
午後からは時間との戦いだ
昨年までは、弟達の落とした
柚子を駆けずり回って拾い
コンテナに入れていた
今年は日が暮れるまでに1つ
でも多くの柚子を落として、
拾うのは最後にしようと決め
高枝切り鋏を駆使する
超早技のМくんには及びもつか
ないが「パチン、パチン」と
軽快な音を響かせて、1本の木を
ターゲットにひたすら落として
行く
ブルーシートには丸々とした
完熟の柚子が見る見る溜まって
行く
午後からも母が下りて来た
柚子採りもお茶摘みも人数は
多ければ多いほどありがたい
後4カ月すれば95歳になる母も
立派な戦力なのだ
ただ、今年は明日の悪天候が
どうしようもないので、言葉
を交わす間も惜しんで収穫に
専念しなければならない
それにしても、今年の柚子の
出来具合はどうだ


まるでグレープフルーツの
ように、どこに鋏を入れれば
いいか分からない

日は西へ西へ傾いて行く
小さな子どもでも採れるくらい
低い枝に付いている実も、もう
採っている暇はない
ありがたいことに今年は運搬車
を動かす役目をYくんが買って
出た
キャタピラでゆっくり動く
運搬車は遠回りするので、かなり
時間が掛かる
手の早いМくんが運搬車を使う
とロスタイムが生まれるが、
今年は理想的な展開になった
「もう柚子の枝が見えないよ!」
「まだまだ見えるよ」
私の訴えに耳を貸さず、脚立の
上に立ってМくんは鋏を動かし
続ける
母が座ってコンテナに柚子を
拾っている辺りは闇に包まれ
見えなくなった
日は沈んでしまい、落ちた柚子
が僅かに白い
「もう道が見えないから、やっと
来れたよ」
ライトの点かない運搬車で
Yくんもやっとの思いで畑に
到着した
「もう何も見えないなあ…」
やっとМくんから諦めの嘆息が
漏れた
撤収だ
帰ったら身体の温まる鍋物を
用意しよう
覚束ない母の手を引っ張り
ながら、細い坂道を一歩一歩
踏みしめて上って行く
続きます

