第208話 イケメンパラダイス
「かんぱぁ~い!」
私の舞台デビューと再会を祝して
グラスを4人で重ね合う。
「カキン」という上品な音が響き
ピンクゴールドのシャンパンに
繊細に湧き立つ泡の粒子が美しい。
「おぃしぃ~♪ やっぱドンペリは色ついてなきゃね~」
胡蝶蘭にドンペリ
これで喜ばない女はいない。
ヒカルの派手な演出に
すっかりご満悦の私である。
楽しい歓談がしばらく続き
ウェイターが最後のドンペリを注ぎ終わる。
「カナちゃん、聞いてよ!
俺さ、まりもにマジ惚れしてたのにこっぴどく振られたんだぜ。
こいつマジでひでーんだから! 実はさ、」
突如としてヒカルは
例の話しを暴露しようとする。
冗談めいた口調ではあるが
私は真剣に焦ってしまう。
「ぎゃー! 余計なこと言わないでいいからっ!」
私が慌てて横から口を挟むと
太一君がクククっと手を叩きながら笑う。
そういえば
あの新目白通りでの修羅場には
太一君も居合わせていたのだ。
あの時の記憶が消えたわけではないのに
あの場にいた3人が
こうしてまた笑いながらお酒を飲んでいるなんて
考えてみればとても不思議な気がする。
「へー、ヒカル君ってまりもちゃんのことが好きだったの?」
蘭華姐さんは
グラスに残ったシャンパンを飲み干し
ヒカルの顔を興味深そうに覗き込む。
「そりゃー、もう! 嫁にする勢いで愛してたよ! ははは」
ヒカルが調子よく笑い
私も思わず口元が緩んでしまう。
ヒカルはあいかわらず
私の自尊心をくすぐるのが上手なのだった。
腕時計に目をやり
ユウとの約束を思い出す。
私は化粧室に向かい
個室に入り鍵をかける。
コール音を聞きながら
気が重くなっていく。
「もしもし ユウ
蘭華姐さんと太一君がすごく盛り上がっててさぁ・・・
早く帰りたいんだけど、もう少し飲みそうな雰囲気なんだ。
疲れてるし、寝たいのに・・・。
ユウは明日も学校なんだし、もう寝てていいからね。」
私は疲れきった声を出し
うんざりしているといった演技をする。
「そっか・・・。 ・・・しかたないね。
ヒカルさんは?」
「うん、なんか忙しいみたいで
私のとこには挨拶に来ただけよ。・・・まだ話してないんだ。」
いいかげんな出任せばかりが口から出てくる。
「とにかく、できるだけ早く帰るから
ちゃんと寝てるのよ。 ユウ、愛してるからね。」
電話を切った私は
軽くテンションダウンして席に戻った。
「トイレに電話?」
携帯をそのままプラプラと持って戻った私に
ヒカルは全部お見通しといった顔で笑いかけてくる。
嫣然と微笑むヒカルの余裕に私はまたクラっとする。
「ヒカルってさぁ、店で会うと本当最高の男なのよね。」
私はシミジミと言う。
もちろん褒め言葉のつもりだったのだけど
ヒカルは「ズコーーっ!」
とオヤジのようなオチをつけて笑わせてくれた。
「ちょっと他のテーブルまわってくるよ。
俺の派閥の新人を適当につけるから遊んでてな。」
ヒカルがそう言って席を離れ
ヘルプにつく男の子達のあまりの格好よさに
私のテンションは一気に跳ね上がった。
トオル君はキムタクを美形にしたような濃い顔立ちで
サラサラと流れるロンゲが印象的だ。
話してみると少し生意気なかんじではあったが
勢いのある新人だと感じた。
ケイスケ君は高橋克典に笑えるくらいソックリだ。
歌も上手だし新人とは思えない風格がある。
垂れ目で笑顔は可愛いのだけど
どこか腹黒いかんじのする男の子だった。
リュウヤ君は
万人受けの完璧な容姿の持ち主だ。
ホストにはめずらしい黒髪で
派手な雰囲気は全くない正統派美男子である。
少女漫画から抜け出してきたようなキラキラお目目に吸い込まれそうになる。
会話の内容はややダサイものではあったが、そこが逆に爽やかさを感じさせる。
隣にいるだけでこっちの顔が赤らんでしまうようなスペシャルホストだった。
そしてトモ。
トモの顔はやっぱり私の好みだ。
顔だけ見るとユウに少し似ているし
トモの舌足らずな話し方は抜群に母性本能を擽る。
私はちょっかいを出したくてウズウズしていた。
「ねぇ、私、トモに指名変えしてもぃぃ?」
そんな風に甘えてトモのことを困らせて遊んだ。
あーーー!
もぉぉ!!
眼福に預かるとはこういうことを言うのだな!
超楽しいーーー!
太一君は指名が入っていないようで
ずっと蘭華姐さんの相手をしている。
私はヘルプのイケメンホスト達と盛り上がりながらも
隣で密かに繰り広げられている太一君の色恋トークを盗み聞きして
そっちでも充分に楽しんでいた。
太一君ったら・・・ようやるゎ!
蘭華姐さんメロメロだもんなぁ~
結局私は
閉店時間の6時まで飲んでしまった。
「ごめんな、 今日すげー忙しかった。」
ヒカルが戻ってきた時には
私はかなり酔っ払っていた。
「そいえば、ヒカルは今どこに住んでるの?」
昔はこのままヒカルと一緒に帰ったんだよなぁ
と私はあの頃のことをなつかしく思う。
「キャッスルに住んでるんだ。」
「えっ! ホテル暮らししてるんだ?」
キャッスルは歌舞伎町の真ん中にある。
私がヤクザのパパと最初に住んでいたあのホテルだ。
「そう、 トオルと一緒の部屋なんだけどね。」
「へぇ~! あそこのデミグラハンバーグ超おぃしぃよね。
なつかしぃなぁー。 私もあそこに住んでたことあるんだよ。 知ってたっけ?」
ヒカルがふいに
テーブルの下で私の手を握る。
「あはっ、なつかしぃね~。こーぃぅの。」
私はヒカルの手を握り返す。
「でも、 もぉ一緒には帰れないのが残念ね」
私はいたずらに
そんなことを言ってしまう。
「俺の部屋はここから5分だぜ」
今日一番の勝負目線でヒカルは私を見詰める。
少しのまがあってから
「どうする?」とヒカルは真剣な眼差しで訊いた。
すごい本文長くなってしまった; 全然まとまらなくて時間かかったぁ。
今日出てきたホスト達はまた登場するので覚えておいてね☆
さてベタな展開ではあるのだけど、どうする私?!
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