第099話 上の空
「まりも、カナはどこで上がりだ?」
「ん? ああ・・・。 カナちゃん上がりだっけ。えっと『アムール』だ。」
「しっかりしろよ。最近ちょっと上の空なんじゃないか?
さっきも客から催促の電話きたぞ!」
「ごめんなさぃ・・・」
私は仕事中に
ボーっとしてしまう事が多くなっている。
他の電話番から
注意を受けるのも今がはじめてではない。
葉巻のやり過ぎのせいか
頭がスッキリせずに
集中力がなくなっている。
日常的に倦怠感を感じるようになっていて
なんとなくヤバイかも、と自分でも思うようになっていた。
『なきゃないでいつでも辞めれる。』
そう思っていたのに
完全に依存してしまっている。
「パパ、今日から少し抜くわ!
さすがに毎日はやばいと思わない?
最近さ~、ぼんやりしちゃうのよ。」
「ん? そうか。じゃ今日はやめとけよ。」
「ねぇ、これって中毒になるの?」
「ならんだろ。」
「そっか・・・。」
パパはそう言うけれど
私はとても不安だった。
ヤクザの女になると
怪しいものの中毒にされて
そこから抜け出せなくなるなんて
よくある話だ。
そんなの当たり前すぎて
全然つまらない。
そんな目にあうのはまっぴらごめんだ!
とにかく
辞めてみよう。
そう決めてから
私はしばらく葉巻を吸っていない。
なんの刺激もない毎日で
気分が滅入ってしまう。
あいかわらず忙しいばかりで
ストレスは溜まる一方だ。
昨日と今日と明日が変わらない人生なんて
生きていたって意味がない。
永遠のループみたいな生活は
私には絶対に耐えられない。
「ハァ・・・なんか退屈だなぁ~。」
私は大きなため息をつく。
「おまえは本当に我侭で気まぐれ子猫ちゃんだな。はっはっは」
パパが笑う。
「子猫ちゃんとか・・・ウザイよ・・。
ハァ・・・気分転換したいなぁ。」
「おまえね、誰にウザイとか言ってんだ?調子に乗るな。」
パパはカチンときたみたいだけど
私はそれすら気にならない。
「ハァ・・・。なんか楽しい事ないの?」
「しょうがないな・・・。買い物でも行くか?」
パパは私の機嫌を取る。
「・・・欲しいもんなぃからいいや・・・。」
私はますますふてくされる。
「おまえ、水商売に戻るか?」
「え?」
「姐さんがスナックの方を手伝って欲しいみたいだぞ。」
「何? そんな話あるの? 聞いてないよぉ~!」
「・・・ちょっと訳ありで俺の方から断ったんだけどな・・・。」
「ん? 何? どういう事?」
「まぁ、いい。
今日からスナックの手伝いしてみろ。
気分転換になるだろ。
おまえが煮詰まってると俺もつまらんしな・・・。」
「うん! 電話番よりホステスの方が私は性にあってるよ!
だいたい、この年でやり手ババアみたいな事したくないんだよ!
やったー! やっと開放されるぅ~♪」
「やるからにはちゃんと真面目にやれよ。」
「もっちろ~ん。ん~。ちゅ!」
とりあえず
今の状況から抜け出せる事がうれしい。
このままじゃ私は本当に腐ってしまう。
久しぶりの水商売だ。
私はとたんにワクワクしはじめた。
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