らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -142ページ目

第213話 デミグラハンバーグ

ヒカルがドアを開き

私の肩をそっと押すようにして

中に入るようにと促す。


自動ロックのかかる音を聞き

私は緊張して身を堅くする。


「トオル、風呂だから心配すんなよな。」


ヒカルは

私の警戒心を察知したのか

自然な口調でそう言うと部屋の奥にスタスタと歩いていく。


シャワー室からは

水が流れる音が聞えている。


部屋はかなり乱雑に散らかっている。


「お掃除してもらってないの?」


私は床に転がっているペットボトルを拾い上げる。


私がキャッスルに住んでいたときには

外に出る際、フロントにキーを預けて

必ず毎日お掃除をしてもらっていた。


清潔感溢れる部屋がいつでもキープされていることこそ

ホテル暮らしの醍醐味だとあの頃の私は感じていた。


この部屋は

物が多いしゴミも散らかっている。


生活感がありすぎて

とてもホテルの一室とは思えないほどだ。


「掃除は断ってるんだ。

たまに客がきて掃除してくれるけど、なんせ男の二人暮らしだからな。」


ヒカルは私の質問に答えると

ルームサービスに電話をかけ

デミグラハンバーグを3つ頼んだ。


部屋の真ん中に大きなベッドが二つあり

私はなんとなく落ち着かずにキョロキョロと辺りを見回す。


ヒカルの書いた絵があちこちに飾ってある。


どの絵も

ヒカルの自画像かトオル君の絵である。


テーブルやチェストの上には

街角にある証明写真の機械で撮った

ヒカルとトオル君の写真が何十枚も置いてある。


どれもすごく格好良く写っているけれど

超キメ目線でナルシスト感漂うヒカルらしい写真ばかりだ。


「トオル君と仲いいんだね。」


「育ててる真っ最中だよ、 格好いいだろ?

今一番可愛がってるのがトオルなんだけどさ

もう指名もばんばん入ってるし、 将来有望だぜ。」


「トオル君って今時の顔してるよね、ホストやる前もモテてたんだろうねぇ。」


私はトオル君の写真を眺めながら言う。


「そういえば、ヒカルって絵がうまいんだったよね

これは写真を見ながら書いてるの?」


「そうそう、最近絵書くのにはまってるんだ。 おまえの顔書いてやるよ。」


ヒカルは

テーブルの脇に置いてあったスケッチブックを広げて

黒のボールペンを握り、まじまじと私の顔を観察しはじめた。


「いいってば、 今度、普通のメイクしてる時にしてよ。」


私は恥ずかしくて両手で顔を覆う。


ヒカルは私の制止を訊かずに

ははは、と笑いながら手を動かし始める。


トオル君はシャワー室から出てくると

私に一瞥をくれ「ちぃーっす」と軽薄な挨拶をした。


「おつかれさま、 おじゃましてまーす。」


チョコレート色に日焼けした身体に

真っ白なバスローブがよく似合っている。


金髪に近いロンゲの髪から

水滴がポタポタと落ちている。


トオル君は

部屋の中央にあるドレッサーの鏡を見ながら

ドライヤーをかけはじめる。


彼のドライヤーのかけかたが

あまりにも奇抜なので

私はしばらく唖然と見詰めていた。


腰を90度に折り曲げた状態で

頭を逆さまにし、髪を逆立てながらドライヤーの熱風をあてている。


「変わったドライヤーのかけかたするのね」


「こうやっと、生え際が立ち上がっていいかんじになるんすよ

俺、ねこっけなんでこうやんないとイマイチバリっとキマらないんすよ。」


トオル君は

逆さまになったままで答える。


笑える光景である。


ルームサービスが届けられ

私は久しぶりのデミグラハンバーグを幸せそうに食する。


「やっぱ、ここのハンバーグは絶品だぁ~」


あいかわらず美味しいハンバーグを

私はペロリと完食したというのに

ヒカルとトオル君はほとんど口もつけずに残してしまっている。


「食べないのぉ~? 超おいしぃよ?」


私が声をかけても

二人は忙しなくそれぞれの作業に没頭している。


ヒカルはまだ私の絵を描き続けているし

トオル君は鏡を見ながらもう30分以上も髪の毛をいじくりまわしている。


「あんた達、何をそんなに熱中してんのよ!」


肩をすくめてつっこみを入れる私に

二人はケラケラと笑うだけで

やっぱり手を休めようとはしない。


何かがおかしなかんじである。


「ヒカルさん ちょっと・・・」


トオル君がヒカルのところにやってきて

耳元を手で隠し

私に聞えないように何か囁いている。


「なーにぃ? 男のくせにコソコソして感じ悪いわよぉ~」


私はだんだんつまらなくなってきて

ふくれっ面をする。


「あー、 こいつ大丈夫だから。 気にしないで、やっていいぞ。」


ヒカルは絵を描き続けながら

トオル君にそう言う。


「ん? 大丈夫? 何のこと?」


私はさっぱり訳がわからない。


トオル君は

「了解っす」と返事をすると

ドレッサーの下の奥の方に手をつっこみ

小さな黒いバッグを探り出した。


髪をかきあげ

口笛を吹きながら
中身を一つづつ

テーブルの上に並べていく。


最初それが何なのか

私にはわからなかった。


千円札をロールして作ったストロー

アルミホイル、カードキー、スプーン


口笛の曲は

白雪姫の「ハイホー」である。


最後にバッグから出されたものを見て

私は息を飲んだ。


透明のビニールに入った白い粉末。


それがドラッグであることはあきらかだった。




この頃ってまだプリクラがなかったんだよね! 

そんなかんじで、「いよいよキターーー!!!」ってかんじでしょうか?^^;

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