ドラキュラに反乱を起こす、レンフィールドと言う男の物語!  | 何でもアル牢屋

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2023年、二本のドラキュラ映画が公開された。「レンフィールド」「ドラキュラ デメテル号・最期の航海」である。レンフィールドはアメリカのみで8月に上映されたが、日本では未公開。デメテル号の方は日本でもヒッソリと上映されたが、ロクな宣伝力も無かったので、知る人ぞ知るって感じだった。両作品とも先日、レンタル店に置いてあったのでレンタルし、観終えたので感想を書いていきたい。
まず、レンフィールドの方だが、最大の話題性はドラキュラ役にニコラス・ケイジが起用された事だった。特典によれば、ドラキュラ映画の大ファンで、是非、やりたいと言う願望から出演に至ったらしい。映画そのものはホラーではなくコメディーで、これから観る人はホラーやシリアスを期待してはいけない事を書いておきたい。しかしながら、この映画の良さは、やりたい放題と言うか、ニコラス演じるドラキュラが、これまで見た事が無い様な殺戮を繰り広げる。当然ながらグロ描写満載であり、まず日本の厳しい条件化での地上波放送は無いだろうなと思う。
ニコラスは風貌だけで言えばクリストファー・リーに近い。リーのドラキュラは品格と威圧感があるが、ニコラスが参考にしたドラキュラ像はリーではなく、昔、「吸血鬼ノスフェラトゥ」と言う映画で吸血鬼を演じたマックス・シュレックなんだそうだ。なるほどって感じで、動きや仕草がスタイリッシュなドラキュラではなく、奇妙に体を揺らしたり、手先をクネクネしてみたり、ノラリクラリしたかと見てると、ワッと飛びついて襲ってくる。ニコラスは、その動きを「コブラの動きを取り入れた」と語っている。
 

タイトルのレンフィールドと言うのは、ドラキュラ物語に登場する最初に支配されてしまった登場人物として登場する。ゴキブリ、蛾、芋虫など虫を好んで喰うイカレタ人物として視聴者の印象に残る。この映画は、そのレンフィールドが主人公であり、その彼が主人のドラキュラに反旗を翻すと言う「もしも」の物語である。
この作品のコメディー部分は、虫食いのレンフィールドが虫を栄養源とし、虫を食べる事によって一時的に超人的な能力を得ると言う点であり、キノコをゲットして巨大化するスーパーマリオであり、ポパイがホウレン草を食ってマッチョになり、宿敵のブルートをブッ飛ばす展開と同じである。もはやテレビゲームとも言える。
個人的には、もっと真面目なドラキュラ物語が見たかった訳で、貫禄十分のニコラスケイジのドラキュラが勿体無い様な気がした。ニコラスはキャリア的にも年齢的にも、もうハリウッドの大俳優と言う位置付けでもおかしく無い存在である。しかもドラキュラの風貌が良い。序盤、吸血鬼ハンターとのバトルが展開されるのだが、このシーンは見所の一つ。
この映画のレンフィールドは基本的に不死の肉体を手に入れており、腹を切り裂かれて腸が飛び出そうが、直ぐに治癒する。銃撃を何発受けようが平然としている。この能力はドラキュラの血によって得られている。だがドラキュラの最大のミスは、自分の手下に能力を授けてしまった事であり、結果的にその能力はドラキュラへの反逆の手段として機能してしまう。
この物語を大真面目に作るのであれば、レンフィールドと御馴染みのバン・ヘルシングが共闘し、ドラキュラに立ち向かう方がワクワクする展開なのだが、ニコラスが幾らドラキュラ役を熱望したとは言え、よく出演したなと正直思ってしまった。むしろ、ニコラスが大真面目で有りがちなドラキュラを演じたくなかったのだろうか。コメディーだからこそ了承したとも考えられる。

作り手と観る側では求めるモノが違うと言う事か。中々難しいモンである。