細胞の生存率は30~50%に低下。

 ・35℃、24時間処理で表層の先端細胞だけが凝固して致死。

     10日後には集合体が壊れ始め、

     80日後にはバラバラになって大部分の細胞が致死。

 ・40℃、6.5時間処理すると1カ月後にすべての細胞が致死。

 ・45℃、1時間で原形質が凝固して速やかに致死。

 

 したがって、<⑭ 外層厚計算のトリック>における光合成-温度曲線の最適温度が30℃であったことからも、マリモは30℃くらいまでの温度には耐えられるが、35℃になると不可逆的なダメージが現れ始めると分かる。

 

 類似の例として、2010年の夏には凪が続いて水深の浅いチュウルイ湾のマリモ群生地の水温が30℃に達したことがあるが、細胞が致死するような現象は確認されていない。マリモ生育地の水温が30℃を大きく超えることがなく、また期間も真夏の一時期に限られるなら、成長は抑制されるものの細胞が死に至るほどの悪影響はないと見てよいだろう。

 

マリモ糸状体の光合成速度(A)ならびに呼吸速度(B)と温度との関係.バーは標準偏差を表す.『若菜勇(2003)水生植物(マリモ)の補償深度モデルに基づく湖水浄化事業の定量的評価,河川整備基金報告書』を引用・改変.

 

 

 (つづく)

 

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   《 ←前へ 》 ⑭ 外層厚計算のトリック

   《 次へ→》 ⑯ 適正なマリモ保護のあり方を問う

 

【釧路新聞『日本マリモ紀行#637』2025年6月16日を改変】