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〉水無月の厨を満たす
シフォンの香
季語……水無月……夏
頼まれたシフォンをせっせと
作っていたのは、もう十年近く
前のこと。
最近は忘れるくらい頼まれる
ことがなくなった。
真っ白いモコモコのメレンゲを
魔法のように作り出していた
家人も老いた。
ここ2年は、腰痛と肩の痛みを
訴えることが増えた。
では、師匠で弟子のなまちゃん
が作れればいいのだが、こと
シフォンだけは無理![真顔](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/622.png)
![びっくりマーク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/611.png)
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![びっくりマーク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/611.png)
まず、メレンゲはハンドミキサー
に任せたとしても、その後の
混ぜ込みが出来ない。
大きく、むらなく混ぜるには
家人の力がなくては難しい。
そして、極め付きは型から外す
作業![驚き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/619.png)
![アセアセ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/100.png)
![驚き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/619.png)
![アセアセ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/100.png)
僅かでも刃先がブレると、生地
を傷つけてしまう。
何度かチャレンジしたが、不器用
ななまちゃんは必ずどこかに
傷をつけてしまう。
そこで、シフォンの依頼があると、
「これは、とうさんにしか出来
ないよねぇ」
と、持ち上げながら一緒に作る。
今月は、何がどう作用したのか、
シフォンの依頼が10件を超えた。
最後に電話してきた人は、9年
間音沙汰がなかった。
「スーパーの入口でシフォンを
カットして売ってるのを見て、
どうしても○○さんのシフォン
を食べたくなったの」
そこまで言われては、作らない
訳にはいかない。
「種類を限定して、バニラと
モカしか作ってないんですよ」
「全然大丈夫。
◯◯さんのシフォンなら、何
でもOKよ」
いよいよ退路を断たれた。
かくて、なまちゃん家のキッチン
には、今日もシフォンの甘い
香りが漂うのである![よだれ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/617.png)
![飛び出すハート](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/610.png)
![飛び出すハート](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char4/610.png)
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