アメリカインディアンの世界ではよく「メディスン」という言葉を耳にします。
英語で「medicine」は「薬」という意味ですけど、彼らは「偉大なもの」や「不思議なもの」に対してメディスンという言葉を用いるのです。
例えば、スペイン人が連れてくるまで北米大陸に馬はいなかったので(原種はいたがとうの昔に絶滅した)、初めて馬を見たインディアンたちは驚いて「メディスン・ドッグ」と呼んだのです。
また呪術医のことも「メディスンマン」と呼びますが、彼らの仕事は病気を治すことだけではなく、逆に呪いをかけたりもします。医師というよりはやはり呪術師であり、霊能力者ですね。
ではなぜそのように不思議なもの全般をメディスンと呼ぶのか、その理由をずっと疑問に思っていたのですけど、先日読んだ本にその答えが載っていました。
それは、自分たちの共同体を良くするものはすべて「メディスン」だということです。
納得!!
・・・納得はしたのですが、それが書いてあったというのが例の真偽不明な『ミュータント・メッセージ』なのですよ。
書評の時のブログでは「その手の本の中ではトップクラスに面白かった」と言いつつ、「作り話の可能性が大」とも書いていたので、褒めているのか貶しているのか分からなかったかもしれませんが、本当にその両方なのですよ。
本を売るため・自分が有名になるために書かれた作り話だということは間違いないと思うのですが、だからと言って一から十まで嘘とも思えず、きっとなにかしら体験されたことを盛って書いたのではないかと思っています。願望込みで。
なんの役にも立たないものを「毒にも薬にもならない」という言い回しがありますけど、『ミュータント・メッセージ』に関しては毒にもメディスンにもなる一冊でしょう。
アボリジニの人たちが怒っていることを思うと安易に他人にオススメしてはいけない気もしますが、個人的にはフィクションであることを理解した上で読めばわりと面白い本だとは思っています。