らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -143ページ目

第212話 常套手段

玄関の前で腕時計に目を落とすと

7時をゆうに過ぎていた。


ゆっくりと大きな深呼吸を一つしてから

私は家の中へと入っていく。


静まり返ったリビングで

ユウはTVもつけずに煙草を吸っていた。


吸殻が溢れるほどのった灰皿が

時間の経過を物語っている。


私が物音を立てても

ユウは背中を向けたまま身動き一つしない。


こんな状況を予測していたとはいえ

あいかわらず嫌な空気を流すなぁ

と身勝手な私は薄く苛立ってしまう。


「ただぃま。 遅くなっちゃってごめんね。 もう起きてたんだ。」


なるべく明るい声で私は言う。


携帯電話の電源を途中で切ってしまったから

ユウが何時に寝て何時に起きたのか

あるいは寝ないでずっとこうして待っていたのか

私にはわからなかった。


ユウは吸っていた煙草を

乱暴に灰皿に押し付けてもみ消すと

ようやく私の方に顔を向ける。


不機嫌の極みといった表情だ。


「えっと・・・ ごめんね。

姐さんとの付き合いでどーしても私だけ帰るわけには行かなくてさぁ

こんな時間になっちゃったけど・・・ 反省してるわ。

でもね、私が愛しているのはユウだけなのよ。

ユウはかけがえのない宝物だし、どこにも代わりはいないもん。

本当に本当だよ。 私の彼氏はユウだけなんだからね?」


これは正真正銘の本音だったが

言葉にしてみるとチープで薄っぺらい台詞の羅列にしか聞えなかった。


浮気がバレて「俺の妻はおまえだけだ」

なんて寒い言い訳をかますオヤジそのままだなぁ、

と私は苦笑しながら台所にいき水道水を一杯飲んだ。


ユウは当然のことながら

そんな言葉だけでは納得出来ないと言い

細かいことをいちいち問いただそうとする。


ユウに対して説明責任があるのは分かっているけれど

真剣に弁明するだけの気力が残っていない私は

男を御すための常套手段を使うことを選ぶ。


髪をかきあげながら

ゆっくりとユウの後ろに回りこむと

着ているものの上から卑猥な愛撫をはじめた。


ユウをベッドに誘いこむ。

男をだまらせるにはこれが一番だ。

喧嘩をしながら体を重ねることは絶対に出来ないのだから。


ユウはいつもより少しだけ乱暴に私を扱ったけれど

それは悪いものではなかった。


心地よいまどろみが訪れ

私はユウのわき腹のあたりをなぞりながら言った。


「今日はユウにだっこされて寝たい気分なの。

私が寝付くまで腕枕して頭を撫でていてね。」





目覚まし時計がなる。


ユウはいつも

私の仕事の時間に合わせて

ちゃんと目覚まし時計をセットしておいてくれる。


ものすごく眠たかったけれど

起きないわけにはいかない。


コーヒーでも飲んで目を覚まそうと身を起こすと

ベッド脇のサイドテーブルにまた置手紙がしてあった。

『今日から楽屋の前まで迎えに行く』






楽屋に入ると私はすぐにメイクを始める。


素っ裸のままでウロウロしている姐さんや

立て膝をついたまま出前の蕎麦をすすっている姐さんが

鏡ごしに目に入る。


蘭華姐さんは

他の姐さんにウナジに白いどうらんを塗らせている。


杏姐さんは公衆電話で話し中で

「ヒモのくせにそんなことも出来ないのかい!」

などと、なにやら豪い剣幕で怒鳴り散らしている。


誰一人として

周りの人間が何をしていようが関係ないという殺伐とした雰囲気で

私はやっぱり居心地が悪く感じてしまう。


一回目のステージが終わったら

ヒカルにお金を届けに行こう。


私は階段を上り

携帯の電波を確かめてから

ヒカルに電話をかけた。


おなかがすいていたので

キャッスルのデミグラハンバーグを食べようよ

と誘った。


待ち合わせのロビーに

ヒカルはTシャツにスウェットという姿で現れた。


「ごめんね、 あんまり寝てないでしょう?

てか、こんな時間から超化粧濃くて恥ずかしいんだけど」


ロビーの柱についている鏡を見ると

舞台メイクを施した私の顔はあきらかに場違いだった。


「いや、俺、もともとあんまり寝ないから大丈夫だよ。

それと、おまえももともと化粧濃いから大丈夫だよ。 ははは」


ヒカルは

そんなふうに私をからかいながら

エレベーターの方へ歩いていく。


レストランはこの階のエントランスの奥にあるはずだ。


「どこに行くの?」


私は尋ねる。


「あぁ、 店で食べるのはまずいからさー

さすがにここは誰に見られてもおかしくないしな。

実は俺、客も何人かここに住ませてるんだよ。

ルームサービスで食おうぜ。 おごるよ。」


「えぇー」


昼間で時間は限られているとはいえ

ヒカルの部屋に入るのはまずいかも

と私は躊躇して足を止める。


「あ? 心配するなよ、 トオルも部屋にいるからさ。

3人で食おうぜ。」


私の返事を待たずにヒカルはエレベーターのボタンを押す。


そういうことなら

と私はヒカルに続いてエレベーターに乗り込んだ。





この章の核心に迫りつつありますー! しかし本文まとまらん^^; 短く削れない病;;

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