先日ご案内した、9月16日放送分の「世界ふしぎ発見」の録画を遅ればせながら拝見しました。
今回はナバホ特集。
ナバホ居留区にて、河野謙児さんと私。(2014年)
観ていてビックリしたのは、河野謙児さんが「アメリカインディアンは〜」と仰っていたのが普通に放送されていたこと。
アメリカ先住民を「インディアン」と呼ぶのは差別だとして放送業界では自粛すべき用語に指定されていたと思うのですが、今はゆるやかになってきたのかな?
それとも頭に「アメリカ」とつければOKだったりするのかな?
はたまた「現地の人が言ったことだから」という理由でそのまま使ったのかな?
この呼び名の問題は大方の人にとってはどっちでもいい瑣末なことだと思いますけど、実はデリケートな問題で、師と仰ぐ北山耕平さんもご自身のブログで定期的に繰り返し扱っておられました。→「彼らの呼び方についての覚え書き」
私も何度かブログに書いた覚えがありますが、この問題は確かに定期的に取り上げる必要があるのでしょうね。
日本ではなぜか「ネイティブアメリカン」が適正な言葉で「インディアン」は差別用語とされていて、誰かと話をしていても「インディ・・・あ、ネイティブアメリカンでしたね」と相手が慌てて言い直されることもたくさんあるのですけど、アメリカに行くと「ネイティブアメリカン」なんて言葉を目にするのは博物館や学術的な本くらいで、彼ら自身も自分たちのことを「インディアン」と言うのです。
それなので河野謙児さんも「ネイティブアメリカン」ではなくて「アメリカインディアン」という言葉がお話の中で自然と出てきたのでしょう。
そもそも「インディアン」という言葉はコロンブスが新大陸をインド(東アジア)と間違えたことが発祥だとされています。
数年後にアメリゴ・ヴェスプッチという探検家が「ここ、インドちゃうで」という発見をしたので新大陸は彼の名前からアメリカと呼ばれるようになりました。
しかし原住民を「インディアン」と呼ぶ習わしはそのまま続きましたが、1960年代になって「インディアン」(インド人)というのはおかしいから「ネイティブアメリカン」(アメリカ先住民)と呼ぶようにしよう、という動きが白人の中から起きました。(先住民側からの動きではないことが注目ポイント。)
「インド人」というのは明らかな間違いだったので、「ネイティブアメリカン」はそれに変わる正しい名称なのだと納得した方も多いでしょうけど、しかしアメリカ大陸を白人が「発見」したのはほんの500年前の話。
1万年以上前からそこに暮らしていたネイティブピープルにしてみれば、呼び名が「インド人」から「アメリカ先住民」に変わったところで別に喜ばしいことではないのです。
AIM(アメリカ・インディアン・ムーブメント)の活動家でもあったラッセル・ミーンズの「I am an American Indian, Not a Native American!」という言葉もありますが、「ネイティブアメリカン」と言い直されることで「インディアン」時代に受けた虐殺や蛮行の歴史を帳消しにされるのではないかと恐れた一部の人たちは、むしろ「ネイティブアメリカン」と呼ばれることを憎んでさえいるのです。
ちなみに1977年にはスイスのジュネーブで行われた国連会議にラッセル・ミーンズらの代表団が「我々の民族名はアメリカインディアンである。」と公式に世界に表明もしています。
なので「ネイティブアメリカンと呼ぶな」とまでは思いませんが、「インディアンというのはダメで、ネイティブアメリカンと呼ぶのが正しい」という主張は、当のネイティブの人々の意見を無視した、酷い誤解だと言わざるをえないのです。
知識人ほどこの誤った説を信じ込んでしまっているからタチが悪いのですけどね。
この問題に関してはいくらでも語れてしまいそうなのでそろそろ結論を書きますが、一番礼儀に適うのは彼らをひとまとめに呼ぶのではなく、部族ごとの名前で呼ぶこと。
ひとまとめに呼ぶ場合は、北山耕平さんがブログで、
「アメリカ・インディアン」「アメリカン・インディアン」「インディアン」「ネイティブ」「ネイテイブ・アメリカン」「ネイティブ・ピープル」「インディアン系アメリカ人」「ブラウン・アメリカンズ(茶色いアメリカ人)」「レッド・ピープル」「レッドマン」「赤人」「北米先住民」「先住民」「先住民族」「先住アメリカ人」「アメリカ大陸原住民」「原住民」といった言葉を、そのときどきの思いつきと気分と文脈とに応じて使ってきたし、これからもそうするだろうということである。
と書いたように私もそうするでしょうけど、声を大にして言いたいことは、
「インディアン」は差別語ではない。
ということ。
この日本での「差別か否か」の問題はアメリカ(の白人たち)が「ネイティブアメリカン」を正式名称にしようとした動きを日本が無批判に輸入したことに端を発していると考えると、実はこの問題は突き詰めていくと「日本はいつまで、どこまで、アメリカの決定した方針に追従するのか?」という政治問題に行き当たることにうっかり気がついてしまった・・・。
そんな大きな問題はさておいて、「世界ふしぎ発見」で出されたクイズをご紹介。
1問目はフクロウの生態に関してでしたが、2問目は「ナバホの人がお守りとして持ち歩くのはなんの植物の花粉でしょう?」、3問目は「ナバホ神話で風の通った跡といわれる体の一部はどこでしょう?」というもの。
このブログの読者なら、どちらも即答できることでしょう。