第251話 色恋営業
午前5時を過ぎたところで
チェックを入れた。
飲み始めが早かったから
私達はかなり酔っ払っていた。
フリーだった瑠菜は
見送りのホストにトオルを選んだ。
静香はリュウヤを、瑠菜はトオルを
NO1争いをしている二人を順当に選んだことになる。
店を出てからタクシーに乗るまでの間は
従業員や他の客の目につかず
ここぞとばかりにホストが営業を仕掛けてくる
いわばゴールデンタイムだ。
次回の指名に繋げるために
ホストの魔力は最大限まで満ち
いかに「また会いたい」と思わせられるか
ホストとしての手腕が試されることになる。
「店で指名が重なっていて、あんまり相手をしてやれなくても
プロのホストは送り出しの5分でフォロー出来るんだぜ」
以前ヒカルはそう言っていた。
前を歩くトオルが
さりげなく瑠菜の手を握った。
「あー・・・ いいなぁ~」
私がうらやましがると
トモが笑って手を差し出してくれた。
「噂の年下の彼とはうまくいってるの?
あのあとヒカル君、インポになったらしいよ。
ははははは」
トモは
ユウがヒカルから私のことを寝取ったと思っているみたいだ。
噂にはずいぶんと尾ひれがついているようだった。
「実は、彼とは別れたの。
でもね、もう男は作んないって決めてるんだ。
そうだなぁ・・・彼に彼女が出来るまでは一人でいる」
私はそれがユウに対する誠意だと思っている。
それは自分の良心にかけて守りたいことだった。
「らしくないねー? 元彼に操を立ててるの? ははは」
トモがちゃかすように言った。
「うー。 そおいうわけじゃなぃんだけどさ。
今だってトモをくどきたい気持ちでいっぱいなんだけどね」
上目遣いでトモを見上げる。
ついつい
そういうことをしてしまうのは私の性分だ。
「そうなの? ははは」
トモはさらっと受け流す。
「けどさ、トモは私のものにはならないで。
その方がトキメキが長持ちするもん。
そういう男が一人くらいいたほうが私も楽しいからさ」
「ふうん、そうなんだ。 ははは」
トモは
いいかんじにつれなくて
私の気をそそる。
そんなトモに満足しながら
私は静香の姿を探した。
柱の影で
静香は名残惜しそうに
リュウヤと話をしていた。
「静香ー! 寒いし! もぉ行くよー」
静香は
そのままうちに泊まることになっていたから
二人でタクシーに乗りこんだ。
見送りのホスト達に手を振りながら
楽しかったな、と思った。
タクシーが発車すると
いきなり静香が抱きついてきた。
私は静香に押しつぶされて
グェっと変な声が漏れた。
「まりも! エレベーターの中でリュウヤ君にキスされたっ!!」
がっーーーーーーん!!!
「なっ・・・なんですとーーー?! マジ?」
大声を出した。
そうだ。
そういえばリュウヤと静香だけがエレベーターを使った。
これは予想外の展開だった。
正直なところ
リュウヤがそんな大胆なことが出来る男の子には
全然見えなかったからだ。
静香は興奮した様子で
早口で捲くし立てた。
「私ね、またお店に来るねって言ったのね!
それでねっ!
彼女にして欲しいとかそういう気持ちはないから
店に来たら楽しませね、って言ったのねっ!」
「う・・・ うん」
「そしたらねっ!
リュウヤ君がねっ!
なんでそういうこと言うの?って悲しそうな顔するの!
俺はすごく静香のこと気にいってるのにって!
それでっ! チュって!!
どーーーーしよーーーー!!!」
がっーーーーーん!!!
メロメロな静香に
私はあいた口が塞がらない。
リュウヤのやつ!
初日から色恋営業かよ!
あなどれん! あの男は要注意人物だっ!
しかし・・・静香・・・・おまえは・・・もう・・・
静香を見ると
体はグネグネ、頬は真っ赤に染まって
「ポッポー!」という音が聞こえてきそうな状態だ。
私はクラクラしながら
「そうか。 まぁ今日は楽しかったね」
と言うにとどめた。
酔いが覚めてから
きつく言い聞かせようと思ったからだ。
その後も静香は
リュウヤとの会話を
隣で延々としゃべり続けていた。
私はほとんど聞いていなかったのだが
「それでね、リュウヤ君、来月お誕生日なんだって」
この一言で完全に酔いが醒めた。
キターーーーーーーーーーー!!!
である。
私がガックリと肩と落とし
思わず片手で額を押さえた。
とにかく静香には
「ホストは危険」という認識を植えつけなくてはならない。
それがホストクラブに連れていった私の責任だ。
酔いが醒めればきっと
静香も夢から覚めるだろう。
3年も付き合っている彼氏がいるのだから。
静香の彼氏は平凡でどこにでもいるタイプ。
というか、かなり地味な男である。
元来、静香も地味なタイプなのだから
二人はお似合いなのだけれど・・・。
リュウヤのような男から
甘い言葉を囁かれキスなんてされた日には
舞い上がってしまうのは当然も当然。
やれやれだ。
瑠菜もすっかりトオルのことを気にいっていたようだし。
だけど
まだ瑠菜はいい。
瑠菜のことだ。
遊びと割り切っているだろう。
しかし
世間知らずな静香が
ホストにはまったら大変なことになる。
リュウヤめ・・・。
私の友人だと知っていて
色恋かけてくるとはいい度胸してるな。
くそーーー! なめやがってっ!
私はリュウヤの涼しい顔を思い浮かべながら
心の中で悪態をつき続けた。
いやぁ、本当ホストおそるべしですよー。とくにNEOはレベル高かったんだ!
私は最初から水商売の男が大好物だったんだけど、そうではない普通の女も
連れてきゃハマるんだよな。金があればとくに・・・だよね><
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