第105話 素直
いつもこうやって男を連れ込むの?か・・・。
パパと付きあってからはずっとパパだけだった。
さすがにヤクザの女だって自覚はあったから
下手な事はしなかったよ。
今まではね・・・。
「まさかぁ。
今日はね、知り合いのママから頼まれてお手伝いでお店に出ただけなの。
普段は仕事もしてないし家でおとなしくしてるのよ。
直樹君を誘ったのは・・・
うーん、なんでかな?
さみしかったからかも?
てか、直樹君がタイプだったのよぉ♪あは」
「本当?!
じゃ、たまたま一日だけあの店に出た日に俺と知り合ったって事?
すげー運命感じるな~。」
「そぉね、たしかに運命かも。このタイミングで出会うなんてね。」
私の思惑なんてこれっぽちも知らない
直樹のうれしそうな顔を見ていると
ちょっと申し訳ないなと思ってしまう。
タクシーから降りると
「こんなマンションに住んでるの?すっげ~~!」
と直樹は驚きを隠せない様子で
私の後をキョロキョロしながら付いてくる。
部屋に入ってからも
「なんでこんな生活できるの? 仕事してないんだよね?」
なんて聞いてくるから
「私さ、社長令嬢なのよ。」
と答えておいた。
「まじで! すっげー。お嬢様なんだ~」
この人は人を疑うって事がないのかな?
こんなアホくさい嘘を信じるなんてどうかしてるよ。
よっぽど平和な人生を送っているんだろうなぁ。
私はそう思い、直樹の事をうらやましく感じた。
「俺もさ、あーいう店に行ったのは今日がはじめてなんだ。」
「そうなんだ?」
「うん。いつも居酒屋だよ~。
しがないサラリーマンですから!
今日は営業周りで藤田さんと田中さんの店行ったら
ちょうど出かける所だった田中さんに付き合わされちゃったんだ。
それがこんな予想外の展開に!
こんな事ってあるんだなぁ~。まだ信じられないよ!
ややや…俺ちょっと酔ってるな。」
酔っ払っているのか緊張しているのか分からないけれど
直樹は微妙におかしなテンションで
私は微笑ましくて笑ってしまう。
「なんか直樹君って年上だけど、かわいいよね。あはは」
「かわいい? はじめて言われたなぁ~。
まりもちゃんは不思議な子ってかんじ!」
「そぉ? なんで不思議なの?」
「だって…なんで俺なんかと? って思うじゃん?
うん、不思議だよ! いくらでも男なんて寄ってくるでしょ?」
「そんな事ないよ。そうだなぁ、半年くらいはおとなしくしてたかな。あはは」
「半年、彼氏がいなかったって事?」
「うん。私ね、実は・・・ヤクザの愛人なのよ。」
「えっ?!」
直樹はソファーから本当に飛び上がった。
あんまり驚くから私の方がビクっとしてしまったくらいだ。
「ヤクザの愛人!!」
「そう。 だから、そろそろピンポーンって来るかもしれなぃな~」
直樹は驚愕の表情を浮かべて
呆然としている。
ついつい直樹の素直すぎる反応がおもしろくて
私は悪ノリしてしまった。
「ぶっ
バカね。冗談だよ?
本気にした?あはは」
直樹はすっかり酒が冷めたと
肩を落としている。
「あははは ごめんごめん。
社長令嬢がヤクザの愛人に化けたら
本当に天と地の差よね。きゃはは」
「うぅ・・・まりもちゃん酷いよ~」
「ごめんってば。あはは
ねぇ、シャワー浴びるでしょ?」
下を向いていた直樹が
ハッとして顔を上げ
私を見るなり真っ赤になってしまった。
本当に素直な人。
ここまで純粋な人って希少価値なんじゃないかしら・・・。
それとも私の周りがみんなどうしようもないスレッカラシばかりだったのかな・・・。
「先にシャワーつかって。」
私は直樹の背中を押してあげる。
シャワーに向う直樹の後姿を見て
意外と背が高いんだという事がわかった。
直樹がシャワーを浴びる音を聞きながら
私はパパに電話をかけた。
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