ふみちゃんのこと☆4・・自由に羽ばたいて | まりんぼったの独り言

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ヨウムのまりん(2000年生まれ)との日々…
笑ったり、怒ったり、ひたすらにぎやかな日常の中で、私(なまちゃん)の日々も流れて行きます。
調子に乗って、俳句、短歌、川柳、小説なども。
秘境に1人暮らしをしている母も93歳になりました。

 

 

     最悪な先生の言葉で、傷ついているふみちゃんを引き上げる魔法の言葉は

     ないだろうか?

     「そんなのは絵てがみではない!」と言い切った先生に報復してやりたい気持ちも

     芽生えたが、それよりもふみちゃんに絵てがみの楽しさを肌で感じてもらう方が

     先だった。

 

     ふみちゃんは、いつも私の絵を手離しで褒めてくれる。

     「なまちゃんは本当に上手。私なんか全然だめよ~」

     謙遜でもあるのだが、正直その頃のふみちゃんの絵は、いわゆる絵てがみの

     常識(墨の輪郭、顔彩の色づけ)に縛られていて、大きくはみ出したり、滲んだり

     して、思うように描けていなかったのも事実だ。

 

 

     

     「えーっ!ふみちゃん!これって?!」

     ふと、ふみちゃんの今までの葉書大のスケッチをめくっていて、私はすごいものを

     発見した。 

     「これって、間違いなくふみちゃんが描いたものよね~?」

     それは、鉛筆で稲穂と彼岸花を克明にスケッチしたものだった。

 

     1本の線を引くのも、1つの文字を書くのも、今のふみちゃんには辛い作業の

     はずである。

     それなのに、稲穂の1粒1粒、彼岸花の細く複雑な雄しべと花びら、気の遠くなる

     ようなスケッチが、狂いのないデッサンで描かれていた。

     この絵を見て、何の感動もなく、自分の教えている絵とかけ離れているからという

     だけで、低い評価をした先生の顔を見てみたいものだ。

 

 

     けれども、ここで私は次の障害物に突き当たった。

     次のページには克明なスケッチに顔彩を塗ったために、せっかくのラインが消えて、

     無残な作品に仕上がってしまった花の絵があった。

     こんなに見事なデッサンを生かして、ふみちゃんが一人でも色づけして仕上げるには

     顔彩や、水彩絵の具ではどうしても無理があるだろう。

 

 

 

 

        

 

     

     「そうだ!ふみちゃん、いいものがあるよ!せっかくこんなに綺麗なデッサンが出来る

     んだから、色づけは水彩色鉛筆でやってみようよ!」

     いい考えだったと今でも思っている。

     私は長年愛用しているスタビロスワンの色鉛筆を持参して、ふみちゃんに一緒に

     塗ってみようと誘った。

 

     水彩色鉛筆は柔らかくて塗りやすく、水を含ませた筆でなぞれば、簡単に絵の具の

     風合いが出せる。

     輪郭は青墨(せいぼく)の筆ペンを使用した。

     指先に力を入れなくても味わいのあるラインが描け、しかも滲まないのが特徴だ。

     ラインが描けて滲まないのは本当にありがたく、それから何年も使用した。

 

 

     ふみちゃんは日本製の水彩色鉛筆を購入し、本格的に絵てがみに没頭した。

     時間があれば、一緒に花や果物を見ながら絵を描いた。

     ふみちゃんの丁寧さ、画題への愛情は、私には驚異でしかなかった。

 

 

     「ふみちゃん!失礼だけど、本当にこれはふみちゃんが描いたのよね?」

     会うたびに、見るたびにふみちゃんの絵はめざましく上達していった。

 

 

     ただ、上手いというのではなく、絵から伝わるほのぼのした温かさ、パソコンで

     挿入する添え書きの素朴で心を打つ言葉の数々・・私はどんどんふみちゃんの

     醸し出す独自の世界に惹き込まれていった。

 

   

     残念なのは、ふみちゃんが1枚を仕上げるのに費やす膨大な時間を、誰よりも

     知っているから、たとえスキャナで読み取ってプリントアウトした作品であっても、

     安易に「ください」と言えず、我が家には絵が殆ど無いことだ。

 

   

 

     この頃、私はふみちゃんとこんな会話を交わしている。

     「ねえ、ふみちゃん。ふみちゃんは、今や私には師匠としか思えないわ。

      今までは良きライバルだと思っていたけど、とんでもない!

      これからはふみちゃんのことを『師匠』と呼ぶからね」

      案の定、ふみちゃんは笑いに身をよじりながら「私なんか~ダメダメ~」

      またしても謙遜の嵐である。

      

     「ふみちゃん、そんなところに穴を掘って入ろうと思ってもダメだからね。

      穴を掘って入りたいのは私の方よ~」

     そして、二人で際限も無くゲラゲラと笑い転げるのである。

 

 

 

 

        

 

      *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

      続きます。

      絵てがみから、ふみちゃんは更にすごいことにチャレンジしていきます。

      ふみちゃんの可能性はどこまで広がるのでしょう。