『はみだしインディアンのホントにホントの物語』 シャーマン・アレクシー著 2010年
本作は、光文社の『トム・ソーヤーの冒険』のあとがきで紹介されていた一冊です。
大抵の場合アメリカインディアンというと我々の頭に浮かぶのは押し寄せる白人の波と抵抗して戦っていた頃の、いわば過去の絶滅した民族としての姿です。
この本で描かれているのは、今を生きる現在のインディアンのリアル。
あらすじ:主人公はワシントン州のスポケーン族の保留地に暮らす高校生。生まれつき脳に障害を抱えていて体も弱かったために周囲からいじめられていた。ある日、教師からのアドバイスで居留区から出て白人の学校へ転校。貧乏や人種偏見などに苦しみながらも、主人公は持ち前のあきらめない心で逆境を乗り越えて少しずつ成長し・・・という物語。
多くのインディアンは居留区の中で生涯を終えますが、転校をアドバイスした教師の言葉によればそれは「あきらめることしか教わっていない」から。
主人公は勇気を持って白人しかいない世界へと飛び込んで行きます。
友達も知り合いもいない土地なのでやはり最初は避けられる存在でしたが、明るい性格とバスケットボールの才能のおかげで次第に認められて人気者になっていきます。
「世界は人種ごとに分かれてるんだって、前は考えていたんです。黒人と白人は違うし、インディアンと白人は違うってね。でも、そうじゃないって、わかりました。人間には二つの種類しかいないんです。クソったれと、クソったれじゃないやつの二種類です。」(p.258)
私たちが無意識に築いている、「そんなことは自分には出来ない」という見えない壁を乗り越えるパワーを与えてくれる一冊でした。オススメ。
ホントにホントでちょっぴりフィクション。著者によると78%が実話だそうです。