らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -13ページ目

第336話 夢の一夜

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思考回路はショートしたまま

何も考えずにタクシーでレンの待つホテルへ向かった。


回転扉を抜けてロビーに入る。


深夜三時過ぎのホテル内は閑散と静まり返っていて

床の大理石と吹き抜けの空間がヒールの音をやけに響かせた。


最上階でエレベーターを降りると

ホールにセキュリティらしい精悍な男が座っていた。


鋭い視線を向けられて

私は悪いことをしているわけでもないのに目を逸らした。


部屋番号を確認して奥まった部屋へ歩いていく。


チャイムを鳴らすとドアが細めに開き

バスローブ姿のレンが「入って」と目で促した。


ぎこちなく微笑み部屋の中に入る。


私はドキドキして

レンとまともに目を合わせることが出来ず

脱いだトレンチコートをかけるクローゼットを探した。


「セキュリティの人に見られちゃったけど大丈夫?」


「うん」


レンはあっさりと答えて

とくに気にしている様子はない。


黒檀のティーテーブルの上に

シルバーアクセサリーが乱雑に置かれている。


クローゼットを閉め振り返ると

レンは革張りのソファーでスナック菓子を食べながらテレビを見ていた。


衛星放送のミュージックチャンネルで洋楽のロックが流れている。


「少し飲もうかな、レン君も何かいる?」

冷蔵庫を開けミニボトルのワインを取り出して言った。


「俺はもう酒はいいよ、ミネちょうだい」


ワインと水の入ったグラスをテーブルに置き

レンと少し離れてソファーに座った。


ミニスカートから伸びた脚が小刻みに震えて

私はそれを誤魔化すみたいにワインを喉を鳴らして半分飲んだ。


緊張で喉が乾いていたから美味しかった。


「ポテチ食べる?」

レンは私の緊張をほぐすように優しく声をかけた。


私は手を振っていらないと伝え

代わりに煙草に火をつけた。


「まりもちゃんはさ~、彼氏いないの?」


「いたら、ここには来ないでしょ」


二人きりの密室。

もっと話していたかったけれど会話が続かなかった。


「さすがに眠いな~」


レンはテーブルの上にあったリモコンを手に取り

テレビを消して私をまっすぐに見つめた。


ほんの一瞬

酒でトロンとした視線を絡ませあうと

この後の展開が過剰に意識されて頭がクラクラした。


「シャワー使ってもいい?」


そう言うことが自然な気がして

私は決意してソファーから立ち上がった。


「うん、右の奥」


沸騰しそうな全身の血を少しでも鎮めようと

ほとんど水のシャワーを浴びた。


下着をつけた上にバスローブを着て部屋に戻る。


そこにレンの姿はなく

私は半開きになっているベッドルームのドアを開けた。


キングサイズのベッドが二つ置いてあるツインの寝室で

レンはすでにベッドに入っていた。


私はベッドサイドの照明をギリギリまで絞ってから

レンの隣にそっと身体を滑り込ませた。


二の腕が触れた。


レンの手がいつ伸びてくるのか

これから二人でどんな官能を共有するのかを考えただけで

私の身体は芯から熱くなり下着が濡れるのが分かった。


しばらくしてレンの寝息が本物だとわかると

拍子抜けして、なんとも情けない気持ちになった。


どうにかレンを起こしたくて

モゾモゾ寝返りをうったり咳払いをしてみたけれど

やがてレンの寝息が鼾に変わり

私は諦めてベッドサイドの照明をほんの少し明るくした。


淡いスタンドの明かりの中に浮き出たレンの寝顔は穏やかだった。


ゆるやかな曲線を描く背骨

栗色の髪の毛の襟足はまだ微かに濡れている。


うっとりと眺めて私は物思いに耽る。


彼にどれだけのファンがいるのか想像もつかない。


昨日までは私もただの一ファンで

レンは紛れもなく雲の上の存在だった。


今自分は

間違いなくレンを独占しているのだと思うと

その現実に圧倒され愉悦を覚えた。


私はそのまま朝まで眠ることなく

もどかしさに身を揉みながら

手を伸ばせばレンに触れられる贅沢な時間を愉しんだ。


九時丁度に部屋の電話が鳴った。


目覚めたレンは短いやり取りの後

受話器を置いて私の存在に気がついた。


一瞬現状が飲み込めていないような彼の表情が

まるでドラマのワンシーンみたいで

私は半ば呆れながらレンの顔を覗き込みクスリと笑ってみせた。


「まさか何も覚えてないってオチ?」

助け舟を出すつもりで明るい口調で言った。


レンは寝癖のついた頭をかきながらベッドから飛び出ると

慌てふためいた様子で言った。


「ごめん! 悪いんだけど、今すぐ帰って!

本当にごめんね! 東京ついたら電話するよ!

とりあえず準備して部屋から出て!」


「えっ… あ、わかりました」


私が部屋にいることを知られてはまずいのだと思い

五分で着替え化粧を整えた。


「レン君、じゃぁ行くね!」

とにかく急いで部屋を出ることだけを考えヒールをはいた。


「まりもちゃん! 

ライブのチケット送るから東京着いたら必ず電話するよ!

いやぁ~本当ごめん! てかさ… 昨日って俺寝ちゃったんだっけ?」


ドアの前でレンは私の左手首を掴み、そう確認した。


「あはは、安心して。何もなかったわ。

レン君が私に触れたのは今がはじめてだよ」


私の手首を掴むレンの左手を右手で持ち直しギュっと握った。


「そっか~」 

レンはあからさまにほっとした顔をした。


「レン君と添い寝したこと、ずっと忘れないわ」

私は肩を竦め笑顔で部屋を後にした。


早足でエレベーターホールに向かった。


セキュリティの男が昨日と同じ姿勢で座っていた。


『この人私とレンがSEXしたと思ってるんだろうなぁ』と思いながら

澄ました顔でエレベーターに乗った。


ホテルから出てタクシーに乗ると私は一呼吸置いて

「国分町」と行き先を告げた。


初めての無断外泊。  

このまま家に帰るわけには行かなかった。


気持ちはまだ夢の中で

なかなか現実に戻ってこようとしない。


余熱を持った頬に手を添えて

レンと過ごした一夜を記憶に焼き付けるように思い返しては

何度も何度も言い知れぬ溜息を吐いた。


レンとSEXできなかったことは心残りではあるけれど

十分過ぎるほど満足な時間をすごしたことに違いはなかった。


喫茶店に入り、コーヒーを頼む。


「十時か…」


これから家に帰り

寝ないで待っているだろう俊ちゃんに

空白の時間の説明をしなければならない。


「まずいなぁ」と焦りながらも

頭の中にレンの顔が浮かんできて

言い訳を考えることすら難しかった。


「どうしよう…」


私は自分のしでかした事の重大さに

今更のように頭を抱えた。


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