らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -139ページ目

第216話 楽日

10日間のストリップ公演のさなか

楽屋内のトラブルに何度か遭遇した。


隣同士に座る中堅どころの姐さん二人が

スリップ姿のままで

とっくみあいの喧嘩をはじめたときには

あまりの凄まじさに仰天した。


「あんたの化粧品、こっちにはみだしてるよ!」


そんなバカみたいな理由で

取っ組み合いが始まったのだから驚きだ。


止めに入ったのは杏姐さんだったけれど

私は度重なる楽屋内のくだらない情事に

いいかげん辟易してしまっていた。


当の私はというと

自分専用のボディソープが空になっていたり

スリッパが片方だけどこかにいってしまったりと

愚劣なイビリはあったものの

そんなことに恐れをなすこともなく

ただバカバカしいばかりだった。


私は自分の出の時間以外は

極力、楽屋で過ごさないようにしていた。


夕方5時になると

学校を終えたユウが

その足で歌舞伎町にやってくる。


ユウは

歌舞伎町のルノアールで

ホステスの同伴の待ち合わせや

ヤクザ達の打ち合わせにまじって

簿記のテキストを開き、場違いな勉強をしている。


「家で勉強して待ってればいいのに」

と私は言うのだけど

あのホストクラブ朝帰り事件以来

私の信用は地に落ちていて

「家で待っていると不安で勉強が手がつかないからね」

とユウは嫌味を言うのだった。


それから私達は

よくパチンコをして時間を潰した。


コマ劇場に隣接するパチンコ店に

すごく出る新台があって

11時までは私も一緒にそこで過ごすことが多くなっていた。


「女が仕事してる間に小遣いもらってパチ打つなんて

なんか紐みたいだよなー・・・。」


ある時ユウがそんなことを言った。


だけど私は

チョコレートだとか日用品といった戦利品を

袋一杯に抱えて持ってきてくれるユウが可愛くて大好きだった。


そんな生活を毎日繰り返し

楽日はあっというまにやってきた。


楽日の姐さん達は

とにかく慌しい。


私を除く踊り子全員が

翌日からの新たな公演に向けて準備をしている。


飛行機や新幹線のチケットの手配をし

事務所に順番にギャラをもらいに行く。


大きな衣装ケースやなんかを

次のストリップ小屋に送るために

宅急便の業者が楽屋内に入り乱れる。


私は

例の計画を実行にうつすため

ジイヤに無理を言って3日間のオフをもらった。


10日間頑張ったご褒美が待っている。


『早くスピードをキメたい!』


もう何日間もそのことが頭の中を占領していた。


最終ステージでは

客席に投げキッスをする程の余裕が生まれていた。


「おつかれさまでした~!」


開放感に満ち溢れて楽屋に戻った私は

さっさとこのシケた楽屋におさらばしようと

事務所にギャラをもらいに赴いた。


約束どおり現金100万円を

アリちゃんから手渡しでもらい

形ばかりのねぎらいの言葉をかけられて

私は晴れて自由の身となった。


「あばよー!」


楽屋から地上に続く階段を駆け上がり

待っていたユウに飛びかかって抱きついた。


様々なプレッシャーから開放され
おもわずスキップをしてしまうくらいご機嫌な夜だった。


初舞台から楽日まで

いろいろなことがあったけれど

どうにか無事に乗り切ることが出来た。


初めてここに来た時に見た白黒ショーの衝撃

森高の曲にネコ耳をつけて踊ると知った時の驚愕

ステージ上で振り付けを忘れた時の羞恥の極み

久しぶりの単独夜遊びのトキメキ

蘭華姐さんの話を聞いた時の憤り

くだらない楽屋内のいさかい

ユウと二人で打ったパチンコ台

ヒカルからの思いもよらないプレゼント


その全てが思い出となり

私の胸に刻まれていくのだろう。


印象深い10日間だった。





この章おしまぃ♪ 

次章からたぶんかなりキワどくなっていくと思う。 書けるのか? 私?! みたいな^^;

書きながらフラッシュバックしたりしませんように。 あー・・・ こわい。



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