第106話 別れ話
「もしもし、パパ? 今忙しい?」
「おう、まりもか。ちょうど移動中だから大丈夫だよ。終わったのか?」
「うん。さっき家に帰ってきたとこ。でね、ちょっと話あるんだ…。」
「うん? どうした?」
パパは普段どおりの優しい声だ。
でも・・・
私は言いづらい事を今言うしかない。
もう犀は振られたんだ。
そのために直樹を家に呼んだのだから。
私は大きく息を吸い込み覚悟を決めて
パパに別れの意志を伝えた。
「パパ・・・。 パパと別れたいの。」
「あ? なんだ、春子の事で怒ってるのか?
姐さんの頼みで人手が足りていないんだよ。我慢してくれよ?」
「…うん。 春子さんさ…かわいい人じゃん。」
「まりも…困らせるな。」
パパはまだ解っていない。
私がヤキモチを妬いていると思っている。
「別に困らせるつもりじゃないもん! パパ、別れてくれる?」
「…今すぐにはそっちに行けないから、朝方行くまで待ってろ。」
「ううん。今日は来ないで!」
「まりも! いいかげんにしろよ。話は会ってから聞くから、わかったか?」
「…パパ、私、男連れこんでるのよ…。」
「ああ?! おまえ何やってるかわかってるのか?」
パパの声が大きくなる。
私は恐怖感で一杯になるけれど
もう後には引けない。
「私どうなるの? コンクリ詰めにでもされて東京湾に沈められるの?!」
勢いにまかせて大きな声を出す。
もう勢いとハッタリで話をつけるしかないんだ。
「ヤクザだもんね! パパは私を貶める事なんて簡単だよね!」
大きな声を出して
自分の気持ちを奮い立たせる。
こうやって恐怖心をはねのけていくしかない。
「・・・バカ言うな…。」
パパの声は予想外にトーンダウンした。
それでも私は勢いよくまくし立てる。
「パパ、お願い! もう本当に別れたいの。私、幸せになりたいのよ!!」
「・・・・・・・おまえ、本気なのか?」
「うん! もう決めたの!」
「…そうか。 ・・・・どのみちちゃんと話をつけないとな。 男は…本当にいるのか?」
「うん、今シャワー浴びてる。」
「・・・そうか…。」
「わかった。
それじゃ夕方にそっちに行くから、それまでに男は帰しておけ。
いいか、まりも
もしも俺がそっちに行って男と鉢合わせたらそのときは取り返しが付かない事になるぞ。」
パパは冷静に
厳しい口調でそう言う。
「それから、一つだけ聞くが、まさか同業のもんじゃないだろうな?」
「まさか… 一般人だよ、パパ。」
「そうか… それじゃあな…まりも。」
そんなさみしそうな声を出すなんて反則だよ。パパ…。
ヤクザと別れる時ってもっと修羅場になるんもんじゃないの?
今すぐ手下を一杯連れてここに乗り込んでくるとか
そういうのを予想していたのに・・・。
これじゃ、まるきり私だけが悪者だ。
続き気になる人はクリックしてね♪

