第248話 女友達
京都に来てから
静香と瑠菜との仲がぐんと深まった。
私達は
同じ事務所に所属していながら
今までプライベートで遊んだことがなかった。
DX歌舞伎町の時は
それぞれの家からの通いで
楽屋内だけでの付き合いだった。
私はユウと別れてしまったけれど
彼女達には同棲している彼氏がいる。
だけど二人は
私みたいに彼氏を地方の仕事には連れてこないし
ましてや楽屋に連れ込んだりもしない。
彼氏達はちゃんと
東京でお留守番している。
静香と瑠菜は偉いなぁ、と感心した。
私は彼氏と十日間も離れることなど絶対に出来なかった。
一人でいると
悪い想像ばかりが頭に浮かんで不安でいっぱいになる。
だから四六時中一緒にいられる男だけが恋愛対象だった。
今はそういう自分を変えようと努力をしている。
私達は
少し大きめの楽屋をもらい
三人で寝起きを共にしていた。
いつでも男がそばにいた私は
女友達の必要性など感じたことはなかったけれど
静香と瑠菜との生活は悪くなかった。
静香は
人懐っこい性格で
私のことをすごく慕ってくれる。
最近では
お風呂にまで一緒に入ってくるし
何かと私の真似をする。
髪型だとか化粧品だとか。
同年代や年上の女の子からは嫌われることが多いのに
年下の女の子からは妙に慕われるのは昔からのことで
私にはいつも不思議だった。
仕事が終わると
近所の居酒屋さんに出向き
三人で一杯ひっかけるのが日課だ。
そこは
掘り炬燵でくつろげる
出汁巻き卵が絶品な店だった。
静香はかなりの酒豪で
芋焼酎をぐいぐい飲む。
瑠菜は何年も常用している数種類の安定剤のせいで
お酒を飲むとすぐに呂律が回らなくなる。
自律神経失調症なのだそうだ。
だけど
瑠菜は元の性格が穏やかだからか
酒と安定剤でラリった状態になっても
絡んだり奇行をとるようなことはなく無害だった。
瑠菜がそこの居酒屋でひっかけるのはお酒だけではない。
「おっ、あの子かっこぃぃー」
言うが早いか、瑠菜はもうナンパしている。
「私、愛川瑠菜、知ってる?」
現役の売れっ子AV女優である瑠菜は
自分が愛川瑠菜であることを積極的にアピールする。
「また始まった」
私と静香は
瑠菜のパフォーマンスを遠巻きに見物する。
そして
どんな男も例外なく
あっけなく瑠菜の手に堕ちるのだった。
その後はだいたい
私と静香の二人で楽屋に帰ることになる。
瑠菜は
翌日の出の時間ギリギリに楽屋に戻ってくる。
そういうことがもう三度もあった。
瑠菜は
一度Hした男とは二度と逢わない。
私はそれがとても不思議で
その晩、酒を飲みながら彼女に尋ねた。
「瑠菜さぁ、引っ掛けた男の子のことを好きにはならないの?」
瑠菜は
出汁撒き卵に醤油を垂らしながら答えた。
「一回Hしたら、それで私は満足だね」
「それってさ、なんか都合のいい女みたいでもったいないじゃん?
ヤリ捨てポイされるのなんて絶対許せないんだけど」
私はそう思う。
男にはSEXした責任をきちんと取らせるべきだ。
「でも格好良い男の子みると
この人どんなHするんだろう?ってつい思っちゃうんだよね」
瑠菜は八重歯を覗かせて無邪気に笑う。
四歳も年上なのに全然そんな気がしない。
瑠菜はバカな女だ。
嫌味がなく裏表もなく能天気なバカ女。
つまり彼女はとても性格が良いのだ。
「瑠菜はHするだけでいいの?」
「だって私には彼氏はいるじゃん」
瑠菜はゆるくかかったソバージュヘアをかきあげる。
解らない。
瑠菜の感覚が私には皆目解らない。
そりゃあ私だって
わりと一目惚れはするほうだし
その男とSEXしたいとすぐに思う。
だけど
SEXだけしたいとは絶対に思わない。
「一晩限りの相手とHするなんて絶対もったいないよ!
気に入った男を落とす手段としてSEXするのはわかるけどさ」
私は言った。
「えーー? SEXは目的だよぉ!
誰だって可愛い男とHしたいじゃん?
こっちも遊びなんだし、もったいないって感覚にはならないよー」
瑠菜は笑う。
ああ、信じられない!
噛みあわない!
瑠菜の理論はまるで男だ。
いったい私達の違いはどこにあるのだろう?
目の前にある
大皿のサラダをフォークで崩しながら
私は考え込んだ。
きっと瑠菜は単純にSEXが好きで
その行為を素直に楽しむことが出来るのだ。
男とベッドを共にするとき
瑠菜の心にはプライドや責任や保障といった
一切の余計なものが介入してくることはないのだろう。
放埓な日々を送る彼女は
自分の意思でのびのびと
男達の性的対象になることを受け入れている。
私は瑠菜が羨ましかった。
彼氏がいないインターバル期間に女友達と一波乱、二波乱~。
女同士のトラブルって恋愛のトラブルよりも複雑で根深いよな。
男の子って女に比べれば単純明快に出来てる気がすゎ。
携帯らぶどろっぱーはこちら![]()
