『坊っちゃん』 夏目漱石著 1906年
夏目漱石といえば、これも読んだことなかったな、ということで今回は『坊っちゃん』。
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」という有名な出だしで始まる小説ですが、読んでみたら「無鉄砲な人物がまた一つ損をした」というだけの話のように思えました(笑)
漱石の作品の中では特に人気のある一作らしく、たしかにキャラクターは皆はっきりしていて分かりやすく、主人公はまっすぐな性格で、ストーリーは勧善懲悪、と人気が出る要素ばかりの作品には思えましたけど、私としてはわりと読むのが辛い作品ではありました。
本作の主人公は江戸っ子で、曲がったことの嫌いな性格であり、しかもまだ社会に出たばかり。会う人すべてにあだ名をつけて初対面の印象をそのまま変えず、他人の立場を理解しようともせず、なにかあっても「自分は悪くない」と考える、恐ろしいほど未熟で自己中心的な人物。
私自身、若い頃は同じような性格で、結局アーティストという特異な立ち位置以外には自分の居場所を社会の中で作ることができなかった人間なので、我が道を突き進む主人公の考え方や行動には喝采を送ることができず、「なんでそんな間違った選択ばかりをしてしまうのよ・・・」と我が事のように終始ため息をつきっぱなしでした。
結局のところ、最終的に主人公がやったことは「暴行」という違法行為に過ぎず、もっと赤シャツや野だが社会的に成敗されるような結果にならなければ爽快さも感じられませんし、主人公が社会に適応できずに故郷に戻るという結末にもがっかりです。
漱石がこの作品に「坊っちゃん」というタイトルをつけたのも、「純粋さだけでは社会を渡っていけないぞ。もっと大人になれよ」というメッセージが込められているのでしょう。
というわけで、「自分は悪くない。間違っているのは社会の方」と無邪気に信じ込んでいた過去の未熟な自分を戯画化され、ずっと嘲笑され続けられたような、悪夢のような読書体験でした。
ところで本作では清(きよ)という年老いた下女がずっと主人公の心の支えになっていたことが印象的でしたが、『門』でも決して金銭的に裕福なわけでもない夫婦の家に住み込みの下女がいたことに驚いたものです。
今の時代だとそのような存在はよほどの大金持ちしか雇えないようなイメージですけど、社会的に弱い人間と共に生きていくほうが、核家族よりもずっと情操教育的には良いように思えました。














