■ はじめに
近年、阿寒湖のマリモ群生地のひとつチュウルイ湾では、マリモの生育状況と周辺環境が急激に悪化しています。この最大の理由は、1980年代半ばから始まった湖水の富栄養化対策が奏功して水質が改善した結果、透明度が上昇し、その影響で水草が増えてマリモの生育を圧迫しているためです。さらに、こうした変化が原因になって、球状マリモの崩壊や緩集合化(ボサボサ化)が進行するとともに、マリモの湖岸への打ち上げが頻発するようになり、生物量の減少を招いています。
危機に瀕したマリモを救うため、関係者や市民が協力して対処しなくてはならない局面に入ってきました。情報を共有して対策に向けた議論の活性化を図るため、経緯と現状、そして課題について、釧路新聞で連載している『日本マリモ紀行』で緊急報告しました。本稿が、マリモの科学的な理解の深化と保護の推進に役立つことを期待しています。
■ 目次
① 予測されていた大量打ち上げ
急速に崩壊と緩集合化が進む球状マリモ(2021年11月8日、チュウルイ湾)
2021年12月1日にチュウルイ湾で発生したマリモの大量打ち上げ(12月7日)