町の本屋さん -32ページ目

幸せのありか

だが、
約束の時間が過ぎてるのにまだ彼は来ない。
またか。
今に始まったことではない。度々すっぽかされる。
たぶん今日は来ない。
携帯を鳴らしてもどうせ出ない。
自分で面倒になると平気な顔してシカトする。そんないい加減な男。見た目はピカイチのイケメン男。
顔がよければすべて許せる。結局、女なんてそんなもんだ。
拓実は恵まれている。
中身はどうであれ、人なつっこい笑顔に人はよってくる。すごい才能だと思う。

私のこのどうしようもなく腹立たしい気持ちはどこにやったらいい。
彼の携帯を鳴らしてみるがやはり出ない。
この大量の唐揚げはどうすればいい。
馬鹿馬鹿しすぎて涙も出ない。
つくづく自分は馬鹿な女だと思う。こんな思いしてまで、いい加減男にしがみついてることもないのに。やつの変わりなんていくらでもいる。
変わりはいるけど、拓実より好きになれる人がいない。
それがつらい。

幸せのありか

今日は拓実と一緒に夕食を食べる約束をした。
チャラチャラした年下の男は金がかかる。
お洒落な所で食べたいが、どうせ全部私持ちだから、自宅で料理をする。いつものことだ。彼も安くあげたい時に私にくるのだから。
それでも私の作った料理はおいしいと言って残さず食べるから、その辺はたまらなくかわいい。
拓実は唐揚げが好きだ。唐揚げにビールがあれば彼にはごちそうのようだ。今日も彼の好きな唐揚げを作る。サラダに枝豆にビール、最後にラーメンがあれば後は何もいらない。
私の作った唐揚げをおいしそうにほおばる拓実の顔が見たくて、年甲斐もなくウキウキしている。馬鹿じゃないの
心の中で呟いても私の笑顔が消えなかった。
彼の童顔の顔や筋肉質の腕やうっすら香水の匂いがする胸の中に私は早く会いたかった。

幸せのありか

朝は濃いめのコーヒーがいい。
苦味と匂いで気持ちが安らぐ。
朝の光が部屋にそそぎこむ。そんな中でゆっくりコーヒーを飲む。
そんな時間がずっと続けばいいのに。ゆっくり時間が進むといい。
そうは言っても朝にゆっくりする時間もあるはずもなく、私はその濃いコーヒーをぐいっと飲みほして会社に行く準備をする。
いつもと変わらない段取りで、いつもと変わらない準備。
心底うんざりする仕事だけど、あの会社が今、唯一の私の居場所なんだと思う。唯一、私を拒まない場所。それが会社と一人暮らしの自宅。
それでも私は幸せなの?
いつも自分に問いかけること。でも答えなんてでるはずもなく、惨めになる。
笑いたければ笑えばいい。
そして今日も私は必要以上におめかしして会社に出かけるんだ。
世の中の人が笑ったって、思う存分若々しい格好をしてお洒落をして、バカな男達の目線をひけば、それで私は満足。
今日のメイクもバッチリうまくいった。私は自信をもって家をでた。