第127話 矛盾
シャワーから上がり
鏡を見ると不思議な感覚に陥った。
自分の表情が判別できない。
まるで
もう一人の自分が鏡の中にいるように感じられる。
今の私が笑っているわけはないのに
鏡の中の私は笑っているように見えて
混乱して眩暈に襲われた。
これと似たような事が以前にもあった。
妊娠がわかり
手首を切ってお母さんに抱かれながら鏡を見た時だ。
あの時も
鏡の中に、こことは分断された世界がある様に感じた。
この感覚は
強烈な不安を呼び起こす。
鏡の中の世界なんてあるわけがない
私は夢を見ているわけでもないし
これは現実なんだ。
何度か力強く首を振って
そう言い聞かせ
意識を集中させてから
メイクルームへと戻った。
撮影は夜の9時まで続いた。
ウブなふりをしてのインタビューと
3人の男優とそれぞれ1回づつ絡みがあった。
男優の左右対称で彫刻みたいな筋肉や
びっしりと汗を浮かべている額やお尻を見ながら
私は身を捩って大声で喘いだ。
つらいとは思わなかったし
苦痛も感じなかった。
ただ
なんでこんな事をしているのか
よくわからなかった。
とにかくこれで150万もらえるのだと思い
お金のためにやったのだと自分で納得をするしかなかった。
撮影が終わり
私は男優の一人を家に誘った。
「今日、うちに遊びにこない?」
言ったそばから自分で驚いてしまう。
私はなんでこんな事を言っているのだろう。
男優は遊びにくると言う。
全然タイプでもないし
私はとても疲れている。
一人になりたくなかったのだろうか。
いや、そうじゃない。
今、誰かといるのはとても面倒だと感じている。
それに
この男と家に行けば
それからどうなるのかは容易に想像が出来る。
そんな事は私は全く望んでいない。
なにに私は自分からこの男を誘ったのだ。
言動の矛盾が
自分の手に負えなくなってきている。
私はその男優に送ってもらう事になり
一足先に現場から帰る事にした。
現場ではまだ
スタッフ全員が撤収の片付けなどで
忙しそうにしている。
ジイヤと一緒に監督に挨拶をして
私は上着を着る。
「おまえ、ちゃんと帰れよ? 大丈夫か?」
ジイヤが心配そうに私の顔を窺がう。
「ジイヤ、おつかれさま~!」
私は元気に手を振って現場を後にした。
自分のした行動とはいえ、本当に頭捻っちゃうわ・・・やれやれですね^^;
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