句作その869…水無月 | まりんぼったの独り言

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ヨウムのまりん(2000年生まれ)との日々…
笑ったり、怒ったり、ひたすらにぎやかな日常の中で、私(なまちゃん)の日々も流れて行きます。
調子に乗って、俳句、短歌、川柳、小説なども。
秘境に1人暮らしをしている母も93歳になりました。

 



 〉水無月の厨を満たす
  シフォンの香

 季語……水無月……夏

 
 頼まれたシフォンをせっせと
 作っていたのは、もう十年近く
 前のこと。

 最近は忘れるくらい頼まれる
 ことがなくなった。
 
 真っ白いモコモコのメレンゲを
 魔法のように作り出していた
 家人も老いた。

 ここ2年は、腰痛と肩の痛みを
 訴えることが増えた。

 では、師匠で弟子のなまちゃん
 が作れればいいのだが、こと
 シフォンだけは無理真顔びっくりマーク

 まず、メレンゲはハンドミキサー
 に任せたとしても、その後の
 混ぜ込みが出来ない。

 大きく、むらなく混ぜるには
 家人の力がなくては難しい。

 そして、極め付きは型から外す
 作業驚きアセアセ

 僅かでも刃先がブレると、生地
 を傷つけてしまう。 

 何度かチャレンジしたが、不器用
 ななまちゃんは必ずどこかに
 傷をつけてしまう。

 そこで、シフォンの依頼があると、
 「これは、とうさんにしか出来
 ないよねぇ」  
 と、持ち上げながら一緒に作る。

 今月は、何がどう作用したのか、
 シフォンの依頼が10件を超えた。

 最後に電話してきた人は、9年 
 間音沙汰がなかった。

 「スーパーの入口でシフォンを
 カットして売ってるのを見て、
 どうしても○○さんのシフォン
 を食べたくなったの」

 そこまで言われては、作らない 
 訳にはいかない。

 「種類を限定して、バニラと
 モカしか作ってないんですよ」   

 「全然大丈夫。
 ◯◯さんのシフォンなら、何
 でもOKよ」

 いよいよ退路を断たれた。

 かくて、なまちゃん家のキッチン 
 には、今日もシフォンの甘い 
 香りが漂うのであるよだれ飛び出すハート飛び出すハート


 


 「なまちゃん、 シフォンの
 切れ端ボクにも食べさせてね」