第101話 得体の知れない不安
女って
つくづく気持ちの切り替えが早いんだと思う。
私はパパの事なんて
もはやこれっぽっちも好きではなくなっている事に気がついた。
9時を回ったというのに
まだお客さんは一人も入ってこない。
静かな店内の奥まったコーナーのテーブルに座り
パパとの別れの算段を考えはじめる。
どう切り出そうかな・・・。
煙草に火をつけ
頬杖をついてうなだれる。
いつしか私は
パパとの出会いから今日までの記憶をたどり始めていた。
はじめの頃
私は本当にパパの事が大好きだった。
お金と力のある男はやはり魅力的だ。
パパはその二つを持ち合わせていたし
ヤクザの組長という興味深い肩書きに
私の心をは強く惹きつけられた。
パパと五ヶ月付き合って
私はとても重要な事を知った。
お金がいくらあっても
それは幸せではないという事だ。
この発見をこの歳で出来ただけでも
パパと付き合った意味は充分にあったと思う。
中途半端にお金があっても
きっとこの事には気がつけなかったのではないだろうか。
欲しいものがなくなる程に自分の物欲を満たし
まさにお金の成る木を持ち合わせた様な生活をしてはじめて
それに気がつけたのだと思う。
金持ちなんて上を見ればキリがない。
買い物で得られるのは一時の満足感で
結局はそれの繰り返しだ。
もちろんお金は
ある種の不安は消してくれる。
お金があるという事は
とりあえず明日も生きていけるという事だから。
でも
私の中にある不安は
もっと根深く
執念深くしつこく
心の表面に何度でもせりあがってくる。
不安の正体は
あまりに漠然としていて
私にはまだよく解らない。
明日という日が来ないのなら
きっとこんなに不安になる事はないのかもしれない。
今日という日はすぐに過去になり
明日という絶え間ない未来が続いていく事に不安を感じるのだろう。
生きていくうえで一番の恐怖は
この得体の知れない不安なのではないかと思う。
どうしたら不安をかき消す事が出来るだろう。
せめて不安の正体が解れば
ただ現実逃避をするのではなく
それに挑む事が出来るかもしれないのに。
いつでも忙しい状態でいる事で
不安を覆い隠す事は出来ても
不安の芽を摘まない限り
どこかに皺寄せがきてしまう。
不安なんて一瞬も感じる事のない生活こそが幸せだ。
パパと一緒にいても幸せにはなれない。
どうすれば幸せになれるんだろう・・・。
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