石天と言う俳優を日本人は何処まで知っているかを考える! | 何でもアル牢屋

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これから書く、この方の事を、何処までの人が知っているか、興味があるか、関心があるか、全く未知数な訳だが、反応を度外視して書いていきたい。
石天と書いてディーン・セキと読む。中国の俳優である。日本で最も多くの人が見たのは、間違いなくジャッキーチェンの映画「ドランクモンキー酔拳」だろう。道場の師範代として登場した個性的な人である。
ネット社会となった今、誰でもするであろう行動は、「あの人、どうしてるんだろうな~・・・」と唐突に思い付き、検索をする事だろう。今回の私が正にそうだった。2021年10月31日、秋も深まる頃にディーン・セキが亡くなった。癌だったそうだ。享年72歳。彼は世界的な俳優でもなければ、ジャッキーチェンやブルース・リーの様なスターでもない。当然、彼の死も日本の報道がする筈も無い。だからネットで知って驚いた。最近、彼の死を知った。しかも死去から3年も経っていた。そこで私は思った。そうか、私はディーン・セキと言う人物を3年も無関心だったのかと。

 

 

ネットで彼を検索すると、既に死亡記事は何件か上がっていた。そう言った記事も、そもそもディーン・セキで検索する事が無かったので知る筈も無い。
我々、日本人からすると、この俳優の事を何処まで知っているんだろう?と考える。彼を見掛けた殆どがジャッキーの初期作品ではなかろうかと思う。ドランクモンキー酔拳、スネーキーモンキー蛇拳、クレージーモンキー笑拳、カンニングモンキー天中拳。これらの作品は一括して<モンキーシリーズ>と呼ばれている。その全てに彼は姿を見せていた。
印象と言うのは、ジャッキーの相棒と言うか、漫才の相方と言うか、とにかく腐れ縁の様な関係で、ジャッキーとの絡みの場面ではコントの様なやり取りが演出され、プロの漫才師すら凌駕する様な面白い場面を生み出した。ディーン・セキが突っ込み、ジャッキーがボケる。今更ながらにジャッキーチェンと言う人は笑いの才能も持っていた。変顔やリアクションも実に様になっていた。
こうなってくると、ジャッキーにとってディーン・セキと言う人は、どう言う存在だったんだろうかと知りたくなる。私の知る限り、ジャッキーが彼について何かの書籍で書いていたとか、インタビュー映像で語っていたと言う記憶は無い。彼の死に関して何らかのコメントを出したと言う記録も無い。ジャッキーの口から出て来るのは、酔拳や蛇拳で師匠役を演じたユエン・シャオ・ティエンの事ばかりだった。ジャッキーは後に、ベスト・キッドのリメイクで師匠役を演じ、そのモデルとなったのは、ユエン・シャオ・ティエンだったと語っている。

ディーン・セキの出演作の年表を見てみると、ジャッキーとの共演は83年の「ジャッキーチェンの醒拳」で終わっている。有名な事だが、この作品は曰く付きの映画で、内輪揉めが切っ掛けとなって製作された。判り易く書けば、監督とジャッキーが揉めた。それで誕生したのが「クレージーモンキー笑拳」だった。監督、脚本、主演の3つをこなし出来上がった奇跡的な作品となった。
私は両作品とも観ているが、どちらも面白い。クレージーモンキー笑拳を観た後に醒拳を観ると、両作品が繋がってるかの様な錯覚を起こす。出演者は同じだが、キャラは違う。醒拳の方は、笑拳エピソード0と言う設定だったとしたらワクワクしてくる。
で、それ以降、悪漢探偵と言うシリーズ物に顔を出し、87年に日本でもヒットしたチョウ・ユンファの「男たちの挽歌」の2作目に出演している。この辺が、日本人にとってのディーン・セキを見れる限界だろうと思われる。男たちの挽歌は結構なメジャー作だが、チョウ・ユンファに興味が無かったので内容は知らない。
そもそも、87年当時、彼の名前が石天と書いてディーン・セキと言う名前だった事を知っていた日本人が、どの位いたのかすら疑問。例えば、映画「少林寺」の主演を演じたリー・リンチェイが、ジェット・リーと言う名前に改名したのも随分後だった。「少林寺三十六房」のリュー・チャーフィーも、いつの間にかゴードン・リューと言う誰だか判らない様な名前に変えていて、ユマ・サーマン主演の「キル・ビル」に登場していた。ディーン・セキと言う名前がいつ頃から使われていたのか見当もつかない。

 

 

私の中のディーン・セキの最高傑作は「カンニングモンキー天中拳」の屁っこきプー太郎だろう。

まず、このヘンテコな名前のインパクトが子供ながらに強烈だった。何で、こんな名前なのか?と作品を観直してみると、作中で本人が名乗ったのではなく、ジャッキーが唐突に発したネーミングだった。彼が近づくと何やら臭ってくる。登場する度に屁をこく。会話中にも屁をこく。いわゆるホームレス風な風貌であり、その風貌と屁が混ざり合い、より臭そうに見える効果を生み出す。
驚くべきは、そんな彼は拳法の達人であった。彼は度々、ジャッキーに拳法の一手を教え、フラリと去っていく。悪党との最終決戦において、屁っこきは嘘の様に正装して現れ、ジャッキー達に加勢する。このギャップがイイ。これほど輝いて見えたディーン・セキは無かったのではないか?
最後に彼のインタビュー動画をアップしておこう。これは貴重な映像では無かろうか?
中国語なので何を言ってるのかは判らないが、この動画で重要なのは話の内容ではなく、喋っている彼の姿を見れる事が重要なのである。彼について自分なりに書ける事を書けたので、これで終わりにしようと思う。私にとって彼は少年時代の特別な人であり、懐かしい想い出である。これからも私は彼の姿を映画で観るのだろう。