第253話 直談判
静香と一緒にリュウヤからの電話を待つ。
「あーん! どぉしよー!
やーん! 緊張するよぉー!」
静香は
今日のデートを想像して
クネクネと身悶えている。
大きなおっぱいが
ユサユサ揺れる。
とても今日
3年間付き合ってきた彼氏と別れたばかりだとは思えない。
有頂天という言葉が今の静香にはピッタリだ。
のぼせている静香に
イケイケギャル風のメイクをしてやる。
髪の毛もコテで丁寧に巻き上げる。
爪はラメで縁取ってラインストーンを貼り付けた。
完璧にデートの準備が整った後は
スーファミのマリオカートをして遊んだ。
6時をまわり
リュウヤは約束どおり電話をかけてきた。
実は私は
9割がたすっぽかされるだろうと踏んでいたのだけど
予想は外れた。
うれしい誤算ではあったけれど。
靴だけは
私のものではサイズが合わなかったから
静香のブーツに合う服を選んだ。
白のモヘアのミニドレスに
ミンクのロングコートを合わせる。
鏡の前で
最終チェックをする静香。
「ちょっと派手じゃないかな? 大丈夫かな?」
心配そうに私に尋ねる。
「すごく可愛いよ! 楽しんでおいで」
天晴れの笑顔の静香を見送った。
こんなに華やいだ静香を見るのは
もちろん初めてのことだった。
静香は2時間でうちに帰ってきた。
「ずいぶん早かったね?」
私は静香の様子を伺った。
「まりもぉぉぉぉ!
リュウヤ君、超かっこぃぃーーー! はぅーーーん」
静香は
桃色吐息で私にしなだれかかってきた。
「あはは、 楽しかったみたいだね。 良かったじゃん」
なんだか微笑ましくて
私も釣られて笑顔になった。
「食事でもしてきたの?」
尋ねると
静香は「ううん」と首を横に振る。
「リュウヤ君がね、スピーカーを見たいって言うから
丸井にお買い物に行ったの。
BOSEの気にいったのがあったみたいでさ。
私、買ってあげちゃったよー」
静香はうれしそうに肩をすくめる。
嬉々として報告をする静香に
私は眩暈を覚えた。
「静香、そういうのを裏引きって言うんだよ・・・。 知ってる?」
はっきりと言った。
「裏引きって何?」
静香は目をパチパチとさせる。
「だからさぁ、店での売り上げってのは店側に抜かれるでしょ。
客が10万使ってもホストに入ってくるのはその半分とかなんだよ。
店外で会って金をもらったり、なんか買ってもらったりするのを裏引きって言うの!」
私は読みかけの週刊誌を
バンっとテーブルに叩き付けた。
「違うよー! だってリュウヤ君におねだりされたわけじゃないもん。
私から買ってあげるって言ったの!
初デートの記念にさ、なんかプレゼントしたくなっただけ。
今日だけだよ。 心配しないでってばー」
静香は何もわかっていない。
リュウヤがどういうテクニックを使ったのかはわからないけれど
初デートで女の財布から金を出させたのなら
そのベクトルはずっと変わるわけがない。
「スピーカーっていくらしたの?」
「7万円くらい。 だから、たいした金額じゃないよ」
静香は平然と言う。
うまいな、と思う。
値段的にもそうだし
何より、スーツなどを見に行かずに
実用的なものに狙いをつけているあたりが
私には完全に計画的に思えてしかたがない。
「で・・・ 買い物だけして帰ってきたってわけ?」
「うん。だってね、リュウヤ君、昼間は大学でしょ。
サークルにもはいてるんだって。
だから仕事まで寝ないともたないじゃん?
忙しくて時間がないのにさ
わざわざ私と会ってくれたんだよー!
静香に逢いたかったからって! きゃーーー!」
もう何も言うことはない。
静香に何を言っても無駄だ。
私はリュウヤに直談判することにした。
「今日は一人でNEOに行って
リュウヤの気持ちを探ってきてあげる」
一緒に行きたいと駄々をこねる静香を説得して
私は一人、NEOに出向いた。
まずトモに話しを通した。
一通りの事情を説明して
どうするべきかアドバイスを求めた。
私はトモを信頼している。
私達は
ホストと客の関係ではなく友達だから。
「そういうわけなんだけどさ・・・
実際どうなの? リュウヤってすぐに客にキスとかするわけ?
ここだけの話、私には正直に話してよ。 トモ」
私はさりげなく
トモの表情の変化に集中した。
「リュウヤ君そんなことしてんの? ははは」
トモは少し困ったなという顔。
「どうなの? 色営業なんでしょ?
どうせ本命の彼女はちゃんといるんでしょ?」
「うーん・・・。 ははは
そういう話は聞いたことはないけどさ
本人に直接聞いてみたら?」
トモは中立の立場を崩さなかった。
否定もしなければ
リュウヤの営業妨害になるようなことも言わない。
当然といえば当然か、と
私は少ししょんぼりした。
ヒカルさえいてくれれば・・・。
席についたリュウヤは
あいかわらず涼しげな笑顔で
「乾杯」とグラスを合わせてきた。
私は愛想笑いは返さなかった。
「どういうつもり?」
一言、毅然とした態度で切り出した。
「まりもちゃん今日はおっかないね?
どういうつもりって、何のこと?」
「静香のことに決まってるでしょ」
バージニアスリムライトを咥える。
「キン」
上質な金属の音が響く。
リュウヤが
片手を添えて火を近づけてくる。
ライターは最高級のデュポンか。
リュウヤは
誘導尋問にも陽動作戦にも動じなかった。
のらりくらりと私の質問を交わすだけで
全くボロを出さない。
リュウヤのキラキラと輝く瞳には
まるで感情の色が射していない。
ガラス玉みたいだ。
ボロは出さないけれど
表面的な受け答えは完璧過ぎて
逆に不自然に感じてしまう。
要は
手応えが感じられないのだ。
「静香のことを騙したらただじゃおかないよ?
悪いけど、容赦はしないからね。
お互い、その筋にも知り合いはいるだろうし下手なこと考えないでよね。
それに、私はヒカルの元彼女だよ?
いくら別れたとはいえ、私への裏切りはヒカルへの不義理だからね?
他に客ならいくらでも紹介してあげるから静香にだけは変な気をおこさないで。
一番、大事な子なのよ。 約束してくれるかな?」
私は物騒なハッタリも織り交ぜながら
威圧感たっぷりに言った。
「俺ってそんなに悪いやつに見えるかな?」
リュウヤは肩眉を下げて私を見詰める。
丹精な顔立ち。
実際リュウヤは悪いやつには見えない。
自分が人の目にどう映っているのか
きちんと解っているのだ。
だけど
「いかにもホスト臭くない爽やかなかんじが胡散臭いのよ!」
と私は言ってやりたかった。
リュウヤは
唐突にテーブルの下で手を握ってきた。
私は驚いて
一瞬動揺した。
「まりもちゃん、俺はそんなに悪いやつじゃないよ。
まりもちゃんの友達を騙すわけないじゃない」
ガラス玉みたいな目に見詰められると
なんだかボォっとしてしまう。
調子が狂う。
何だろう、このヤリクチ・・・。
私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「じゃあ・・・。
私もリュウヤを信じることにするわ」
リュウヤの目を真っ直ぐに見た。
リュウヤは繋いだ手を離さず
目も逸らさずにニコリと笑って頷いた。
トモに見送られて
タクシーに乗る。
静香が首を長くして私の帰りを待っているだろう。
どうしても
腑に落ちない自分がいる。
だけど信じてみるほか道はなさそうだった。
「リュウヤ、本当に静香のことが好きみたいだね」
私はしかたなく
静香にそう報告をした。
ボロを出さない限り
その前提で話を進めていかなければならない。
静香は大喜びだった。
「でもね、静香、一つだけお願いを聞いて。
次のデートで必ずリュウヤとHして欲しいの。
あの子は枕営業するようなホストではない。
自分の値打ちをちゃんとわかってる。
だから、静香とSEXすれば
とりあえずは本当に彼女なんだって私も認められる」
彼女とSEXするのは当然のことだ。
たとえ色カノだとしても
SEXさえしていれば少しは納得がいく。
彼のSEXには
相当の商品価値があるのだから。
「やっだぁ~! リュウヤ君とHって! きゃーーー」
静香は黄色い声を上げ
ベッドで枕を抱えながらゴロゴロと転がった。
リュウヤに手を握られて私はついドキっとしてしまったのですよっ!
くそぉーーー。 リュウヤの方が私よりも上手だったのだ。
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