第247話 別れ、その後
さみしさは募る。
淋しい・・・ 寂しい・・・
心はすぐに弱音を吐こうとする。
「自分の足で立ちたい」
そう決意したばかりなのに。
一人での時間の過ごし方を
私は知らない。
さみしさを仕事で紛らそうと
ストリップのスケジュールを
ギチギチに詰めてもらった。
楽屋では
ストレッチをしたり
腕立て伏せや腹筋をして過ごした。
体を動かして汗をかく。
それは
いくらか生産的な現実逃避の方法に思えた。
それから
大山先生に連絡をとり
レッスンをつけてもらうことにした。
衣装も曲も一新して
そういうところからも
気分転換を図ってみようと思ったからだった。
森高の曲にネコ耳姿でブリブリ踊るのも
今回のDX歌舞伎でおしまいだ。
深夜12時
仕事を終えた私は
歌舞伎町から新大久保のスタジオに向かって歩いていた。
やたら多国籍な立ちんぼ達が
男の監視の下、客を引いている。
ショッキングピンクのボディコンに
黒のフェイクファーコートを羽織ったブロンドが
泥酔したオヤジに片言の日本語で話しかける。
相手にされないとわかると
何語かわからないスラングを吐き捨てた。
この時間の新大久保は
とても日本とは思えない。
スタジオのドアを開ける。
「ちょっとは踊れるようになったあ? あはっ」
レオタード姿の大山先生が待っていた。
「おひさしぶりです」
私は笑いを含んだ挨拶をした。
CDを流しながら大山先生は
どうかしらという視線を送ってよこす。
先生がセレクトした曲は
踊りが「平松愛理」でベッドが「大黒摩季.」だった。
「うぅーん・・・ またブリッコ路線なんですかぁ?」
平松愛理の曲を聞きながら思わず不満を口にした。
「あんたにセクシー路線は無理よ! チビだしねっ! あはっ!」
先生はふふんと鼻をならして
さっさと振り付けを始めてしまった。
ユウとはその後も
毎日電話で話をしている。
あの日の言葉に
嘘がないことを証明したくて
私は真摯な態度を決して崩さなかった。
DX歌舞伎の楽日が終わり
一人で大荷物を抱えて家に戻ると
いつものようにユウから電話が入った。
「今日は何してたの?」
私が訊く。
「今日は・・・ 一日中、渋谷のハチ公前にいた」
ユウの声はいつもにまして暗かった。
「ハチ公前に? 何してたの?」
「・・・誰か ・・・俺のことを拾ってくれないかと思って。
まりもや、ヒカルさんみたいに・・・。
でも無駄だった。 誰も俺に声をかけてくれなかったよ」
本気で言っているとしか思えないユウの口調に
私はなんだかガッカリしてしまった。
「あのね、ユウ・・・
そういうことを言えば、私とヨリが戻るとでも思ってるの?」
冷たく突き放した。
ユウはもっとしっかりしないとダメだ。
いくらなんでも甘ったれ過ぎる。
「どうすればいいのかわからない」
ユウは泣いていた。
返事のしようがなかった。
ユウの感情に巻き込まれないように
心の距離を保ちながら言った。
「明日から10日間京都なんだよね。
その間、連絡を断とう。
こうやって毎日電話で話しているのが良くなかったのかもしれない。
ユウは別れを引きずってるだけみたいだもの」
中途半端な優しさが
逆にユウを前に進めなくしているのかもしれない。
そう思った。
「私も頑張って仕事してるんだよ。
京都から帰ったら必ず電話するから
それまでちゃんと頑張るんだよ!」
最後に励ましの言葉をかけ
一方的に電話を切った。
目を閉じた。
ユウがハチ公前で
行き交う人々を虚ろに見つめ
捨て犬のように佇んでいた様子が目の裏に浮かんだ。
自然と溜息が漏れた。
窓辺に立ち
夜空を見上げた。
なぜだか月が見たいと思ったのだ。
残念ながら
雲に隠れて月の姿は見えず
ぽつんぽつんと
いくつかの星が瞬いているだけだった。
私とユウの空は繋がっている。
いつまでもずっと
それは変わらない。
だけど
二人は違う地平を眺めて生きていく。
それぞれの道で
それぞれの幸せを掴めるように。
小さく輝く
一つの星に願いをかける。
いつか
私の知らない誰かの隣で
ユウが心の底から笑える日がくるように。
私はすごく月が好きなんですよ。この頃からだったのかなぁ。
月が象徴してるものって何なんだろうなぁ?
「星に願いを、月に祈りを」 けっこう実践してるよん。
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