第049話 性格
スペイン坂を半分程上がると
小さな入り口の前に行列が出来ていた。
今日開店のその店は
地下1階にあり
階段を下りる時にすでに聞こえてくる
豪快な重低音が私の胸をときめかせる。
私達は
VIPルームの中でも一段高い位置にある
レディースシートに通された。
お尻がぼわっと深くまで鎮むソファが
なかなか気持ち良い。
黒服達が名刺を持って
こぞって挨拶に来る中
私達は我がもの顔で
店の値踏みを始めた。
「まぁまぁってとこ?」
「お立ち台低くなーい?」
「あんまりミーハー路線じゃないっぽぃね。」
「選曲のセンスはいいかもね。」
「ポーターの黒服けっこうイケてたよね。」
「カウンターの中のバーテンきもくなぃ?」
「やっぱ渋谷だから年齢層低いね。」
「コギャル多いねぇ。うざー。」
「あの女、マハにも来てるよね?」
「連れの男おわってない?きゃはは」
私達は調子に乗って言いたい放題だ。
とくに美咲は
まだ機嫌が直っていない様子で
いつもにまして毒を吐く。
私がバージニアスリムライトを咥えると
一人の黒服が素早く火をつけにきた。
『なかなか早いわね。優秀じゃない。』
心の中でも偉そうな私。
彼は私達に名刺を一枚づつ差し出し
礼儀正しく挨拶をした。
「いらっしゃいませ。」
名刺の中の名前を見た瞬間に
美咲が思いきり吹き出した。
「なに、これ。芸名?ホストかよ!きゃはは」
彼はバツの悪そうな顔で
「本名です。名前負けしてるってよく言われます・・・。」
と下を向いてもごもごと口を動かした。
美咲は鼻で笑って
ソッポを向いてしまった。
『愛咲優弥』
アイサキユウヤか・・・。
たしかに出来すぎた名前だと私も思う。
私と美咲の決定的な違いは
こういうところだった。
私は八方美人で
いつでもニコニコしている。
誰にでも愛想を振りまくタイプなのだ。
美咲はプライドが高く
高飛車で時に意地悪だった。
自分の気に入った相手には
惜しみなく笑顔を振りまくが
気にいらない相手には露骨に態度が変わる。
私の八方美人は
誰からも良く思われたいという思惑が隠れている。
誰にでも良い顔しか出来ないのは
きっとコンプレックスが強いからなんだと
自覚している。
美咲の高飛車や意地悪も
私とは違ったコンプレックスの現われなのかな。
と常日頃から私は思っていた。
表向きの性格は全然違うけれど
きっと私と美咲の根っこは同じだ。
私達は大きな態度と
偉そうな言葉とは裏腹に
全く自分というものに自信が持てずにいた。
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