第100話 本命と愛人
姐さんが新しく出店した池袋のスナックは
キャバクラのような華やかさはなく
泉ママのクラブのような高級感もない。
箱は大きいけれど
全てにおいて「それなり」というかんじだ。
まだお客さんは一人も来ていなかった。
駅からは少し離れているから
一元の客を入れるのは難しそうだ。
姐さんは
第一興商のカラオケ本をパラパラとめくりながら
煙草を吸っている。
カウンターの中でボトルの整理をしている
30代半ばの女がいる。
「姐さん、あの人は誰なんですか?」
「まりも、店ではママって呼びなさい。
それからちょっと話しがあるから、こっち来て。」
姐さんは私をカラオケの機械の裏の方に連れていく。
「あの子はね、松浦のとこの子だから。」
「え?」
「松浦の女だよ。春子ちゃんっていってね。
向こうはおまえの事は何も知らないから余計な事は言うんじゃないよ。」
「え? あ… えええ? …わかりました。あは」
私は姐さんの手前
作り笑いをしてその場はかわしたけれど
内心とても混乱していた。
一体どういう事?!
普通、自分の女と愛人を
同じ場所でかちあわせて働かせるか?!
無神経にも程があるよ!
パパもパパだけど
姐さんもあんまりだ。
パパが言ってた「訳あり」ってこの事だったんだ。
別にパパの事を本気で愛しているわけではないけど
でも…
こんなのって…
…許せない。
私は顔色は変えずに
ものすごく苛立ちながら
春子さんを盗み見る。
春子さんは
おとなしそうな人だ。
小柄で華奢で
艶のある黒髪がふわっと肩にかかっている。
控えめで可愛らしいかんじで
全然ヤクザの女には見えない!
その事が
なぜか異常に私の癇に障った。
パパったら
こういう女をちゃんと手元に置いてあるわけね!
派手な女が好きだとかさんざん言ってたくせに・・・。
何よ・・・。
結局私はパパのアクセサリーか!
私も同じだけどね!
ハァ・・・。
調度いい。
うってつけの理由が出来たし
もうパパとは本当にお終いだ!
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