九十の媼守りし牡丹散る
季語……牡丹……春
媼……おうな……年老いた女性のこと
二十年前は見事な牡丹園だったのに、今回
驚いたことに、牡丹がチラホラあるだけだ。
てっきり管理が悪いから、枯れて無くなっ
たのだと思っていた。
帰り途、大木の周りの苔を残しながら、
草取りをしている方に会い、家人が
声を掛けた。
「牡丹が随分少ないようだけど、枯れた
んでしょうか?」
ここは小さいけど、町の宝だと思って
こうして草取りもするんですが、
夜の間に牡丹園の外側の土手に、車を
乗り付けて掘って行ってしまうんで
ね。
前は見事な牡丹が沢山あったのに、
今はあんなになってしまって……」
品のいい老女は、同じことを何度も何度も
繰り返した。
何ということを!
切なくて、悔しくて、泣けて来そうだ!
人として、何故にそんな酷いことが平気で
出来るのだろう?
無人の駅舎に、家で育てた花の苗を何年も
何年も植え続けている人もいるのに……
優しいその方のお話は、いつ果てるとも
なく続く。
こうして草取りが出来るか……
身体の続く限りは頑張ろうと思って
います。」
「どうかお身体を大切になさってくだ
さいね」
私達は、それしか言えず何度も振り返り
ながら、別れを告げたのだった。

