Wind Walker -12ページ目

Wind Walker

ネイティブアメリカンフルート奏者、Mark Akixaの日常と非日常

大地の声: アメリカ先住民の知恵のことば

 

 

『大地の声 アメリカ先住民の知恵のことば 阿部珠里著 2006年

 

 

今回も故・阿部珠里先生が残された一冊。

 

アメリカ先住民の名言を紹介する本は今までに何冊も読んだことがありましたが、本作の特徴は3部に分かれていること。

 

第1部は名句・名言編で、「今日は死ぬにはいい日だ」などの言葉を紹介するとともに、阿部先生が自分の言葉で解説してくれます。

 

このような「名言+その解説」というスタイルの本は過去に何冊も読んだことはありましたけど、さすが学者の先生と言うべきか知識量と自分の考えを言語化する能力が群を抜いていて、この本の中でもっとも読む価値を感じるパートです。

 

第2部は民話・伝承編で、「跳ぶネズミの冒険」や「火を盗んだウサギの話」などお馴染みの物語が12話紹介されます。

 

第3部は詩歌編。インディアンの伝統歌の歌詞が紹介されます。欲を言えばこのパートにも解説が欲しかったところですが、ここでは「考えるよりも感じてほしい」という思いがおそらくあったのでしょう。

 

第1部で「The song is very short because we understand so much.(分かっているのだから歌は短くていい)」(P.75)という言葉が紹介されていて、その言葉通り歌の文句は短く、まるで俳句や和歌のような趣きがあります。

 

 

というわけでアメリカ先住民の文化の「良いとこ取り」とも言うべき贅沢な一冊で、今まで「先住民を学ぶ上でオススメの本は?」と聞かれたら第1回ベスト10にも入れた『アメリカ・インディアン悲史』を挙げていましたが、今後はこちらも紹介したいと思います。

 

『アメリカ・インディアン悲史』もとても読んでいただきたい本ではありますが、タイトル通り、白人がやって来て以降の悲しい歴史を描いた一冊でした。

 

なにしろ白人の到来以前にアメリカ先住民は文字を持っていなかったので、きちんと記録されていることを書こうと思えばほとんどの本が白人との抗争に触れることになるのは致し方ない面もあるのでしょうけれども、本作ではありがたいことに、彼らが長い歴史の中で育んできた知恵にフォーカスして書かれています。

 

 

個人的には新たに学べたことは多くはなかったのですが、今まで読んできたたくさんの本に書かれていた重要な教えが一冊にまとまっていて、正直、これ一冊読むだけで誰もが私と同じくらいの知識を得ることができるのではないかと思いました(笑)

 

そんなわけで、アメリカ先住民に興味のある方には

最大級のオススメ。

 

今後またベスト10のような企画をやる機会があれば、きっとこの本を選ぶと思います。

 

 

 

出版元である大修館書店のサイトでも購入できますので、Amazonで在庫がなくなってしまった場合も高値で購入されないようにご注意ください。

 

 

 

27日土曜日、長野県の原村で25周年記念ソロコンサートを開催しました。会場は森の中の教会。

 

25年前にアメリカへ旅立つ前、フリーアナウンサーの小林節子さんが当時所有していたリングリンクホールに私は居候させていただいていました。

 

教会はそのリングリンクホールから歩いて行ける距離にあります。

 

 

 

小林節子さんには、宮沢賢治の「なめとこ山の熊」(抜粋)とナンシー・ウッドのイーグルに関する詩を朗読していただきました。

 

原村をイメージして作曲した「こころの原風景」を演奏したり、約20年間諏訪湖を毎年訪れていたグルの話をしたりと、原村でやるにふさわしい内容ができたのではないかと思います。

 

私がなぜ原村を第二の故郷と呼ぶのか、皆様に伝わったでしょうか?

 

10月31日に東京でも25周年記念ソロコンサートをやりますが、内容は原村とは同じものにはなりようがありませんので、どうぞ来月もお楽しみに。

 

ご来場の皆様、八ヶ岳中央高原キリスト教会様、小林節子様、お手伝いいただいた小倉輝久様、ありがとうございました!🦅

セブン・アロ-ズ (1)

 

『セブン・アローズ』 ヘェメヨースツ・ストーム著 1972年(日本語版;1992年 阿部珠里訳)

 

 

阿部珠里さんの最初の著作『聖なる木の下へ』の中で、ある小説を翻訳したことがネイティブアメリカンの教えに触れるきっかけだったことが書いてあったので、ググってみたらその小説とは本作のことでした。

 

 

舞台は白人がやってきた頃の北アメリカ。白人のもつ武器や暴力性に蹂躙されつつも、自分たちの伝統や精神性を見失わないように努める平原インディアンたちが主人公です。

 

まず目を引くのが、写真がたくさん掲載されていること。登場人物は架空のキャラクターなので写真に写っている人物とは当然関係ないのですが、物語の没入感を高めてくれる効果が絶大で素晴らしいです。

 

そしてキャラクターの名前が「灰色のふくろう」とか「夜の熊」などといった名前であるのも、ネイティブアメリカンの世界観を知る手掛かりとして興味深いです。

 

ショックだったのは、主要な登場人物がとんでもなくあっさり死ぬこと。死そのものが描写されることは少なく、敵が攻めてきたというシーンの後、「○○は死んだ」というやけに淡白な記述があり、「ええっ!? 主人公がこんなにあっさりと?」と思わず自分の目を疑いました。

 

しかしこれは一人の主人公の物語ではなく、教えを語り継いでいく民族や、教えそのものが主人公なのだという意図があってのことなのです。

 

 

あと特筆すべきは第1巻に「跳ぶネズミ」(ジャンピング・マウス)の話が挿入されていたこと。

 

一匹のネズミがほんの小さな好奇心から大冒険に至るという物語で、昔「ジャンピング・マウス」単体を本で読んだ時は「なんか変わった話だな」という程度にしか思わなかったのですけど、本作では少しずつ語っては今のエピソードにどんな意味が込められているのかを解説してくれるので、そこから受けとる学びや感動が桁違いでした。

 

 

この手の本をたくさん読んでいると知っている内容ばかりのことが多いのですけど、本作は初めて聞く教えばかりでした。ただし一度読めば理解できるような内容ではなかったので、時間をおいてからまた読み直したい本でした。

 

 

「一回聞いただけで、最初からわかる者はいない。(略)その時どきにどんなふうに理解するかは、今自分が、聖なる輪(メディスン・ホイール)のどこに位置しているかによって決まる。自分の身に即して受けとめる者、漠然と受けとめる者、内省的に受けとめる者、また智恵をもって受けとめる者、さまざまだ。(略)一回聞いただけで、すべてをわかろうなどとは、愚かなことだ。人の魂の成長につれて、物語の意味も成長してゆくものなのだ」(2巻 P.105~106)

 

 

全3巻ですが文字数やページ数はそれほど多くないので、わりとさらっと読めます。おすすめ。

 

 

 

 

 

 

この本の翻訳を作家の中上健次さんに勧められて始めたとのことですが、3巻が出版された年にちょうど中上さんが亡くなったとあとがきに書いてありました。

 

その冥福を祈る阿部珠里さんももうこの世にいないことが、この本の「人は死んでも、教えは継承される」という内容を体現しているようにも感じました。

 

是非あなたも聖なる教えを受け取り、次の世代へ伝えてください。