第215話 好奇心にあたえる言い訳
本文は小説です。
ここに書いてあることは全て私の過去の体験に基づいたもので、現在のことではありません。
ドラッグは法律で禁止されていますし、人生に悲惨な影響を及ぼすものであることを先にお伝えしておきます。
楽屋に戻った私は
どこか上の空だった。
ヒカルのことがショックだったのではない。
バッグの中に入っているスピードのことが
気になってしかたがないのだ。
鏡に映る自分の顔に全く色味がないような気がして
私は桃色の頬紅をさし足しながら物思いに沈んでいった。
東京では
どんなドラッグも
簡単に手に入れることが出来る。
ヤクザだとか不良連中とつるんでいなくたって
特定の街の決まった場所に行けば路上で何だって売っている。
たとえば新宿
たとえば上野
たとえば新大久保
東京のいたるところにそういう場所はある。
馴染みのバイヤー、トミーだって
頼めばきっとドラッグの種類は問わず何でも仕入れていくれるだろう。
今までの私は
ドラッグの世界にディープにはまり込むことに
どこかでブレーキをかけていたような気がする。
「ここまでならOK」
という自分なりのルールがあったし
意思だってそれなりに固いつもりだった。
しかし
私のドラッグに対する抵抗感や罪悪感は
いつのまにか随分薄れてしまったように感じる。
そして
思いがけず手に入れてしまったスピードの存在が
「ここまでならOK」という境界線を
ひどくあいまいなものにしていった。
私はあきらかに
スピードを試すための理由を探していた。
加速度を増しながら拡がっていく好奇心に
何かよい言い訳を見つけてあげなくてはならなかった。
『スピード』
その使用方法は
とても簡単で手軽なものだということを私は知った。
アルミホイル一本とライターさえあれば出来るのだから。
ヒカルはジャンキーだったけれど
狂人ではなかった。
凶暴でもなかったし
少しハイになっていただけだ。
目の前で
彼らが実際にスピードを使っているところを見なければ
私は二人がいわゆるキマっている状態だと気がついただろうか。
きっと気がつかない。
そんなに大袈裟な変化が現れていたわけではないのだから。
げんに
店で会った彼らには
なんの違和感も覚えなかった。
二人とも最高に格好良く
ホストとして一流の営業をしていたと思う。
・・・・・・・・・
・・・・・・
ちょっとだけなら・・・
一度だけなら・・・
大丈夫に決まっている!
もらったぶんだけ
少しづつ試してみればいいじゃないか。
それに
マリファナだってLSDだって
やってみて初めて理解できたことがたくさんある。
やる以前に持っていた印象と
実際にやった後の感想は大きくかけ離れていた。
マリファナもLSDも
はっきり言って何が悪いのか私には解からない。
マリファナは
心地よいまどろみを与えてくれる睡眠薬みたいなものだし
なければないで、きっといつでも辞められる。
LSDにかぎっては
私の人生を大きく変えてくれたドラッグだ。
私の意思が建設的に機能するようになったのは
ただ一度きりLSDを使用したからなのだ。
あの時のような
絶対的な真理を伴う超越体験を
もう一度経験してみたい。
何にも変えがたい価値ある一瞬を!!
スピードがそれを与えてくれるかもしれない。
一度だけなら
依存もしないし中毒になることもない。
注射を打つわけじゃないから
身体に害を及ぼすこともないだろう。
ドラッグで身を滅ぼす人は
きっと意志薄弱で元々弱い人間に違いない。
自分でコントロールできなくなるまでやり続けるから
発狂したりパクられたりするんだ!
そんなことは
私には無関係なことだ。
使用方法さえ間違えなければ
そんなヤバイことになるわけがない。
それに私は
何だってやってみなきゃ気がすまないんだから!
このストリップ公演が終わったら
3日はオフをもらって家にこもって試してみればいい。
私は何の根拠もないような理屈を並べ立てて
また一段と深い穴の中に堕ちていこうとしていた。
聡明な読者の皆様は当然わかっているかと思いますが
今回の私のドラッグに対する考えは完全に間違っています。 ただの言い訳、理由つけです。
しかしながら、ドラッグにはまっていく初期の心理はみんなこんなかんじだと思います。
誰でも最初から「ヤク中」になろうとは思いませんからね。
批判も多くなってきそうなので、この章終わったら「ドラッグに関する考察」の記事を1本入れますね^^
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