神楽坂のお気に入りの鉄板中華のお店、予約なしで訪れてみたが、運よくカウンター席が空いており、席に着くことが出来た。
通された席の隣には、女性二人組がいて、俺がこれから注文しようと思っている料理を食べている途中だった。
揚げられたスペアリブに辛くてスパイシーな粉が存分に塗されているこの店の名物料理だ。
もちろんスペアリブが主役なのだが、俺はこの粉も重要視している。
店で粉まで食べつくすことは無いし、それは万人にとって、ほぼ不可能と言えた。
粉まで綺麗に食べつくすことは、一味辛しを一瓶飲み干すとまではいかないが、それを凌駕する行為に違いなかった。
これはあくまで薬味であって、それだけで食べるものではない。
だから、俺は余った粉は、持ち帰りにしてもらうことにしているし、お店側もそれを勧めていた。
持ち帰った粉は、家で、カレーやら、麻婆豆腐やら、唐揚げやら、に振りかけ、味の変化を楽しむことにしている。
前回伺った時に持ち帰った粉は、もうほぼなくなりかけていた。
それもあって、神楽坂まで来たついでに、予約なしだったがダメもとで寄ってみたのだ。
それで運よく席に着くことが出来たという次第だった。
すでに隣でそれを食べている女性達を横目に、俺は同じものを注文した。
それが出来上がるまでのアテに早く出て来そうなサラダと紹興酒もお願いした。
案の定それらはすぐに目の前に届けられた。
それらをちびちびやりながら過ごしていると、漸くお待ちかねの料理が出来上がってきた。
しかし、届けられたそれを見て、俺は、「んん?」と二度見してしまった。
思いの外、粉の量がいつもより少なく思えたのだ。それに粉の赤さも、今までより薄い。
チラリと隣の皿を見ると、すでにスペアリブは平らげられていたが、皿の上には大量の粉が残されていた。
粉の量は俺の二倍近く、赤さももっと濃厚に見えた。
しかし、口にしてみれば、それは今までと変わりない美味しさだった。
よくよく考えれば、向こうは二人なのだし、粉の量が俺の二倍なのも当然だった。
色の加減は、光の当たり方のせいで、角度を変えてみれば、いつもと何ら変わらなかった。
こういうのを、隣の芝生は青いっていうんだろうな、と、俺は一人納得した。
無事、粉ゲット!
でもこれはもう1か月前くらいのはなしで、もうなくなりかけている。
また、行かなきゃな。