ふみちゃんのこと☆3・・絵てがみとの出合い | まりんぼったの独り言

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ヨウムのまりん(2000年生まれ)との日々…
笑ったり、怒ったり、ひたすらにぎやかな日常の中で、私(なまちゃん)の日々も流れて行きます。
調子に乗って、俳句、短歌、川柳、小説なども。
秘境に1人暮らしをしている母も93歳になりました。

 

 

 

 

     ふみちゃんとの出逢いから、少し話を進めることにする。

     数年の間に、お互いの身にいろいろな出来事があった。

     私の仕事の関係で、以前のように度々会うことが叶わなくなり、帰りに回り道して

     寄ると雨戸が閉まっていて、諦めたことも何度かあった。

 

 

     後でふみちゃんに訊いたら、ヘルパーさんが帰るとき早い時間でも雨戸を閉めて

     帰ってもらっていたのだそうだ。

     そうとは知らず、ふみちゃんの身を案じながら、踵(きびす)を返していたのだ。

 

 

     ふみちゃんの口癖は「お蔭さまで・・・」というものだった。

     「謙虚」という言葉はふみちゃんのためにあるような気がしていた。

     ふみちゃんは優しい母親と二人暮らしだったが、亡くなってからは身の回りの

     ことは全て介護の力を借りなければならなかった。

 

 

     時を同じくして、脚力が無くなり、立つことも歩くことも不可能になってしまった。

     着替え、入浴、食事作り、洗濯などの主だったものから、買い物、植物の世話

     などの細々としたことも自力では出来ない。

     だから、常に「ありがとう」「お蔭さまで・・・」という言葉が口をついて出るのだろう。

     

 

 

     そんな中でも、向学心の強いふみちゃんはパソコンの操作方法を教わり、

     キーボードを叩いて自分の意思を伝えたり、家計簿記帳から、遂にはホーム

     ページまで立ち上げたのである。

     「私は習っていないから、あまり文字が読めないの」

     恥ずかしそうに話してくれたふみちゃんが、私には出来ないパソコンの操作を

     こなしていく姿に、「う~~ん」唸るしかなかった。

 

 

     「ふみちゃんって本当にすごいね!尊敬しまくりよ」

     笑いに紛らせて褒めると「そんな~!私なんか~」ふみちゃんは恥ずかしそうに

     身をよじりながら謙遜の塊になるのである。

     「私は何事も諦めない!」 凛とした、誇りに満ちたふみちゃんと、「何も出来ない」

     笑いながら穴があったら入りたそうなふみちゃんは、まぎれもない一人の人間と

     して存在するのである。

 

 

     さて、そんなふみちゃんに打ち込める趣味との出合いが訪れた。

 

                 

 

 

         絵てがみとの出合いである。

    ある日、ふみちゃんを訪ねると、いつもは明るい彼女が沈んで見える。

    「ふみちゃん、どうしたの?何かあった?」

    「それがね~」

    ふみちゃんはゆっくり喋ってくれた。

    聞き取りにくい箇所は、何度も聞き返してわかったことは・・・

 

 

    ・・・ふみちゃんは週に2回、デイサービスに通っていて、そこには絵てがみの

    先生がやってきて教えてくれるのだが・・・

    半紙に筆で輪郭を書き、たっぷり水を含ませた絵の具で塗るので、手の不自由な

    ふみちゃんは滲み過ぎて上手く描けない。

    そこで、鉛筆で細かに描きあげた彼岸花を先生に見せたら「それは絵てがみではない」

    暗に邪道だと言われたようで、ふみちゃんは凹んでしまったのだ。

 

 

    「何を~っ!!」

    私の正義感に火が点いた!!

    そんな決め付けは絶対許さない!!

 

 

    *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

 

 

    続きます。

    ふみちゃんの絵てがみへの情熱に火を点けたのです。

    そして、思わぬ展開が待っています。