『大地の声 アメリカ先住民の知恵のことば』 阿部珠里著 2006年
今回も故・阿部珠里先生が残された一冊。
アメリカ先住民の名言を紹介する本は今までに何冊も読んだことがありましたが、本作の特徴は3部に分かれていること。
第1部は名句・名言編で、「今日は死ぬにはいい日だ」などの言葉を紹介するとともに、阿部先生が自分の言葉で解説してくれます。
このような「名言+その解説」というスタイルの本は過去に何冊も読んだことはありましたけど、さすが学者の先生と言うべきか知識量と自分の考えを言語化する能力が群を抜いていて、この本の中でもっとも読む価値を感じるパートです。
第2部は民話・伝承編で、「跳ぶネズミの冒険」や「火を盗んだウサギの話」などお馴染みの物語が12話紹介されます。
第3部は詩歌編。インディアンの伝統歌の歌詞が紹介されます。欲を言えばこのパートにも解説が欲しかったところですが、ここでは「考えるよりも感じてほしい」という思いがおそらくあったのでしょう。
第1部で「The song is very short because we understand so much.(分かっているのだから歌は短くていい)」(P.75)という言葉が紹介されていて、その言葉通り歌の文句は短く、まるで俳句や和歌のような趣きがあります。
というわけでアメリカ先住民の文化の「良いとこ取り」とも言うべき贅沢な一冊で、今まで「先住民を学ぶ上でオススメの本は?」と聞かれたら第1回ベスト10にも入れた『アメリカ・インディアン悲史』を挙げていましたが、今後はこちらも紹介したいと思います。
『アメリカ・インディアン悲史』もとても読んでいただきたい本ではありますが、タイトル通り、白人がやって来て以降の悲しい歴史を描いた一冊でした。
なにしろ白人の到来以前にアメリカ先住民は文字を持っていなかったので、きちんと記録されていることを書こうと思えばほとんどの本が白人との抗争に触れることになるのは致し方ない面もあるのでしょうけれども、本作ではありがたいことに、彼らが長い歴史の中で育んできた知恵にフォーカスして書かれています。
個人的には新たに学べたことは多くはなかったのですが、今まで読んできたたくさんの本に書かれていた重要な教えが一冊にまとまっていて、正直、これ一冊読むだけで誰もが私と同じくらいの知識を得ることができるのではないかと思いました(笑)
そんなわけで、アメリカ先住民に興味のある方には
最大級のオススメ。
今後またベスト10のような企画をやる機会があれば、きっとこの本を選ぶと思います。
出版元である大修館書店のサイトでも購入できますので、Amazonで在庫がなくなってしまった場合も高値で購入されないようにご注意ください。




