第129話 重たい沈黙
ただならぬ空気を感じた。
私は目を開けずに
記憶の整理をする。
AVの撮影を終え
一人の男優を誘って部屋に帰ってきた。
二人でハッパを吸ってSEXして寝たはずだ。
直樹には
おばーちゃんが来ているから
実家に泊まると言ってある。
直樹は仕事が終わったら
そのまま自分の家に帰ると言っていた。
今は何時なのだろう。
AVの撮影が終わったのが9時だった。
11時か12時くらいかもしれないが
どのくらい寝ていたのかがわからない。
口の中がネバついて気持ち悪い。
「誰かいるよ。」
隣の男がそう言って私の体をゆすり続けている。
私は夢を見ているのだろうか。
目を開けると
ベットのすぐ傍らで
スーツ姿の直樹が私を見下ろしていた。
あろう事か
私はもう一度目をつぶって
直樹に背を向けて寝ようとした。
この現実を受け入れるだけの
キャパシテイが私にはなかった。
隣の男が
「まりも! おい、まりも!」
と私を起こそうとする。
しょうがないから私は目を開けるしかなかった。
「こいつ誰だよ?」
直樹が無表情でそう言う。
私は何も言葉が出てこない。
隣の男も何も言わない。
何か言わなければと思い
「なんでここにいるの?」
と私は言った。
呂律が回らずにおかしな発音になった。
直樹はきっと私が酔っていると思っただろう。
私の質問に直樹は答えない。
頬のあたりの筋肉が引きつっているのがわかる。
ああ、そうか。
私は愛している男に
どうでもいい男と裸でベットにいるところを見られているのか。
こういうときはどうすればいいのだろう。
とりあえずここに男が2人いるというのがややこしい。
「あのさ・・・今日は帰ってくれるかな・・・」
私がそう言うと
隣の男は
「うん、そうするよ。」
とベットから起き上がろうとした。
「あ、いや・・・違うの。」
「ん?」
「直樹、帰ってよ。」
帰れと言われたのが
自分だと分かり直樹は少し驚いた顔をした。
重たい沈黙が部屋を包み込む。
誰も何も言わないし
私はもう直樹の顔を見る事が出来なかった。
そのまま何分もたった。
沈黙を破ったのは私だった。
「ちょっと、これには理由があるの。明日でも説明するから今日は帰って。」
とにかくこの場を切り抜けたいと思い
私はそんな事を言った。
直樹は黙ったまま動こうとしない。
「いいから、もう早く帰ってよ!!」
私が直樹を睨み付け
大きな声を出すと
直樹は一瞬呆れた顔をした。
そして
何も言わずに部屋から出ていった。
男優の方を見ると
青ざめた顔で呆然としている。
「あぁ、ごめんね。びっくりしたよね。」
私はフォローのつもりでそう言った。
「こんな事はじめてだよ。一体いつからいたんだよ・・・。こえー・・・」
男は焦点の合わない目でどこか一点を見つめながらそう言った。
そういえば、直樹はいつからいたのだろう。
もしかしたらSEXしている時から
部屋の中にいたのだろうか。
男はすっかり冷めたというかんじで
「俺、帰るわ・・・。」
とベットから出ようとした。
「待って! お願い、帰らないで。 朝まで一緒にいて!」
直樹が温厚な人だったので修羅場にはなりませんでしたが・・・この事件は相当トラウマです;
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