2019年10月17日、日本商工会議所から「外国人材の受入れ政策に関する要望」が出されております。
https://www.jcci.or.jp/20191017%20jcci%201.pdf
中身については、上記のHPアドレスから要望を読んでいただければいいのですが、私からいくつかの問題点を指摘しておきます。
II.重点要望項目
1.外国人材の受入れに係る相談機能の強化・拡充 の中で
「法務省出入国在留管理庁は、特定技能の在留資格に係る新たな制度が有効且つ 適正に機能するために、相談窓口の設置や専門家派遣の実施等、中小企業を対象に本制度に 特化した全国的な相談機能を早期に創設すべきである。」
と提言していますが、私からすればこれは全く期待できません。相談窓口を設置したところ、そこに配置する人材は誰になるのですか?どうせまともな予算をつけることができないでしようから、臨時職員を採用してお茶を濁すだけ。その臨時職員の力量で、これまで外国人材を受け入れたことがない中小企業の相談に乗れるとは到底思えません。
私なら、技能実習生の総合支援を外国人技能実習機構へ渡して、現在宙ぶらりんの状態になっている国際研修協力機構(JITCO)の機能を拡充して、対応するのが良いと思います。
JITCOがどこまで親身にまた具体的に相談に乗れるかはまた別問題ですが、新たに創設するよりもマシだと思います。
2.受入れ企業と外国人材とのマッチング機会の提供 の中で
「本制度が有効且つ適正に機能するために、法務省出入国在留管理庁及び厚生労 働省は、関係省庁との緊密な連携の下で、国内外での合同会社説明会の開催やオンライン面 談の実施など、特定技能をはじめとした外国人材を雇用したい中小企業とわが国での就労を 希望する外国人材とのマッチング機会を提供していくべきである。」
我が国での就労を希望する外国人材とのマッチング機会?すみません、海外で日本での就労を希望する外国人材をどうやって見つけるのですか?
例えば、ベトナムにおいて、海外へ労働者を送り出すためには、ベトナム政府から許可を受けなければなりません。日本の会社がベトナムへ行って、勝手に採用の募集をかけることはできません。簡単に書いてありますが、日本のどの機関が対応できるのでしょうか?
「外国人材の受入れ・定着に積極的に取り組む地方公共団体 とハローワークが連携し、特定技能での就労を希望する国内外の外国人が外国人雇用の経験 に乏しい中小企業に円滑・適正に就職・定着できるようモデル的な取組について検討していく旨が記載されているが、これを早期に具現化するとともに、モデル的な取組は全国的に幅 広く展開していくべきである。更に、ハローワークにおける職業相談の多言語対応も推進していく必要がある。」
但し、地方公共団体もハローワークも外国人材について、具体的な支援策を持っているわけではありません。そして、それぞれ諸外国の事情についても圧倒的に見識が足りません。
これも、担当者の力量によって、支援が変わっていくと思います。
3.特定技能外国人の受入れ対象分野の拡大に向けた検討 について
建設業については、とびなどが追加業種として加わりましたが、そもそもどうして技能実習と特定技能を関連づけるのか、私には理解できません。
なぜなら、「労働力の需給の調整につかってはいけない」技能実習から、「国内労働力の人手不足解消」目的の特定技能への移行がどうしてできるのか、ここに大きな矛盾がある以上、関連付けせずにそれぞれ独立の在留資格として考えた方が良いと思います。
そして、前職要件などのでたらめがある技能実習を今後も続けるのではなく、最終的には特定技能での国内単純労働力の確保を目指した方が良いと思っています。
そもそも、どうして技能にこだわっているのか、私にはその意味がよくわかりません。
4.特定技能外国人の大都市圏等への偏在防止に向けた具体的な方策 について
特定技能については、一応転職自由になっているため、地方から都市への移動を防ぐことはできません。地方において、技能実習の方が良いと思われている理由の一つは、この転職のあるなしなのです。
地方に特定技能外国人を定着させるためには、方法はたった一つ。都市より地方の方が給料を高くすること。それしかないと私は思っております。
III.個別要望項目
1.外国人材の円滑な受入れに向けた政策
(1)外国人材の送出国における特定技能の効果的な周知・広報 について
この部分が大きな問題であり、そもそも送出し国に対して何の相談もなしに、この特定技能の在留資格を決めたことは非常に印象が悪いと思います。ベトナムなど親日国はとりあえずクレームをあげないで様子を見ていますが、内心、何だよという思いはあると思います。
今、技能実習生最大の送出し国であるベトナムでは、この特定技能での送出しについては消極的であります。とりあえず今年3月で決まったガイドラインでは、明らかに技能実習に比べて手数料が少なく、また技能実習2号から特定技能への切り替えは、送出し機関にとって管理費がなくなるという点で、あまり芳しく思っておりません。
(2)技能実習2号修了予定者等に対する制度周知 について 「技能実習2号修了予定者等、更には監理団体、実習実施者に対して、特定技能 1号の受入れ手続きを含む特定技能の在留資格に係る新たな制度全般を幅広く周知していくべきである。」
監理団体側としても、特定技能への切り替えについて、監理費の値下げを要求される可能性もあり、積極的に移行を進めておりません。また、ベトナム人実習生も特定技能を含めて8年ないし10年の労働期間については、そこまでモチベーションを保てるかどうかの問題も出てきます。
それから長期で働く外国人労働者に対して、給料をどうするのか考えていかなければなりません。コスト高を考えると、さほど熟練を要しない作業であるならば、安く雇える技能実習生を3年で回す方が良いと考える会社も少なくなりません。
(3)在留資格手続きの円滑化・迅速化 について
技能実習の延長として、特定技能が見られているせいか、書類がバカみたく多く、正直ムダとしかいいようがありません。技術。人文知識・国際業務の在留資格程度の書類で十分なのではありませんか?
監理団体ならば、技能実習とほぼ同じ書類量なので問題はありませんが、行政書士さんならばなんじゃこれの世界でしょうね。
(4)受入れ対象分野の特定技能試験の早期実施と地方での試験実施 について
まず日本語試験については、NAT-TESTも許可要件に加えてもらいたいと思います。国外での特定技能の許可要件の日本語試験が少なく、これも特定技能外国人が増えない一つの原因です。
また、各業種の試験機関ですが、本当にやる気があるのかどうかよくわかりません。どうも国は当初から技能実習2号移行者を対象として考えているとしか思えず、早く試験をたくさんやれっですね。
2.外国人材の受入れ拡大に向けた政策
(1)わが国の国家資格取得者の積極的な受入れ について
これは提言通りであると思います。また、日本の国家資格受験に関して、学歴要件がありますが、海外の大学卒業者が、受験資格の大卒と見なされないケースが多くあります。この辺の改善もしてもらいたいと思っています。
(2)留学生のわが国における就職・起業の促進 について
「外国人留学生はわが国での教育を通じて高度な専門性や日本語能力を身に付けており、留学 期間中は日本人学生や地域住民と様々な形で交流することを通じて、わが国を深く理解して いる貴重な人材である。」
これは違います。外国人留学生の約9割は、留学生という名の出稼ぎ労働者です。留学生の資格外活動(アルバイト)は風俗以外のどんな仕事でもつくことができ、技能実習生を使うことができないコンビニや食品加工工場、物流関係にとって、貴重な労働力でした。
「わが国での就労を希望する外国人留学生が6割強である 中、実際の就職率は3割強にとどまっている。その一因に、外国人留学生がわが国の企業に 就職を希望する際に、在留資格の関係から選択先が大学等で学んだ専門分野に限定されてしまう課題があった。」
これも誤りです。技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ができないのは、週28時間のアルバイトをいくつも掛け持ちしたり、国民健康保険料の未納による税金滞納などが変更申請の審査のときに相次いで発覚したからです。
「外国人留学生によるわが国での起業・創業の促進に向け、在学中でも「経営・ 管理」ビザへの切り替えができるよう制度を改正すべきである。なお、外国人材が起業・創業のため「経営・管理」ビザを取得するためには、事務所の開設 に加え、常勤2名以上の雇用、もしくは資本金の額または出資の総額が 500 万円以上など、 ハードルの高い要件が課せられており、その要件を緩和して外国人留学生はもとより、広く 外国人材による起業・創業の促進を図ることを併せて検討すべきである。」
今の段階で上記の件を緩めれば、制度を悪用する外国人が増えるだけです。
(3)高度人材の受入れ促進に資する施策の強化・拡充 について
これは提言通りで良いと思います。
3.受入れ企業に対する政策
(1)特定技能の在留資格に係る新たな制度の幅広い周知 について
「46.0%の企業が「制度概要や受入れ企業の 要件、受入れ手続きに関する情報提供」を挙げていることに加え、これらの幅広い周知を求 める「生の声」が当所へ多く寄せられていることから、法務省出入国在留管理庁は説明会等 を通じて人手不足に苦慮する中小企業に対して本制度を幅広く周知していくことが求められる。」
正直、県など行政機関が主催した説明会を聞いて、制度内容を理解できる人たちがどれぐらいいるでしょうか?技能実習制度にしても特定技能にしても、ある程度の在留資格等の知識を持ち、どういう形で外国人材を受け入れているかわかっていないと、なんかわけのわからないことを聞いたぐらいで終わってしまうと思います。
現場を熟知している者が話した方がわかりやすいと思います。
(2)外国人雇用管理指針の幅広い周知 について
上記と同様。
(3)公共職業訓練を通じた外国人材のスキルアップ について
「外国人材のスキルアップやキャリア形成を支援するために、厚生労働省は外国 人材に対する人材開発支援策を拡充していくとともに、公共職業訓練における外国人材の受入れ態勢を強化していくことが求められる。」
言っている意味はわかるけど、厚生労働省に上記のことをやれる余力はあるのですか?だいたい予算を削られて、人も削られて、新たな事業を行うにしても人がいない現実があります。
また、外国人のスキルアップは、入国前母国において行うべきであると思います。
(4)分野別協議会の緊密な連携、好事例の周知・横展開 について
はっきり言いますが、意味がありません。だいたい協議会をつくって、機能するのですか?外国人材のことをわかっていない人たちが集まったところで、単なる形づくり。やってますよの雰囲気作りで終わってしまって、それでおしまいだと思います。
4.共生社会の実現に向けた受入れ環境の更なる整備 について
「70.3%の企業が「外国人材に対する日本語教育の充実」を、56.4%の 企業が「外国人材が日本で暮らしやすくするための社会づくり(行政・生活情報の多言語化、 多文化共生の取組等)」を挙げている。」
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」及び「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応 策の充実について」に盛り込まれた対応策を着実に実行されたい」
ここまで言うのであれば、どうして「移民」について話をしないのでしょうか?ここでいう共生は、私からすると日本にとって都合の良い共生にしか聞こえません。そして、移民法もしくはそれに同等の何らかの法体制の構築が必要になるはずです。今、外国人受入れで問題となっているところは、日本に居住している人たちのための法律で、外国から来た一時的な出稼ぎ労働者をカバーするからいろいろ矛盾が生じるのです。
5.「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」の定期的なフォローアップと施策の追 加・拡充 について
法律作ればいいのではないでしょうか。
6.外国人材にとって納得感の高い社会保障制度の検討
「特定技能 1 号や技能実習など在留期間の上限が 10 年に満たない在留資格で就 労する外国人材にとって、公正で納得感の高い社会保障制度となるよう、脱退一時金の受給 額の増額について検討すべきである。加えて、今後、特定技能等での就労増加が見込まれるアジア諸国について、年金加入期間の 通算を含む社会保障協定の締結を進めていくことが求められる。」
特定技能外国人や技能実習生から、厚生年金を取る必要性はあるのでしょうか?脱退一時金で戻るにしても、本人が負担した分だけであって、会社負担分はそのまま国庫に納められてしまいます。何かおかしくありませんか?
私は10年以下の外国人に対しては、健康保険料のみ負担で、年金については必要なしと考えます。これも10年以下の外国人居住者向け社会保障制度に関する法律を作って、対処すべきと考えます。
IV.結びに
「外国人材に期待する役割、職務内容やキャリアプランの明確化、適正 な処遇の確保等を通じて、企業の成長を担う中核的な人材として中長期の視点で外国人材を 育成していくことが重要である。」
これを言うのなら、外国人労働者の受入れについて、根本から考え方を直していかなければならないと思います。今、日本で行われている受入れはあくまでも一時的に日本に出稼ぎに来た外国人を使って、当面の人手不足を補おう。その上、日本人を使うよりも外国人を使った方が安いし、一生懸命仕事もするし、というように思っているようです。
しかし、このやり方がいつまでできるのかは、正直わかりません。日本は長いデフレで実質賃金は下がり続け、東南アジア諸国との所得格差はだんだん縮まっていきます。10年も経たないうちに、もしかすると日本人が海外に出稼ぎにいく、そんな時代もくるかもしれません。そのぐらい、日本人の賃金が安いのですよ。そして、その安い日本人をこき使って大企業が大きな利益を上げているのが、今の日本の置かれている現状です。
今後も外国人材を日本に呼び込みたいのであれば、私はまず今の日本人の賃金を上げることが必要です。日本と海外での所得格差がないと、わざわざ日本に来る必要がなくなってしまうのです。
安易な外国人労働者の受入れは反対です。ヨーロッパの移民政策の失敗を私たちはよく学ぶべきです。ドイツは多くの移民を使い、経済が潤いましたが、その代わり治安や文化を失いつつあります。ヨーロッパ全土がそうです。いつの間にかイスラム文化が入り込み、多くの良きヨーロッパがなくなりつつあります。
日本も同様です。「移民」の受入れについて、日本国民がきちんと議論をして、なし崩しで受け入れるのではなく、どのような形で外国の人たちと共栄・共存していくのかをしっかり考えなければならないと思います。
以上となります。



