続・奥様はベトナム人 -9ページ目

続・奥様はベトナム人

ベトナム人の妻と協力しながら、外国人技能実習生や特定技能などの外国人労働者受入に関して、監理団体や送出し機関、それから技人国などの情報を提供していきます。

 

 

【お断り】

 現在連載しているブログ記事は、コロナ禍のときに業界関係者と一緒に作り上げたベトナム送出し機関の状況についての小冊子から取り上げたものです。かなり良い出来なのですが、あまりにも内情を赤裸々に書いてしまったものですから、業界関係者の立場から公開せずにしておりました。このままお蔵入りしてしまうのももったいないので、私の責任にてブログに公開することにしました。文面は私の方で多少直しながら、連載していきますので、よろしくお願い致します。

 

 

第 7 章 帰国・3号・特定技能

 無事に 3 年を満了するとなった際に、すべきこと・したほうがいいこととは?

 まず、3 年(1 号・2 号)+2 年(3 号)+5 年(特定技能)=10 年満了は、99%ありえないと考えておくことです。ベトナムはそこまで家族と離れて出稼ぎすることにメリットを感じる国民性はありません。5 年いてくれたら御の字程度にかまえておくと良いと思います。

 いずれの道も労使双方の同意があって、初めて進むので、確認をしっかりしておいてください。 

 

(1)実習実施者への意向確認 

 3 号へ延長して残ってほしいのかどうか、或いは、特定技能(該当職種であれば)に移行してほしいのどうか、それとも 3 年でもう十分なのかどうか、の意向確認は必要です。どちらにせよ、間違いなく給料は上げなければなりません。

 

(2)実習生への確認(要注意) 

 延長無しの 3 年で帰国する場合はそれでいいですが、延長希望がある場合に気を付けることは、「両親の同意をしっかり確認すること」であります。

 ベトナムは兎にも角にも、親の意向が非常に強く影響します。

 特に結婚適齢期(ベトナムの田舎ですと、だいたい22〜25歳)の女性の場合、本人の希望が延長であっても、親の希望が「結婚・出産」であれば、帰国はほぼ確定であります。すぐに戻って来られることはまずないと考えて差し支えありません。

 また、3 号・特定技能移行の希望を持った実習生であっても、3 年満了後、帰国後、家族に会って、気持ちが変わってしまうことも少なくないため、前触れもなく延長を反故にされることもあることは覚悟しておいてください。仮に、本人も希望し、両親の同意もあり、3 号、特定技能希望の場合、特に給与はきちんと説明してください。2 号時と同じでは当然通らないので、注意です。

 また、地方の場合、どうしても手取り額が低くなりがちで、3 号から他県・他地方を希望することも少なくありません。実例として、岩手・山形の東北、熊本・宮崎・鹿児島の九州地方と、やはり最低賃金の低い地域の実習生に他県移動の希望が強いです。

 3 年共に働いて「会社の人はいい人」という感想があっても、会社を変えたいという希望が出ることを、実習実施者はしっかり理解しておく必要があります。何度も書いていますが、実習生の主たる目的は「稼ぐこと」であります。

  3 年間の稼ぎが予定より少なければ、もっと稼げるところへ移りたいと考えるのは至極自然な発想です。ベトナム人の間で普及率の高い Zalo・Facebook 等の SNS にも多くの 3 号・特定技能の求人が見られるます。Zaloには募集者ばかりのグループがあるが、通知を切っておかないと、分単位で鬱陶しいほど通知が鳴ります。

 

Zalo のグループに流れている特定技能、3 号、1 号の求人 

 

 このように監理団体・実習実施者の見えないところで、人材の取り合い、3 号・特定技能であれば、引き抜きが起こっています。その為、どうしても残ってもらいたい人材である場合、実習実施者側も給料 up という最もわかりやすい形で誠意を示す必要があります。

 但し、複数名を一度に残す場合、給与に差をつけるのは望ましくありません。仮に、差をつける場合は、誰が見ても納得できるだけの評価表などを用意しておくといいと思います。

 

〇特定技能~ベトナム側の思い~

 令和元年、2019 年年 4 月から施行された入管法改正に伴う新しい在留資格「特定技能」は、日本国内の人手不足解消のため、作られた在留資格であり、技能実習に代わって新たに外国人労働者を招聘できる在留資格として期待され、1 年間で約 4 万人ほどの入国を予定していましたが、結局、5 千人にも満たない状況になりました。ほぼ 9 割が技能実習生からの変更であります。(この原稿が書かれた当時)

 そして、この特定技能は、実は海外の送り出し国への事前の話はほぼなく、技能実習生を送り出していた各国から、戸惑いの声が多く上がっていました。特に今や送り出し国最大のベトナムでは、当初からこの特定技能について、やりたがらない送り出し機関が多く、ガイドラインの決定まで施行後 1 年近くかかってしまい、多くの登録支援機関が当初の目論見を外してしまう結果となりました。 

 また、帰国した技能実習生の呼び戻しも日本政府は考えていたようですが、技能実習生の履歴書の問題及び監理団体が提出する評価調書の問題が山積し、ほぼ旧法で帰国した実習生を日本に戻すことは不可能となりました。これも特定技能が失敗した大きな理由でもあります。 

 ベトナムからすれば、資格も何もなく面接に合格すれば送り出せる技能実習生と、技能試験と日本語 N4合格が必須の特定技能とでは、どちらが儲かるかと言えば技能実習生であり、そして当初送り出し機関を通さずに送れるとしたやり方が、ベトナム側の反発を招いてしまいました。又、特定技能として送り出すためには、DOLAB に対して別申請で特定技能用のライセンスを取得しなければならず、これもまた多くの送り出し機関にとって、やりたくない理由にもなりました。 

 今後も特定技能に関しては、日本に在住している技能実習生が特定技能への変更で人数が増えてくると思われますが、新規で特定技能の在留資格で入国してくる外国人が急増する可能性はあまり高くありません。 依然として、ベトナム国内での特定技能の試験はほとんど行われておりません。

 但し、5 年間で 34 万 5 千人の特定技能外国人を入れる目標を日本政府が立てているため、今後何らかの規制緩和を行い、入国人数の底上げをする可能性が高いと思われます。

 

(2023年5月追記)

 現在有識者会議による技能実習制度の見直しが行われており、技能実習制度の廃止が議論されております。この制度を理解していないマスコミ等が、廃止と騒いでおりますが、制度自体の名前を変えることにより、技能実習制度=奴隷制度のイメージをなくし、転職の一部規制緩和や多少の改正を行い、制度の根本的なところは継続する方向で話がまとまると思われます。

 また特定技能も技能実習とリンクさせ、技能実習から特定技能へ移行させ、長期間の労働力の確保を考えていると思います。

 ベトナム側としては、特定技能に関しては依然として消極的であります。この状況は技能実習制度が今後どのような方向になるのか、それを見極めた上での対応になると思います。そのため、インドネシアなどが積極的に特定技能への対応を行っているため、他の国へのシフトが加速されると思われます。

 

第 8 章 (余談)帰国後アルアルストーリー

 

〇結婚 

 帰国後、1~2 年以内に結婚し、いつの間にかパパ・ママになっている実習生が多いです。その後、子育てが落ち着いて 3 号なり特定技能で戻りたいという問い合わせが最近多いです。

 

〇空白期間長すぎて戻れない 

 実習生期間満了して帰国しましたが、再度日本に戻る決断をするまでに期間が空きすぎて、修了証書・技能検定の合格証書・JLPT の合格証書を紛失し、3 号も特定技能も要件を満たしていることを証明できない人材が割と多いです。監理団体・送り出し機関はここに注意することはあまりありません。特に送り出し機関は戻ってきて、暫く戻りもしなかった人材を記憶から消去している場合が多く、フォローもありません。更に空白期間後には、日本語も劣化しており、JLPT 合格証書の再発行を日本語でするスキルもなく、立ち往生になってしまいます。 

 

〇年金の還付申請 (脱退一時金の請求) 

 脱退一時金の請求は帰国後行われます。この場合、注意しなければならないことは、3 号の移行や特定技能1 号で一時帰国による出国をした場合、一旦、市区町村で転出届を出さないと脱退一時金の請求ができません。

 脱退一時金はベトナムの実習生名義の銀行口座に送金されます。但し、所得税が取られてしまうので、還付金全額の約 80%しか振り込まれません。所得税は、退職所得の選択課税申告書を税務署に提出することで、還付を受けることができますが、この場合、日本で納税管理人を選出し、この口座へ振り込まれます。手続きがやっかいなので、この還付請求を生業にしている在日ベトナム人や会社に頼むことが多いです。手数料は 10,000 円~15,000 円程度であります。

 

〇帰国後の仕事

1. 送り出し機関

 肌感覚でしかありませんが、送り出し機関関係の仕事に就く場合が多いです。営業(通訳兼任)、教師、書類部、募集部などです。日本語能力が一番どうしようもないのですが、募集部に入って、ろくでもないブローカー化していくケースが多いです。

 皮肉な話ですが、自分がやられているから、やり方は熟知しています(苦笑)

 日本へ戻るまでの腰掛的に日本語教師になる者も多いです。 教師の定着率は非常に低く、転職が多い為、同社で勤続年数 1~2 年を超える教師は非常に稀です。

 

2. 日系企業

 意外に感じるかもしれませんが、これが意外に少ないです。入国前の面接時点の希望である日系企業に勤められる元実習生は決して多くありません。

 日系工業団地に入居している企業で、全体の 3 割程度です。しかも、その 3 割のうち単なるワーカーとして雇用している企業が半数を超えます。何故なら、「元実習生」は学歴・能力等のスペックが非常に中途半端なためです。高卒/N3 は単純ワーカーにしては、スペックが高く、管理者・通訳にしては、スペックが低いというまさに中間になってしまいます。

 又、日系企業は大卒を条件にしているところも少なくなく、高卒が多い実習生には中々に狭き門であります。スタートしたばかりの新しい日系企業であれば、「ある程度、日本語ができる人材」ということで雇用されるチャンスはありますが、日系企業全体の 1 割以下です。

 送り出し機関によっては、ここの人材の無駄遣いを解消すべく動いているところもあります。 

 

第 9 章 やっぱりベトナム

 以下、感覚値であり、個々の実習生によっては、当てはまらない場合もあるため、参考程度にお願いします。

 

「国民的特徴(他国相対的)」 

 他の送り出し国と相対的に見て、国民性を考えると、ちゃんとした教育が伝わりやすく、日本語を勤勉に学び、成長意欲が高いのは、総じてベトナムに軍配が上がる場合が多いように思われます。 

 良い悪いを抜きに、結果として数に応じた需要のボリューム的にも通訳が多々いる環境もばかにならない勝手の良いところでもあります。 

 中国と比較してみると、まだベトナムは中国ほど、賃金相場(手取り)は高まっておりません。又、国同士の関係性が不安定なのが中国であります。国家間でくしゃみがあると、決まって入国スケジュールの遅れや滞在中のトラブルに巻き込まれます。 

 例)コロナで入国復帰の見通しが立つのが遅い、中国で日本排斥が高まり、受入キャンセルが心配など。 

 インドネシアと比べてみれば、性格的に穏やかで、大人しく、本人の本音が見えずに、ガッツに欠ける感が否めない場合が多いです。人としては良くとも成長意欲の点で、総じてベトナムに勝てないように感じます。 

 フィリピンと比べると、数年スパンでの出稼ぎ大国な分、一カ国一カ国の風習や言語を覚えようとする気が根本的にない人材が多く、日本語能力の習得意欲とそのレベルにおいては、ベトナムとは勝負にすらならないと思います。 

 ミャンマーの躍進が目覚ましい感がありますが、今の政治状況から見ると、積極的に受入れができない状況だと思われます。ポストベトナムと言われていた時期が懐かしく感じます。とにかく政治が落ち着かないと難しいです。総じてまだベトナムの後塵を拝している印象があり、人材、送り出し双方合わせて未成熟だと思います。 

 このように、頭もよく、意欲も高いベトナム人が大半ではありますが、半面、単純労働のみの入れ替わり、使い回し人材などのみ求める先では、オーバースペックにもなりかねません。しかし、人を育て、給与を提示できるところであれば、日本人同等以上の能力を発揮してくれます。

 

「送り出し機関のレベル」 

 加えて、忘れてはならない実務レベルの違いが、ベトナムにはあります。 基本的に、総じて送り出し機関の総合的なレベルが高いと思われるのは、ベトナムです。 つまり、普通に書類のやり取りができます。 

 約束を守る、期日を守る、アウトプットのクオリティを求める、互いに協力して乗り越える様々な事に対するキャッチボールが、日本人の常識にアジャストして、対応が可能な送り出し機関は、まだ多く、なんちゃってではない日本人ビジネスマンのいる送り出しも多いです。 

 他国にもベトナム以上にちゃんとしている送り出し機関もあろうかと思われますが、あまりにも絶対数が少ないです。ベトナムにもあるが、ある国の優秀な送り出し先は、並んで待っている状態や、逆に提携を断られることもあるほどです。そして、そんな送り出しはまず片手で数えられるほどであります。 しかし、ベトナムであれば、ピンキリのピンを選ばねば、有能かつ優良な送り出し機関は、両手に余るくらいには存在します。 

(また、正にピンのレベルも高く、複数あります。) 

 特に立ち上げ間もない監理団体にとって、特に外国とのやり取りが不慣れな書類対応者にとっては、ベトナムから入るのが、最もストレスがありません。

 この点は、他国の他の送り出し機関と提携し、実際に経験してみなければ、どれだけ苦労するものなのか、実感は湧かないと思います。 

 ベトナムの送出し機関との業務のやり取りに難儀しているようでは、他国の送り出し機関とは、とてもストレスフルで、正常には機能しないと思われます。

 

「通訳」 

 受け入れ人数が多い=日本国内に通訳対応可能者が比較的多いというのも、基本的な魅力の一つであります。 

 

「近さ」 

 中国(2 時間)、フィリピン(4 時間)ほどではないが、ベトナム(5、6 時間)は、その他の国と比べ、そこまで遠くない移動距離というのも利点です。直行便も年々増加傾向です。単純に航空券代というコストの違いも小さくはなく、コロナ後の航空運賃の高騰を考えるとベトナムはまだまだ捨てがたいと思います。 

 

「市場価値」 

 東南アジア各国の海の玄関口でもあるベトナム。 

 既に周辺各国を視野に、アジア 6 億のマーケットとして、市場開拓、進出に動いている日本企業も、早い遅いの違いはあれど、他国と比較しても相当数、増え続けています。 

 地頭の良い国民性を生かしてか、オフショア的なエンジニア開発も昔から盛んです。 

 かつての日本の焼き回しビジネスにトライして、現地で成功を収めている事業家も少なくありません。 

 それは、技能実習生や特定技能者を受け入れて、あわよくば、現地のマネージャークラス(事業進出の責任者候補)として、育てていくことも可能な国だということです。 

 ベトナムという、国、国民性、外国人労働者の特徴をよくよく理解し、コミュニケーションを上手に図ることで、Win‐Win を築いていけた先には、夢の広がる国が、ベトナムであります。 

 

【あとがき】

 

~その 1~  ベトナム人の妻を持つ一人の日本人として 

 

 私の妻はベトナム人である。それも知る人が知る南部ベンチェ省出身。そう、気の強さならベトナム中どこの地域でもかなわないと言われている。確かに気が強いのは間違いない。 

 よく冗談で「寝室にはハサミを置くな」と言われる。時々インターネットのニュースで浮気をした旦那様の大切なところがカットされて、トイレに流されたとかという話が出るが、ベトナム人女性の焼きもち、嫉妬は半端ではない。送り出し機関の仕事の中で日本の会社の接待があるが、まともなベトナム人男性ならほぼ間違いなく奥さんから NG が出る。仕方なく独身のベトナム人男性にアテンドをお願いするが、やはり恋人からかなりのクレームが入るので、やりたくないと言う人が多い。送り出し機関でアテンド担当者は、大変な思いで日本人の接待をこなしていることを忘れないでほしい。 

 さて、日本人の女性とは全く性格の違うベトナム人女性。どうして結婚に至ったのか、それは「愛情の深さ」であると言えよう。 

 一途に思い続けていれば、必ず応えてくれるベトナム人女性。子どもがいても関係なく愛情は常に同じく注いでくれる。この感覚は日本人女性にはない。ずっと奥様にかまって欲しい男性なら、ベトナム人女性はおすすめ。年齢もあまり関係なく、年をとっても楽しく暮らせると思う。 

 ベトナムという国は、長年他国の侵略を受け、そしてあのアメリカに勝った国でもある。そのため、他人を信じるということがあまりできない。その代わり一度彼らのテリトリーに入れば、家族と同じように扱 ってくれる。妻がベトナム人ということで、あらぬ誤解を受けずに信用されることが多い。また日本人だからといって、変に騙されたり、ぼったくられたりすることはほとんどない。 

「どうしてベトナム人と結婚されたのですか?」 

 よく聞かれる質問だが、初めて妻の国へ行ったとき、あのムッとするようなヌクマムの匂いが混じった熱い湿気、道一杯に広がるバイクの群れと喧噪。誰もが明日を夢見ている希望に満ちた明るい表情。

 日本と違い、これからの国、ベトナム。 

 私は妻の希望になりたいと願って、結婚した。 

 そして、今、私の第 2 の母国となったベトナムの若者に夢と希望を与えたいと願って、この仕事を続ける。

 

~その 2~ 

 

 ベトナムに渡って 8 年目。 

 技能実習制度に携わって 8 年目。 

 何だかんだベトナムが好きで、ベトナム人が好きで、教え子たる実習生が好きで、居ついてしまっているし、恐らくベトナムで死ぬかなと。 

 世間一般では、制度に対して「技能実習制度は奴隷制度だ!!」「カワイソウな実習生がたくさんいる!!」という印象を持っている方が多いように感じる。 

 ただ、私がこれまで関わってきた中で、当然トラブルはあれど、新聞に載るようなカワイソウな目に遭ったという実習生はほとんど皆無、多くの教え子は、日本の仕事・生活に苦労をしながらも、将来の為に頑張っているし、日本を好きなままベトナムへ戻ってきている。 

 制度の好事例は決して少なくない。私はそう信じているし、実際、そうである。 

 こうした好事例を増やす、一般的にする、いい意味で制度がメディアに見向きもされなくなる為には、この制度に関わる送り出し機関・監理団体・実習実施者、そして実習生の四者が同じ目的に向かって取り組んで行かなければ改善のされようがない。ベトナム側だけが頑張っても、日本側だけが頑張っても、意味がない。 

 ここ数年、それを強く感じている為、今回、このような機会に色々と書かせていただいた。 

 新規参入の方にも、経験豊富な方にも、役に立つ情報が詰まった仕上がりになっている。 

 そう遠くない近い将来、業界が適正化され、外国人の笑顔が増え、メディアにカワイソウなニュースが躍ることも、こうした書籍が出ることもない時代が来ることを切に願っている。 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

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【お断り】

 現在連載しているブログ記事は、コロナ禍のときに業界関係者と一緒に作り上げたベトナム送出し機関の状況についての小冊子から取り上げたものです。かなり良い出来なのですが、あまりにも内情を赤裸々に書いてしまったものですから、業界関係者の立場から公開せずにしておりました。このままお蔵入りしてしまうのももったいないので、私の責任にてブログに公開することにしました。文面は私の方で多少直しながら、連載していきますので、よろしくお願い致します。

 

 

第 6 章 入国後の実習生のトリセツ ~信頼関係を築く為に~

 

(4)トラブル実例と解決法 

 

 大前提として、実習生に「強制帰国」という選択肢はないことを覚えておいてください。脅し文句でも「帰国させるぞ」は監理団体・実習実施者共に絶対使ってはいけません。

 途中帰国は、本人が納得・同意した上でしか行えません。その場合も、OTIT への報告、後発トラブル防止の為に、時系列で報告書・同意書(同意書については、ベトナム語併記が望ましい)を実習生の署名付きで作成しておいてください。

 

実例①:喧嘩

 

一時期 SNS 上で非常に話題になった日本人社員と実習生の喧嘩 

 

 喧嘩は何も実習生同士で起こるわけではありません。指導員・共に働く日本人社員には話し方・接し方の注意・指導が必要です。実習生は国籍が違うだけのプライドもある同じ大人(人間)であります。

 

 同室の実習生 A と B が喧嘩し、A が B を殴打しました。B は目の周りを腫らす怪我をします。監理団体から報告が届き、送り出し機関から個別に聞き取り、時系列と原因を調査します。

 内容は、精神的に幼い B が A をからかったことによる売り言葉に買い言葉で A が手を出してしまったことでした。当初、手を出した A を自主帰国とする予定でしたが、実習実施者代表への謝罪(文面・口頭)により、継続となりました。しかし、AとBは部屋をわけ、一人暮らしに切り替え、現場も分けることで、接触を極力抑える対応を取っています。

 

実例②:傷害

出典:https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20210622/3060007686.html 

ベトナム人が関係する殺人・傷害をメディアで目にする機会はここ数年増加の一途を辿っています。

 

 同室の実習生 A と B が喧嘩し、A が B を包丁で切りつけ、腕に全治 2 週間の裂傷を負いました。警察も駆けつけ、A は拘留されましたが、金銭(治療費込み 300,000 円)による示談ということになりました。 

 その後、監理団体から送り出し機関に「途中帰国による損害賠償」という名目で 50,000 円/人×2=100,000 円の請求書が届き、大揉め←これはダメです! 

 加害者Aについては、本人も帰国に同意した為、示談金支払い後、同意書作成の上、帰国。 

 被害者Bについては、精神的に参ってしまった為、監理団体の説得の虚しく、治療終了後、帰国。

 

実例③:喫煙 

 ベランダで水タバコを吸って、近所から違法薬物ではないかとクレームが出ました。水タバコはインターネット上で購入したとのこと。監理団体から注意、又、送り出し機関からも注意・指導を入れました。日本でベトナムの水タバコの筒は見てくれが悪く、室内でも臭いが付く為、水タバコは禁止、タバコに切り替え、所定の場所で吸うように指導しました。その後、クレームの再発はありません。 

 

実例④:途中帰国希望 

 職種問わず、建設に多い入国 1 年以内に発生しやすい帰りたい病(ホームシック)。

 建設の実習生、18 歳。日本人の先輩が厳しく、口が汚く、たまに頭を小突かれるのが嫌になり、帰国したいとの希望が出ました。 

 まず、監理団体から実習実施者代表及び当該の日本人の先輩に聞き取りを行ったところ、概ね事実が判明し、外国人に「愛の鞭」的なものは通用しないことを伝えます。 

 次に、送り出し機関から実習生本人に建設現場とはどんなところか?どうして厳しくするのか?を説明しました。 そして、監理団体・実習実施者代表・日本人の先輩・実習生の 4 者の場を設け、先輩より実習生へ謝罪を行い、今後、手を挙げないことを約束し、実習生からも現場の危険性故の厳しさであることを理解し、期間満了まで頑張ることで納得して終了しました。現在は、良好な関係を築いています。 日越間の認識の違いによるもので、実習生から送り出し機関に連絡があってから、2 日でのスピード解決しました。 

(実習生的に)暴力が絡んだ仕事現場でのトラブルは失踪や無断欠勤等の更なるトラブルに繋がる可能性が高い為、スピード感を持った解決が重要です。 

 

実例⑤:外泊問題 

 実習生 A が、隣県の他の監理団体の実習生 B の寮に無断で外泊しました。 B の実習実施者からB の監理団体、そしてA の監理団体、Aの送り出し機関の順に発覚しました。 

 B の寮は社宅の為、関係者以外立ち入り禁止となっており、室内にもベトナム語付でルールを記載していましたが、平気でそれを破りました。 

 B への聞き取りを行うと、ルール違反であることは認識していたが、ばれないだろうと思っていたようです。

 実習生A、A の監理団体、実習生B、B の監理団体、B の実習実施者を交えて、問題解決に向けての話し合いを行いました。対応によっては、実習生Aが不法侵入になることをAの送り出し機関の電話通訳で理解させた上で、実習生Aと実習生B の謝罪及び始末書、今後ルール違反を繰り返した場合の処分について同意書を作成させました。

 

実例⑥:カラオケ 

 実習生 3 名が、休日夜間(20~21 頃)に自室でカラオケをし、隣室の日本人からクレームが入りました。管理会社より監理団体に連絡がありました。 

 翌日、終業後、実習生 3 名と監理団体通訳同行の上、隣室の日本人に謝罪に行きました。自室にてカラオケをしないことを約束し、解決しました。送り出し機関から、ベトナム語にて、カラオケがダメな理由を説明し、騒音問題は人によっては、殺人事件になるほど、重大であることを説明しました。その後、再発はありません。

 

実例⑦:3社枠一杯のときの送り出し機関変更

 すでに3社枠規定はなくなりましたので、省略します。

 

実例⑧:日本側で実習先の変更 

 監理団体を変更しない実習先の変更の場合、送り出し機関はやることがほとんどありません。変更の経緯にもよりますが、実習生の精神的なフォローが主たる対応になります。DOLAB への報告も不要です。

 

実例⑨:日本側で監理団体の変更 

 旧監理団体、新監理団体、送り出し機関、実習実施者、転籍する技能実習生、それぞれの捺印と実習生の署名がある合意書を 2 部作ります。それと同時に新監理団体と送り出し機関との協定書も必要となります。 

 あくまでもこの場合の協定書は新監理団体が 外国人技能実習機構 に登録するために必要なものであり、送り出し管理費の送金をするための合意でもあります。なお、旧監理団体と新監理団体で実習生の移籍で揉めている場合、なかなかうまく行かない場合もあります。この場合、外国人技能実習機構は間に入って調整するわけではなく、当事者同士で話し合いを求めてきます。 

 監理団体と実習実施者の間で契約書を結ぶケースが多いと思いますが、契約書の内容についてはきちんと吟味していた方がよろしいかと思います。監理が悪い監理団体から実習生を移動させようとしたときに、契約書で3年の技能実習期間が契約されているから、3年分の監理費を寄こせという監理団体も中にはおり、裁判になっているケースも見受けられます。

 

実例⑩:妊娠 

 マスコミでもよく話題になる、実習生が妊娠した場合、あなたならどうしますか?

 

 妊娠した実習生とはよく話し合い、又、妊娠させた相手とも話し合い、妊娠した実習生の思いを最大限尊重した上で、実習実施者との意向も鑑み、双方にとって最善な方向になるように持って行くことが大切です。巷の妊娠騒動でどうも孕ませた男性の話がほとんど出てきませんが、男性実習生にもきちんと事の重大さを認識させ、責任を取ってもらうよう働きかけていくようにします。

 

 まずは現実に日本で出産する場合のリスクを妊娠した実習生に理解させなければなりません。妊娠中の定期健診、出産準備、入院、育児、保育園の確保等を家族の助けなくして可能であるかどうなのか?

産休・育休時の収入減をどう補うのか、日本入国前に描いた送金・貯蓄プランが狂うが問題ないのかどうか? 感情論ではなく、現実問題としてどうすることが より良い方向なのかを探っていくようにしていきます。

 

 そして、決断するのはあくまでも妊娠した実習生本人であり、私たちは支援する側です。彼女の判断によっては私たちも大変になるかも知れませんが、生まれてくる赤ちゃんには、何の問題もありません。 命を授かった喜びもまた感じられるようにしてあげるのも、私たち回りで支援する側の思い一つだと思います。どんな形にせよ、妊娠したことが決して実習生にとって、不利益ににならないように一緒になって悩み考えていくしかありません。

 

 日本に実習生として来ているとはいえ、性的な欲求があるのは仕方ありませんし、その行為自体を規制することはもちろんできませんが、入国前送出し機関にいる間、日本語教育等と同じく、「何をしに日本へ行くのか?」「妊娠したらどうなるか?」ということを教育していくことが重要になります。社会人としての責任をしっかり認識させることは必要であります。

 

 外国人技能実習機構 から「婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益な取扱いの禁止」と出ている為、間違っても本人の同意なき帰国はさせないようにしてください。

 

やむを得ない理由により技能実習を中断した場合の再開手続き改正に係る周知及び妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いの禁止の徹底について

 

実例⑪:送り出し管理費の未払い 

 実習生が日本に入国すると、毎月送出し管理費が発生します。ほとんどの協定書では 2 ヶ月か 3 ヶ月に一度送金するように規定されていますが、監理団体の中には、この管理費を支払わないところがあります。大半は失踪時のペナルティー、景気が悪い等、様々な言い訳を使ってきますが、この送り出し管理費の未払いが発生した場合、送り出し機関がどういう対応を取るのでしょうか。 

 

 滞納している監理団体から、引き続き実習生の受注が入る場合は、ある程度、様子見しているケースが多いです。受注をもらった方が割に合うからです。しかし、受注が入らなくなった場合、送り出し機関は豹変します。

 

 1 番怖いのは、DOLAB へ訴えて、その監理団体の実習生受入の推薦状を止めることです。そして同時に外国人技能実習機構へも訴えて臨時監査を依頼します。送り出し管理費は海外送金に該当するため、マネーロンダリングの疑いもかけられるので、国税庁から税務調査が入る可能性もあります。

 

 払うものはきちんと支払い、また送り出し管理費をタダにする送り出し機関もあるようですが、機構の監査においても送り出し管理費は重点的に調べられる項目でもあるので、契約通りの支払いをするのは、当然であります。

 

実例⑫:精神障害 

 来日して 3 ヶ月ほど経過した実習生でした。突然 2 階のアパートの窓から飛び降り、救急車で搬送されました。病院へ駆けつけると、緊急治療室で治療中。ただ、目は虚ろで譫言を言い、全身痙攣を起こすような、少々尋常ではない状況でありました。通訳を交えて、実習生と話し、当初は自殺かと思われましたが、そうではなく、神に呼ばれたと話し始めました。 

 

 事前に同僚の実習生から最近の状況を確認しますと、一週間ほど前から奇妙な行動をしていたようです。誰もいない部屋で一人ブツブツと話していたり、誰もいない廊下でいきなり壁に向かって挨拶をしたり、同僚達も気味悪がっていました。彼は飛び降りた理由を神に呼ばれたと言いました。お釈迦様やイエスキリストが現れたと、通訳が困惑した表情でそう伝えました。 

 

 結論から言えば、統合失調症ですが、面接の時に異常はなく、来日するまでの教育期間も、特に異常はありませんでした。 

 飛び降りた際のケガは全治 2 週間程度の軽いものでしたが、この状態ではいつ飛び降りるかわからず、病院ではとりあえず隔離病棟に入れ、実習実施者との協議に入りました。もちろん帰国の方向ですが、幸い理解のある会社でしたので、給料は全部精算してくれ、帰国費用も持ってくれました。24 時間監視ができないので、急遽母親を日本に呼ぶことにもなりました。その費用も会社が負担することになりました。既に来日した実習生たちからは、義援金が集まり、彼の元に届けられ、送り出し機関もかかった手数料を返金しました。

 

 こうして、彼は無事来日した母親とともに、ホーチミンへ帰国しました。帰国後すぐに精神病院に強制入院となりました。今は病院を退院し、来日前の彼の状態に戻り、普通の生活をしているようです。

 

実例⑬:失踪 

 端から失踪するつもりで来日した実習生は、どんなに防ごうとしても不可能です。来日後、半年以内に失踪する場合は、ほぼ失踪目的の来日であると言わざるを得ません。その場合、採用面接において、完全に失敗した可能性があると思われます。

 

 失踪する原因の一つに、送り出し機関に支払う手数料・出国費用が高いということがありますが、手数料だけではなく、当初言われていた給料と実際支払われた給料とが違い、差額が大きい場合も原因になる場合があります。その他、いじめなども言われていますが、そこそこの給料が支払われていたならば、短期間の仕事なので、我慢するケースが多いです。

 

失踪する前にいくつかの予兆が見られます。 

 

1.    仕事に対する意欲の低下。

2.    有休を取りたがる。

3.    会社からのクレームが多い。

4.    親に連絡すると、親の態度が素っ気ない。

5.    実習生の借金が多い。

6.    ギャンブルにはまっている。賭けトランプやパチンコなど。

7.    技能試験に落ちた。

8.    残業がなく、手取り額も 10 万以下に落ちている。

以上の場合、近々失踪する可能性を考えておいた方がいいと思います。

 

 失踪防止は、十分な給料を出すことが最善手であります。BBQ をやったり、ディズニーランドへ連れて行ったり、あちこち遊びに連れて行ったりしても、給料が出ていなければ、あっけなく逃げます。「いろいろやってあげたのに…」という実習実施者もおりますが、実習生に対して本当の感謝を伝えるには、給料しかないという現実を知るべきであります。

 

実例⑭:ミスマッチ 

 もともとユンボなどでコンクリートなどの破砕をやっている産廃業者で、敷地内にバケットの修理や産廃収集ボックスの修理などで溶接実習生を受入しました。作業の中には、関連周辺作業として選別や分別作業もありました。面接に合格した実習生に対して、作業内容について詳しい説明を送り出し機関側でしておらず(監理団体代行面接で、理事長が実習生を選抜したケース)、入国後、仕事の内容について実習生からクレームが出ました。

 

 通常は多少の仕事の違いに、さほどクレームは出ないのですが、今回は違いました。きっかけは他のベトナム人からの嘲笑でありました。

「ゴミの○○」 

と呼ばれて、ぶち切れた模様です。3 名の実習生が入っていましたが、監理団体に乗り込んでクレームを言い始めました。説明不足だったとはいえ、事前に送り出し機関へは説明しておいたはずだったのですが、よくあることで都合の悪い部分の説明を省いていたということがわかりました。 

「ゴミの選別・分別」を溶接の合間にすることをきちんと伝えておりませんでした。

 

 ベトナムでは、ゴミの収集をする人たちは貧困層で、それも仕事がまともに見つからない人たちと言われて、軽蔑の対象となっています。 

 実習生から、「自分たちの仕事場の写真を親に送ることができない」と言われたとき、明らかにミスマッチをしてしまったと思いました。今更、実習先を変えることもできず、実習実施者と交渉して給料を上げることしかできませんでした。

 

 一旦、それで納得した実習生たちでしたが、後に 2 名が失踪し、1 名のみが実習修了できました。 

ベトナムにいるときは、日本に行きたいが為に、仕事の内容説明においても、適当に聞いている実習生が多いです。特に今回のような産廃や建設、農業、縫製などの不人気職種の場合、事前の仕事内容の確認は、何回か繰り返しやっておくべきであります。 

 

 

⇒ 第7章  帰国・3 号・特定技能  へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【お断り】

 現在連載しているブログ記事は、コロナ禍のときに業界関係者と一緒に作り上げたベトナム送出し機関の状況についての小冊子から取り上げたものです。かなり良い出来なのですが、あまりにも内情を赤裸々に書いてしまったものですから、業界関係者の立場から公開せずにしておりました。このままお蔵入りしてしまうのももったいないので、私の責任にてブログに公開することにしました。文面は私の方で多少直しながら、連載していきますので、よろしくお願い致します。

 

 

第 6 章 入国後の実習生のトリセツ ~信頼関係を築く為に~

 

(1)日本語勉強のモチベーションを維持・上げる為に 

 

 そもそも論、「なぜ、入国後、多くの実習生は日本語を勉強しないのか?」答えは非常に単純明快です。

「要らないから」 

 これに尽きます。

 

 何度も書きましたが、実習生の主たる目的は「稼ぐこと」であり、「勉強すること」ではありません。日常生活にしても、極論、会話をしなくても買い物はできるし、電車・バスに乗らず、自転車で移動すれば、会話が発生することもありません。仕事はルーティンがわかってしまえば、流れに慣れてしまえば、日本語が N5 そこらでも問題なくなります。勉強しなくても、仕事・生活に支障がなければ、当然モチベーションが生まれるわけも、上がるわけもありません。

 

 時々、監理団体の監査時や実習実施者の社長に「勉強しろ」と言われても、その場だけ、得意の「はい、頑張ります」と答えておけば、それ以上は何もありません。日本人でも誰しもおもしろくないことはしたくない、大変で面倒なことはしたくないものです。ましてや、その必要性や有用性が理解できていなければ、当然しません。

 

 では、どうしますか?

 

 川上から川下、つまり、送り出し機関から監理団体を挟んで、実習実施者までが一貫した取り組みをすることです。

 

 では、どんな取り組みをするのか?

 

 勉強する理由、目的がわからないのであれば、わからせればいいです。日本で 3 年働いたら、いくら持って帰れるのか?帰国後に何にいくらかかるのか?勉強し、N3・N2 だと帰国後に何ができるのか?いくら稼げるのか? 選択肢がどれだけ増えるのか? 

 

入校から引退までの人生

 

生涯収入・支出計算

 

実際に日本でいくら稼げて、いくら持って帰れるのか?

 

 実習生の頭の中に、漠然としかないイメージ、あるいは、全くない知識を、自身で計算させ、具体的な数値・ビジュアルで理解させることが非常に重要であります。 

 数字であれば、納得せざるをえず、誰しもお金に苦労しない生活を将来送りたいと考えているため、「じゃあ、勉強したほうがいい」と理解します。しかし、入国前に、いくらやる気に溢れていても、入国後、新しい仕事、新しい生活に追われる中で、徐々にそのモチベーションが体力的にも精神的にも維持するのが難しくなっていきます。 

 そこで、先に述べた通り、ニンジンをぶら下げるのであります。N3、N2 を取ったら、時給を上げる、金一封、食事をご馳走等、様々な設定が可能です。 

 入国前に一切の青写真がない状態で、ニンジンをぶら下げても、「将来も稼げる上に、日本でも給料上がるなら、やっぱり勉強する!」ではなく、「それだけなら、勉強しないほうがいいわ」となってしまう為、川上から川下迄の一貫教育とニンジンのコンボが非常に重要になってきます。

 実習実施者負担で週末に日本語教師を寮に呼んで講習を実施しているところもあります。試験会場まで送り迎えをしているところもあります。過保護である必要はありませんが、こうしたフォローはあってもいいのではと感じます。

 

(2)ルールやマナー等の守らせ方(入国前からの一貫教育)

 

 日本語教育の継続にも関係のある話だが、ルール・マナーについても、同じことが言えます。入国してから、初めて耳にすることが多いため、何でもかんでも情報過多で実習生の頭のキャパがパンクしてしまいます。

 

 そのため、川上から川下までの協力体制の構築が必要不可欠であります。また、ベトナム人は「動機付けが好き」な国民性を有しています。

 

 例えば、

「道にゴミを捨ててはいけない」

「室内でタバコを吸わないようにしよう」

「5S を徹底しよう」

「報連相は大切です」 etc

 

 日本人には説明するまでもないほど当たり前のことですが、ベトナム人にとっては、全く当たり前ではありません。ダメと言われてもどうしてダメなのかがわからなければ、小うるさい日本人が見ているところでは守っても、誰も見ていなければ守らなくてもいいという意識になってしまいます。

 

 こうしたときに日本の道徳教育の素晴らしさを実感します。

 

 では、上記の例をどうしてダメなのか、どうしてしなければならないのか、どうして大切なのかの説明を送り出し機関のベトナム人ができると思いますか?

 できるわけがありません。日本人でもできるかどうか怪しいのですから。

 

 根本的に日本は「周りに迷惑をかけないようにする国」、ベトナムは「迷惑をかけるから、かけられる迷惑も許容する国」であり、そもそもの意識が大きくずれています。

 

 例えば、ベトナムの場合、分別のルールもなく、日夜、道を掃除する掃除業者が存在します。「どうして道にゴミを捨てないんだ?」「業者の仕事がなくなってしまうだろう」という国でもあります。また日本では「ゴミを分別して捨てる国」「リサイクル・再利用という文化・習慣の存在」「道を清掃する業者はいない」「代わりに収集車が来るだけ、分別して捨てなければならない」「分別しなければ、回収されない」「回収されなければ、近隣に迷惑をかける」「迷惑をかけると、困ったときに助けてもらえない」という国であります。

 これらの経緯や原因を掘り下げて説明する必要があります。

 

 「室内でタバコを吸わないようにしよう」も同じことです。「壁紙が汚れたら、帰国時に弁償」「もし火事になったらどうなる?」「日本の木造家屋は燃えやすい」「弁償がとんでもない金額になる」「隣の家が一緒に燃えたら?」「弁償は最早あなたがどうにかできる金額ではない」

 

 実習生にはこうした発想ができません。

 

 だからこそ、ここまで根っこから話して、初めてやっと外で吸いましょうという話ができます。

 

 入国後、監理団体により法定講習でも日本での生活上のルール・マナーについても教えることになりますが、こうした根っこの部分からの違いを日本側が認識した上で話を進めていかないと、実習生が聞いただけで終わってしまいます。これらのことをきちんと理解することが重要であります。

 

 送り出し機関でも根っこから説明した上で、理解はしている状態で、入国し、改めて講習施設でも言われ、寮に着いてから言われれば、根っこの異なる実習生であっても、徐々に守れるようになっていきます。それから寮のルールに関しては、必ずベトナム語で、見えるところに貼っておくことをオススメします。日本語だろうが、ベトナム語だろうが、口頭での説明は言った言わないの水掛け論になるため、やめたほうがいいです。会社の規則についても、守ってもらうべきものは、ベトナム語付で書面で渡すなり、同じく寮に貼っておくなり、いずれにしても、明文化することです。口約束ほどあてにならないものはありません。

 寮の規則は、寄宿舎規定等にも関係してくるので、要注意です。また、門限などは決められません。奴隷制度の誹りを免れず、拘束、強制するようなルールはご法度です。

 

(3)記念日の重要性

 

 ベトナムは祝日が少ない割に、記念日が多い国であります。監理団体・実習実施者が最低限、把握しておいたほうがいい記念日は以下の通りです。

 

・ 旧正月(旧暦に基づく為、毎年少しずつ変化することに注意)

 旧正月に欠かせない「bánh chưng(バインチュン)」を差し入れたり、ビールを差し入れるなどをするといいです。

 

 バインチュンとは、旧正月には欠かせない食べ物で、もち米の中に厚い脂肪のついた豚肉や緑豆などを入れ、lá dong(ラーゾン)と呼ばれる葉で四角く包み、12 時間~14 時間茹でます。

 

・ 女性の日(年2回) 対女性実習生のみ

 3 月 8 日(国際女性の日)、10 月 20 日(ベトナム女性の日)

 この日、男性は女性に花やプレゼントを贈る習慣があります。

 

 実習実施者が花の一輪でも送ればそれだけで印象は大きく変わります。人数にもよりますが、各自に一輪でも、まとめて、花束でもホールのケーキでも問題ありません。大切なのは、ベトナム人が大切にしている記念日を異国の日本人が知っていて、きちんと祝ってくれたという事実であります。 

 結果、実習実施者への忠誠度、真面目に頑張って働こう!という気持ちになり、意欲も生産効率も上がります。何より、バカなことを考える気がなくなり、会社がちゃんと自分のことを見て考えてくれているという受け止め方をしてくれるようになります。

 

⇒ 第6章  入国後の実習生のトリセツ ~信頼関係を築く為に~②  へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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